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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
戦闘狂の水晶使い
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第90話  クラーク村


 ケモミミ族の住まう、ワインド国。

 その端っこ。


 潮の香りが風に乗って微かに漂ってくる。




 ケモミミというネーミングは誰によるものか。

 それはわからない。気づいた時には、それが定着していた。


 だが、この世界に住まう人たちはそれが普通で、違和感など何も感じない。


 ──転生者は別だ。


 みんな共通して抱く感想は「誰だ、こんな名前つけたの?」である。




 ケモミミたちの住まう漁村の1つ、クラーク村。

 とりわけ特産があるわけでもない、いたって普通の村。

 他の村にないものと言えば、孤児院だ。


 ある魔物の影響で、ここ数年、孤児が増えている。

 騎士団が何度も討伐に赴くも、遭遇できず、失敗。運よく遭遇しても、勝てなかった。


 領都や王都に預けることもできたが、そこで生きていくには金が必要だった。


 そのため、村に孤児院を作らせた。

 建築費や修理費など、諸々の費用はすべて国と領持ち。

 援助も出るし、職員には給金も出る。食料の援助もある。 


 こうして最大限の援助はされてはいるが、問題は山積みだった。


 職員の不足。

 食料の援助が出るとは言え、満足のいく量ではない。


 そしてなにより──事の発端の魔物が討伐されていないこと。


 またいつ、孤児が増えるかもわからない。

 増えたら、今度こそそれらを養うことは難しい。


 なぜなら、孤児が増えるということと、大人が死ぬことは同義だからだ。 




 そんな村の近くの上空に、仮面を着用し、馬に跨った男がいた。


「あそこがクラーク村か…………。思った通りのザ・漁村だな」


 男は人間。

 へラリア国騎士団長の命と、ワインド国国王からの要請により、この村に赴くこととなった。


 そう、ライン・ルルクスだ。




「今回は【水晶使い】として、ではない、と…………。なら、こっからは陸路で行くか。よし、フレイ。歩くぞ」


 すると、即座に了解の念が伝わってきた。




 道なりに数分進むと、村が見えてきた。

 道すがら、森の中を魔力探知で見たが、魔物の影が複数確認できた。どれも雑魚だったが。

 

 上空から見たら、たしかにかなりの数の魔物の影が見えた。

 だが、固まっておらず、複数で固まって歩き回っていた。まるで何かを探しているかのように……。




 なんて考えていたら、いつの間にか門が目の前だった。

 無断で入るわけにはいかない。


「ごめんくださーーい!!」


 服装は、仮面を外し、服の色は白から黒に変えてある。オリハルコンは剣に変え、腰に差してある。


 どこからどう見ても冒険者だろう。冒険者として来てるわけだし。

 冒険者として行け、とも、冒険者として来い、とも言われてある。

 

 村じゃ外から丸見えだから、オレがいつもの恰好だったら速攻隊長が来て、村ごとお陀仏だ。


「お待ちしておりました、ルルクス様。リアナス・ロックワードと申します」

「ああ、よろしく。オリハルコン級冒険者、ライン・ルルクスだ」


 出てきたのは、青髪ジト目の女の子だった。16歳ぐらいかな? 猫を彷彿させる顔だ。


「こちらへどうぞ」

「あ、ああ……」


 素っ気ないな……。よそ者で、異種族だから、か……?

 長期滞在の予定だから、仲良くなっておいて損はないんだが。




 案内されたのは、村の孤児院だった。

 結構新品。綺麗だ。


 そのまま中に案内され、奥の部屋へ通された。 


「滞在中はこの部屋をお使いください。風呂とトイレは出て左手に進み、2つ目の門で曲がった通路にあります。では……」

「ああ、ありがとう」


 中へ入ると、なかなか綺麗な部屋だった。

 どれも新しい。まあ、この部屋を使うことは少ないだろう。雨が降ったら別だけど。


 荷物を置き、外に出る。

 早朝にへラリアの王都を出て、もう夕方だ。


 一応、フレイがどこにいるのかを確認しておかないとな。




 少し歩くと馬小屋が見えたので、寄ってみた。すると案の定、フレイがいた。快適そうだ。


 それだけ確認し、部屋に戻る。

 その道中、美味しそうな匂いが漂ってきた。匂いのもとを目指して進むと、複数の子供がいた。


「やあ、お邪魔してるよ」

「兄ちゃん、遊んで!」

「「遊んで遊んで!!」」

 

 うわ。子供のコールが始まったよ…………。

 それを聞きつけ、他の子供もやってきた。そして、コールに加わる。


「だーー! わかったわかった! ちょっとだけな!」


 そう言うと、嬉しそうな表情を浮かべた。こうしてみると可愛いもんだ。


 よく見ると、子供たちの年齢はバラバラだ。


「何して遊ぶんだ?」

「冒険者ごっこ!」

「騎士ごっこ!」


 これは男児たちだ。


「魔法使いごっこ!」

「救出ごっこ!」


 これは女児たちだ。


 おままごととか言われなくてよかった。

 どうやって断ろうかと考えていたんところだ。


 そして、オレを何に巻き込むかで喧嘩が始まった。

 どう鎮めようか…………。

 水晶で一発……。村から追い出されそうだ。


「落ち着けお前ら。全部まとめてやろう! な!」


 途端、沈黙。オレが何か…………ん? 後ろからなにか不穏な気配が……。


「…………何をしているのですか?」

「ね、ねぇちゃん……」

「ああ、リアナスさん…………」

「お客さんを困らせたらダメでしょ! 相手は覚醒者よ!? その気になれば一瞬で殺されるわよ!?」

「いや……一体オレをなんだと思ってるんだ! んなことしねぇよ!!」


 まったく……。

 オレをどんな快楽殺人犯だと思ってんだよ。

 もしくは、すごい短気な人間だと思ってるか。


「…………」

「いや、なにその間?」

「まあ、いいです。あなたはこのまま部屋に戻ってください。ご飯は部屋に運んでありますので。食べたら、そのまま置いておいてください」

「あ、はい」


 なんでだろう…………逆らえない。

 なんか…………オレも孤児みたいに扱われてるな……。


 この状況を打破する方法を考えながら、部屋へ戻り、賄いを食べたのだった。




 そして、夜7時。

 ドアがノックされた。


「どうぞ」

「失礼します、ルルクス様。うちのリアナスが申し訳ありませんでした」


 入って来たのは、白髪交じりの初老の女性だった。

 そして、開け口一番に謝罪した。挨拶よりも先に。


「いえ、警戒するのも当然ですから……。まあ、もう少し打ち解けてくれたら、こちらとしても嬉しいのですが、ね」


 若干嫌味がこもってなかったとも言えない。

 ま、思いは口にしないと伝わらないことが多いからな。


「あ、失礼いたしました。私、この孤児院の管理者で、村長のベカース・サーサと申します」

「ああ、すでに知っていると思うが、オリハルコン級冒険者の、ライン・ルルクスだ」


 村長にはすでに話が通っていると言われていた。

 もちろん、冒険者ラインとして、だ。騎士や、【放浪者】として、ではない。


「あの子の故郷は、あの子が唯一の生き残りでした。ですが、それ以前にも何か人間関係で何かあったのか……あのような態度を取ってしまうことが多く……。ですが、根はとても優しい子なのです」


 ああ、子供たちへの対応を見たときにそれは知った。


「ん? ってことは、あの子も孤児なのか?」

「ええ。年長者でしっかりしているので、手伝ってもらっています」

「なるほど。さて、入りな、リアナス」

「!?」

「!!」


 村長が挨拶をしている最中に、扉の前に気配を感じてた。扉の下にある隙間から足が見えたし。

 1人でいること、立ち聞きしていることから、リアナスだろうと考察した。


 扉の前に移動し、ドアを開ける。


 ドアの前には、驚きのあまり固まっていたリアナスがいた。


「な、なんで……わかったのですか…………?」

「上位冒険者を甘く見ないことだな。お前がさっき子供たちに言い聞かせていたことだぞ~~?」

「うっ……す、すいませんでした」


 リアナスは照れ隠し兼謝罪で頭を下げる。

 だって、さっきから顔は耳まで真っ赤だったし。



 

 会話の内容もあって、リアナスの心の扉が、少し開かれたのだった──


 


 

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