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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
戦闘狂の水晶使い
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第86話  騎士団祭②


 オレは今、ヤマルの兄と鍔迫り合いの状態。


 くっそ! この怪力め! 

 コラヤン兄の武器は大剣。人の身長と同じくらいの長さだ。質量は言わずもがな。


「──『晶弾』」


 対人戦では殺傷能力は抑えるんだが、この場では抑えない。


「くっ!」


 コラヤン兄は『晶弾』を間一髪で、体をのけ反らせることで回避した。そして、そのままバックステップ。


 オレは、棍を刀に変え、斬りつける。


「ようやく……一撃!」

 

 肩口から腹まで斬れた。鮮血が飛ぶ。コラヤン兄の服が赤く染まる。


 そのコラヤン兄のもとに、2つの人影が飛んできた。ゲラードとヤマルだ。

 どちらもそこそこの傷を負っている。


 だが、ターバと【魔導士】は無傷。

 いや、ターバは回復した可能性もあるのか。


「さて、│本当の《・・・》3対3をしようか」


 そう、これはチーム戦。


 3人は立ち上がり、武器を構える。

 戦力差は歴然だった。にも関わらず、立ち向かう。


 そう、それが──近衛騎士だ。

 口には出さない。自分でもクサイってわかってるから。


「コラヤン兄妹。これで決める」

「「了解」」


 作戦があるのか、ゲラードが前に出てきた。2人は後ろだ。


「──『秘剣・吹風すいすう』」


 コラヤン兄の剣の刀身に、風が纏わりつく。


 技術スキルの『秘剣』系は武器に付与する技だ。


 それに対し『衣』系は、身体に付与する。ちなみに剣でなくても『秘剣』だ。


「──『秘剣・流水』」


 ヤマルは槍の両穂先に水を纏わりつかせる。水は纏わりつくだけでなく、流れている。

 

「──『秘剣・発火』──『秘剣・吹風』」


 ターバが2本の剣にそれぞれ違う属性を付与させる。右に火、左に風。


 オレはできないんだよなぁ。

 オレが使えるのは、土属性と無属性のみ。


「さあ、行くぞ、コラヤン兄妹!」

「「はい!」」

「ライン、ターバ。手筈通りに!」

「「おお!」」


 オレたちは横一列に並ぶ。

 向かって左から、オレ、ターバ、【魔導士】。


「「──『炎槍ブレイズランス』!!」」


 ゲラードと【魔導士】が同時に炎の槍を放つ。

 ゲラードの『炎槍ブレイズランス』はオレを狙ったものだったが、【魔導士】の『炎槍ブレイズランス』は、ゲラードの『炎槍ブレイズランス』が狙いだった。

 ぶつかった2つは掻き消える。相殺だ。


「──『飛撃』!」


 ヤマルがオレ目掛け『飛撃』を放つ。『秘剣・流水』があるため、水を纏った『飛撃』が迫る。


「──『飛撃』」


 しかし、それを狙った『飛撃』が飛ぶ。ターバの、風を纏った『飛撃』だ。

 

 先ほどのぶつかり合いとは違い、『飛撃』の欠片と水が飛び散る。


 次はおそらく…………。


「おぉぉおおお!!」


 予想通り、霧の中からコラヤン兄が迫って来た。


「──『剛撃』!!」


 斬撃の塊である風を纏い、『剛撃』で威力を底上げした一撃が振り下ろされる。


「──『晶棘』!」


 右手から『晶棘』を出し、コラヤン兄を吹き飛ばす。寸でのところでガードされ、無傷だ。

 追い打ちを――


「──『爆炎ボム』!」


 完全に感覚・・外からの一撃を食らい、吹き飛ばされてしまった。


「がはっ!!」

「──ライン!」


 着地には成功した。

 が、決め手の一撃だったのか、かなりの威力だった。おかげで、舞台の端まで飛ばされた。


「ごほっ……ぺっ!」


 血反吐じゃないよ、たんだよ。


「もらったぁ!!」

「──『炸裂炎プロミネンス』!」


 勝利を確信したコラヤン兄の背後で、【魔導士】の放った『炸裂炎プロミネンス』が命中し、大爆発を引き起こした。


 さっきの仕返しだ、コノヤローー!! 


「ぐはっ!」

「ふん!」


 こちらへ体を傾けてきたから、がら空きの腹目掛け──殴る。


「ふっ……!」


 体内の空気がすべて流れ出たようだ。

 そして、棍で顔を横から殴りつける。


「お前の相手はオレだ!!」


 売られた喧嘩は大抵、買う。お釣りが出ても受け取らない。それがオレのスタンスだ。


 吹き飛ぶコラヤン兄の顔面を掴み、地面に叩きつける。その勢いで会場に罅が入る。


「ゴフッ! こんのぉ!!」


 コラヤン兄は首跳ね起きでオレに蹴りを加えつつ、起き上がる。


「ぜぇ……ぜぇ…………はぁーー……」


 ヤマルとゲラードの相手は、ターバと【魔導士】だ。


「売られた喧嘩は買う趣味でな」

「これが喧嘩だと……? 俺の体、傷だらけじゃねえかよ!」

「正々堂々とは言ってねえよ!!」


 まあ、オレも攻撃を受けてるし。


 武器をハルバードに変え、コラヤン兄とオレの立っていた場所の、中間地点でぶつかる。

 振り下ろされる大剣を半身で躱し、ハルバードを横に振るう。


「──『水衣』!」


 躱された。結構リーチあるのに。

 武器を棍に変え、突きを放つ。右腕一本だけだが、そこは──


「──『重撃』!」


 で、カバーだ。

 棍が腹にヒットし、コラヤン兄を吹き飛ばす。


 吹き飛ぶコラヤン兄に追いつき、再び『重撃』で突きを放つ。


「こん……のぉ!! ──『火衣』! ──『重撃』! ──『剛撃』!!」


 火力は最大。だが、肉体が保たないはずだ。


「バカヤロ! 肉体がたねえぞ!」


 回復魔法で治るけど。

 まあ、そんなレベルの怪我はしないけど。


 あくまでハッタリだ。


「お前にさえ勝てれば……いいんだよ!!」


 超重量、人の身長ほどの長さの大剣。そして、コラヤン兄の怪力。

 それだけでもかなりの脅威だったのに。


 そこに、火力を上げる『火衣』と『剛撃』。

 吹き飛ばし効果のある『重撃』。

 これらの組み合わせは理論上、最高火力だ。


 最大火力の大剣が、さらに火力の出る、振り下ろしで。


「これで…………終わりだ!!」


 ──やばい!

 受け止める? だめだ、武器が折られる。

 避ける? 衝撃で吹き飛ばされる。


 だが、やらないより…………。


 ああ、諦めの姿勢になってたな……。


「──『音砲ショックキャノン』!」


 『音砲ショックキャノン』で思考を真っ白にさせる。勝利を確信してたから、その効果は絶大だった。

 一瞬、コラヤン兄の動きが止まった。その一瞬さえあれば──十分だ。


 『音砲ショックキャノン』は、内部にもダメージを与える。

 脳を一瞬フリーズさせることもできる。




 コラヤン兄の動きが止まったその一瞬の隙に、決定的な一撃を加える必要がある。


「──『剛撃』 ──『重撃』!」


 2つの技の組み合わせだ。

 これらを付与した棍で、コラヤン兄の腹部を思いっきり――突く。


「ごふっ……!!」

 

 そして、ここが舞台の端だったこともあり、コラヤン兄は場外負けとなった。


『おーーっと! ここでフェンゼルのヨウファン・コラヤンが脱落!!』

「くそ! お前と──」


 なんか喋ってたが、無視だ無視。どうせ嫌味だろ。

 

「加勢に行こうか?」

「いや、ここは私たちで終わらせます」

「了解」


 助けの必要はなし、か。

 まあ、押しているし、勝利は時間の問題だな。


 ヤマルの槍捌きは見事だが、ターバの手数と技量が相手だと、大した意味を持たない。


 ゲラードとかいうフェンゼルの副騎士団長も、魔法の腕は確かだが、加護持ちの【魔導士】の前では、まるで歯が立たない。


 それに、ターバとゲラードが戦っても、ターバが勝つし、ヤマルと【魔導士】が戦っても、【魔導士】が勝つ。

 実質、コラヤン兄さえ倒せば、あとは見世物試合エキシビションマッチに等しい。


 一番の脅威はコラヤン兄だった、というわけだ。

 向こうがオレに狙いを絞り、オレだけでも脱落させようとしたのに対し、オレたちもコラヤン兄に狙いを絞った。


 フェンゼルの連中は、一矢報いるため。

 そしてオレたちは、勝利を確実にするため、各々、コラヤン兄とオレを狙った。

 一矢報いる対象がオレだったのは、コラヤン兄の私情がゆえだろう。






 そして、決着がついた。


『勝者は、近衛騎士の精鋭3人! 【魔導士】、【水晶使い】、【双剣士】!』


 決着は、ターバが会場の端まで誘導し、【魔導士】の『爆炎ボム』で優しく場外へ落とした。

 ゲラードは……相手が【魔導士】なだけあって、大したことがないように見えた。


 観客を見渡すと、騎士団長と副騎士団長がこちらを見ていた。


「終わったようだ」

「そうだな」


 2人は、初めはいなかった。所用で席を外していた、というのが表向き(・・・)の理由。

 その実の目的は……



 

 ──狩りだ。






 


 

 

  


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