第82話 ドラゴンの襲撃
オレは戻って来た。
だが、こちらでは一瞬しか経っていない。だが、その一瞬でオレは強くなった。
全知は使えないが、他は使える……はずだ。
本当、あいつには驚かされ続けた。
【魔力の目覚め】を引き起こした張本人は俺だ、とか。
オレたちをこの世界に転生させた神と、魔王を1人で殺した、とか。
【魔】の器だった魔王を殺したせいか、【魔】の柱を引き継ぐことになったとか。
オレも誰かに殺されたらそいつに【知】が行くかも…………。
うわ、やべえもん背負っちまった!
でも、多くの技術を得た。
水晶の緻密な操作。
ゴーレムの生成(水晶製)。
必殺技。
単純な肉体、魔力の強化。
そして、器として覚醒したことで、痣が変化した。
形も若干変わったし、なんか増えた。かっこいいと思ってる。
さてさて、これからどうしようか…………。
──ん? これは…………
『──ライン、いるな?』
『ええ、今は教会に』
『竜が襲撃してきた。南と北だ! 幸い、【魔導士】も王都にいる。お前は南を相手にしろ! 私たちは王都内の見回りだ。民を落ち着かせる必要がある』
『わかりました。え、まさか、オレ1人で?』
『お前なら勝てる。安心しろ』
いや、何を根拠にこの人は…………。
『…………わかりました』
『アヌースには乗るなよ? では、直ちに行動を開始せよ!』
『は!』
しょうがねえ、ささっと済まそ。
南門に辿り着くと、門の上に近衛騎士が3人立っていた。
そのうちの1人は見覚えがあった。
「ターバ!」
「ラインか、久しぶり!」
「んで、ドラゴンは? あそこでこっちを見てる」
門の上に上ると、たしかにドラゴンがいた。『千里眼』を発動させると、腹ばいになって見えない腹に、かろうじて赤い痣が見えた。
「魔物連合か」
「ああ、あっちは…………見ての通り飛んでるから、腹がよく見える。けど、やっぱりあれも魔物連合か」
「龍じゃないことを喜ぶべき、か」
「いや、魔物連合が人里を襲っていることに危機感を覚えるべきだろう。まあいい。仕留めるぞ。援護してくれるんだろ?」
「ああ!」
ターバ以外は魔術師か。そこそこ期待できそうだ。
「どうする?」
「飛ぶ気があるのかないのか。とりあえず、ここからオレが魔法を…………」
『グルルララァァァ!!』
ビリビリと、ドラゴンの咆哮が大気を震わす。
これで民たちは逃げてない。近衛騎士万歳!
ドラゴンはオレたちを見据え、上空で羽ばたいていた。
「攻撃! ──『晶拳』!」
「──『飛撃』」
「「──『炎弾』!!」」
そして──着弾。
『ガラァァァ!!』
全部首に着弾した。うはーー。激おこだよ。
「hate管理はできたかな? さて、どうやって倒そうか……」
「鱗は魔法防御も物理防御も高いらしい。狙うなら、鱗のない、そして的の広い腹だろうな」
「民衆に被害が出ないようにするのも重要ですよ?」
民衆に被害……周辺に一般人はいない。家の中にもいないはずだ。騎士団が避難させているはずだ。
「家屋の損害は?」
「多少であれば見逃せますが、家屋は人の思いが宿る場所であるということをお忘れなきよう……」
「はは……わかってる」
こうやって話している間も、ドラゴンは攻撃してこない。冷静な魔物は好きだが、嫌いだ。
「ドラゴンは1匹でもオリハルコン級です。ですが、有羽種はオリハルコンを凌駕します。その物理・魔法攻撃力に、防御力。騎士団長は過去に討伐経験がおありのようですが、避難誘導にまわっておられるようです」
女の魔術師が蘊蓄を披露する。
そうだ、なんで騎士団長は避難誘導にまわってるんだ?
「騎士団長はなぜ、避難誘導に? お前ら、何か聞いてないか?」
「最も最適な判断をできるのは私、だとおっしゃっていました……ですよね、ターバ殿?」
「ああ」
あれ、ターバ、もしかしてちょっと偉い?
まあ、ターバって強いもんな。おまけに加護持ちらしいし。
ああ、なんの加護かは、後で聞くとしよう。
「ところで、【水晶使い】殿。どうなされますか?」
「睨み合いをしていても埒が明かないからな。──攻撃だ。いいか、奴が降りて来たら、オレがあいつに乗り移る。それまで、ここから攻撃をし続ける!」
「「了解!!」」
「攻撃開始!!」
『ガルゥラララア!!』
ドラゴンが火の玉を吐き出してきた。
息吹じゃないのか。だが、火の玉も直径5メートルはあるだろう。
「ライン!」
「わぁってる! ──『晶盾』!」
円形盾を展開する。地面から生えてないから『晶盾』。
そこら辺、こだわったりこだわらなかったりする性質でして。って、誰に言ってんだか。
『晶盾』と火の玉がぶつかり、火の玉は爆発する。──が、『晶盾』のおかげでこちらに風すら来ない。
「──『飛撃』!」
「──『炎弾』!」
「──『川弾』!」
中級魔法『川弾』。初級魔法『水弾』と違い、名前通り、流れがある。圧倒的な質量に加え、流れによる浸食。
初級魔法と中級魔法の違いは、言ってしまえば、威力と速さの違いだ。
あとは、属性の強化。火なら、火力。水なら、質量。風なら、斬撃。土なら、硬度。
『晶盾』を消し、『晶弾・龍』に変える。ギリギリ範囲内だった。
ドラゴンの首に『晶弾』の雨と、双剣から放たれる2本の『飛撃』と、2つの中級魔法がHITする。
『ぐるるるる…………』
「困りましたね…………ほとんど無傷とは」
「だが、まったくの無傷ではないな」
仮面の『千里眼』で確認したが、わずかだが血が流れていた。
『ガアァ!!』
ドラゴンが(今度こそ)息吹を吐いた。
でも、まあ、なんだ。
水じゃあなぁ…………。
「水か……なら、こうだな! ──『晶棘盾』!」
円形盾を円錐状にする。頂点はドラゴンの方を向いている。
水が勢いはそのままに逃げていく。王都にも入り込むが、これは…………
「「──『炎弾』!!」」
炎の塊が、上に逃げた水を蒸発させる。
大半の水は下向きに流れて行ったから、上に流れて行ったのは全体の2割程度。
上向き以外に逃げた水は王都内に入ることはなかったが、地面を抉った。
「ドラゴンにふさわしいだけの威力ですね」
「ああ、そうだな」
近衛騎士2人は素直に関心している。
「見た感じ、連発はできないのか、しないのか……。冷静な野郎だ」
「あっちはドンパチ……あれ、あの空を飛んで一騎討してるのって【魔導士】じゃねぇ?」
「あーー、本当だな」
あの人、飛行魔法使えんのかよ。【魔導士】なだけあるぜ。
『グラァ!』
ドラゴンが咆哮を挙げる。余所見がばれたか。すんませ~~ん。
キレたのか、降りて来た。
『ぐるるるるる……』
好都合だ。
「総員、攻撃! ターバ、指示は任せる! ──『晶人形』!!」
駿から教えてもらった、ゴーレムの生成。
今は2体までしか作れない。
ゴーレムは言ってしまえば、眷属だ。
自我は……あるのか?
命令には忠実。若干の知能はあるが、臨機応変に行動することはできない。
オレの水晶魔法も使える。
オレと魔力は共有されている。
まあ、持ち主はオレだから、使う魔力を制限できる。
フレイと同じく、意志でやりとりが可能だ。
魔法は防御魔法に制限させ、王都やターバたちに攻撃が行きそうなときのみの使用を許可。
そしてオレは外に飛び降り、ドラゴンの元までダッシュする。
カモフラージュのために、多くの魔法が飛んでいく。おかげでこちらには気付かれていない。
以外にも大きくないんだな。先入観があったのかね…………。
そして、大ジャーーンプ!
ドラゴンの背に乗り移る。鱗だらけだな、本当に硬いし。
ここに乗ったのは賭けだ。
表面が鱗に覆われているのなら、内部を破壊しようと思ったのだが、それは最後の切り札だ。
それより、こいつは魔物連合なんだ。今回の2体しかいないと考えるのはよくない。
だからこそ、別の手段を試そうと思った。
別の手段って言っても、強行突破だけど。
どこかに弱点はないか。斬撃、殴打、刺突。どれが効くのか。
さあ、実験体となってもらおうか、ドラゴンくん?
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