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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
戦闘狂の水晶使い
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第81話  【最強】との邂逅


 リザードマンの国を通り過ぎ、どこの国にも属さない地域。


「結界までもう少しか……」




 そこから少々進むと、ある一線を境に、木々が変化していた。

 ファンタジーの魔女の館に生えてそうなくねくねした木。色も黒っぽく変化している。


 そこからは地面に降り立ち、境目まで歩く。


「なるほど。ここから壁か」


 フレイに跨り、そのまま真っ直ぐ上に飛んだ。


「ああ……、こりゃ果てしなく上まで伸びてるな」


 叩いても殴っても、力が逃げている気がする。……いや、吸収されてるのか…………? 


「だめだ。破れそうにないな」


 中に入ることはもう諦めた。

 中の魔物はこちら側とは異なる変化を遂げているらしいから、いい修行になると思ったんだが……。


 仮面の『千里眼』を発動する。


「『千里眼』は通すのか……。なら……『晶弾』!」


 ──バシン!


 『晶弾』は弾かれ、粉々に砕け散った。

 オレとの魔力の繋がりも絶たれた。反魔法アンチマジックが付与されているのか。


 手で触れてみる。

 触ることはできる。触り心地は……ペタペタしてる。つるつる。


「この中に入ることができれば…………魔王に迫れると思ったんだがな」


 ──!!


 魔物連合の盟主が魔王である可能性はないか?

 だが、あのぼろぼろマントは「生まれた」と言った。生誕したのか、復活したのか……。


「魔物連合の盟主、魔王、そしてこの結界……」


 まあ、いいや。とりあえずこれまでの考察とかを『不可知の書』に書き込んでおこう。

 そう思い、『不可知の書』を開く。


「……聖遺物のそば…それ……らけ」


 誰だ!?


 耳元で声が聞こえた。

 途切れ途切れでよくわからなかったが、聖遺物のそばでそれを開け、だろう。……聖遺物?


 あたりを見渡しても、誰もいない。

 なにより、ここは上空。『千里眼』と魔力探知を発動させ、周辺を注意深く見渡す。

 人どころか、魔物の影すらない。結界の中にも何も見えない。


「耳元というより、頭の中に直接響いた感じか? テレパシーってやつか?」


 まあいい。聖遺物……もしかして、教会のあれか?

 とりあえず、行ってみようか。違ってたら違ってただ。






 4日かけ、へラリア王都に戻った。

 そのままの足で教会に入る。フレイは王都内の預かり場に預けてある。


「おや、【水晶使い】様」

「『名無しの部屋』を見に来た」

「あの部屋、ですか……? かしこまりました」

「ああ、1人で大丈夫だ」


 誰も付いて来ていないのを確認し、急いで『名無し部屋』に入る。


「ここか……か……?」


 7本の柱の中心まで進み、『不可知の書』を開く。


 ──すると、『不可知の書』と柱の1本が光り輝きだした。


「な!?」


 次の瞬間、オレは真っ暗な空間にいた。

 転生前の神とやらがいた部屋、冒険者学校入学のとき。 


 その空間には、神がいた。

 その空間には、謎の人魂がいた。 


 そして、今回は全身黒ずくめの存在がいた。


「ようやく来たか」


 その姿はまるで伝承の……


「……【最強】」


 そいつの背後には円卓と椅子があった。


「ライン・ルルクス…………いや、澄川蓮。器の所持者」

「お前は?」

「俺は寺島てらしま駿しゅん。こっちではシドー・ハンダイラン」


 寺島駿、だと……?

 オレの元クラスメートだ。


 趣味が合うので話すこともそこそこあった。

 駿のそばにはあいつの幼馴染がいたため、2人でつるむことは少なかったが。


「久しぶりだな。あいつはどうした? お前の幼馴染は」

「あいつはわからない。だが、ライン、お前ならわかる……知ることができる。【知】の器の所持者」

「【知】の器?」

「それだ」


 そう言って駿が指差したのは『不可知の書』だった。

 いやいや、これは人の目には見えないはずだ。

 うん、きっと偶然だろう。

 移動させてみる。それに合わせ、指も向きを変えている。


「それは、器の所持者は見ることができる。ラインにも、この杖が見えるだろ?」


 ローブの中から、1本の短杖が出現する。それはふよふよ漂っている。


「俺の短杖と、ラインのその本は……器」

「なんの?」

「神の器……そう、神器。だが、見た感じまだ不完全だな。どうせここに来たんだ。完全にしてもらうぞ」

「あまり時間がかかるのはちょっと……」


 そう。今は魔物連合の襲撃が活発化している時期だ。

 どこまでいっても人手不足だ。


 特にオレは、自分で言うのもなんだが、各国から重宝されている。


「大丈夫だ。ここは世界とは異なる場所。今生きている、魔法の世界の番外編に当たる場所。故に、同じ時が流れているわけではない」

「ああ、竜宮城、精神と●の部屋か」

「いや、ちょっと違うな……こっちでどれだけ過ごしても、老いることはない。向こうに戻ると、こちらに来た時間から再スタートするって寸法だ」


 なるほどな。たしかに、番外だなここは。

 ここにいたら、半永久的に生きれるのか。


「なるほど、【最強】行方不明の理由は、ここにいたからか。なあ、向こうの世界には帰らないのか?」

「言ったはずだ。戻ったら、元の時間に戻ると。すでに歴史が動いている。戻るには遅すぎる。ただ、ラインが器の保持者として覚醒すれば、この時から抜け出せる」


 ああ、そうか。駿はまだあっちの世界の時に縛られてるんだ……。


「で、覚醒するにはどうすればいい?」

「ここでただ過ごすだけでいい」

「それだけ……?」

「それだけ」


 厳しい修行でもやるのかと思った……。


「ここは神器の故郷みたいなものらしくてな。俺はあの聖遺物に触れたら覚醒したんだが、ラインの場合はちょっと変わってくる」

「へ、へぇ~~。まあいいや。向こうで何が起きてるか、わかるか?」

「ああ、すべて知っている。だからこそ、だ。覚醒するまで、修行だ」


 ああ、やっぱりこうなるのね……。


「覚醒すればそれに合わせて強くなるから、やるなら、動きとかの確認だ」

「へい」




 これから、オレは覚醒するまでの3年間、ひたすらここで過ごすこととなった。

 向こうの時は進んでいない。

 こっちで100年も過ごせば向こうの時は進み始めるらしいけど。

 





 3年後。

 こちらでは腹は減らないし、眠くもならない。疲れはするけど。

 いつも通り、駿と談笑していたときだった。


 突然、『不可知の書』が光り輝きだした。

 やがてその光は落ち着きを取り戻した。


「終わったな」

「これでオレは強くなったのか?」

「あんまり変わらないと思う」


 え、いや、強くなるって言ったのはあんたでしょうが!


「【知】は戦闘向きじゃないらしい。それでも、加護持ちと十分タメ張れ……もともと張ってたか」


 加護、か。別名、神器の欠片。

 神器の保有する様々な能力のうち1つがランダムで宿ったこと。


「加護持ち? 誰だ?」

「副騎士団長に、ターバだ。ラインの周りしか見てないから他はわからん」

「そうか…………ターバが……。ちなみに、加護は?」

「さあ? 少なくとも、俺のではないな」


 駿は【魔】の柱。

 能力は、世界の魔力の管理、無限の魔力、緻密な魔力操作、無詠唱化、全属性理解…………。


 オレは【知】の柱。

 現在判明している能力は、全知、感覚強化、思考加速、理解、無詠唱…………。

 ただし、全知は利用不可能だ。

 駿のように、向こうの時から脱するしかない。でも、理解の効果である程度補えそうだ。


「で、強くなるという根拠はまさか、自分が無限の魔力を獲得したから、じゃないだろうな?」

「はっはっは! まあ、行ってみればわかる! それらの能力も意外と役に立ちそうだし、こっちでの修行で格段にパワーアップしたのは事実だ」

「ああ、そうだな」


 【最強】の修行は本当に有意義だった。

 魔法も身体能力もまるで敵わなかった。【最強】は本来、火の属性特化だったため、火の扱いは群を抜いていた。

 水晶が簡単に溶かされたときは焦った。


「それじゃ、また気が向いたら戻ってこい。とは言え、覚醒した今、あちらで一生を遂げることはない」


 三賢者の時代、【最強】に何があったのかは全部聞いた。

 それゆえに、なぜ戻らなかったのかが気になっていた。


 戻らなかったのではない。戻れなかったのだ。


「ああ、行ってくる」

「……死んだら全部なくなるからな、気を付けろ」


 返事を返そうと思ったが、そのときにはすでに教会に戻っていた。



 







 

 

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