第74話 放浪者➂
「【水晶使い】ライン・ルルクスの勝利です」
勝った。…………だいぶ魔力を消費したな。
『なるほど。さすが、【魔導士】と同じ待遇を受けるだけのことはあるな。よし! 覚醒アヌースを一頭、授けよう』
『では、我が国からは服を。もちろん、ただの服ではない』
なんか、いろいろ貰った。
貰ったと言うか、約束された。
今日中に届くとさ。一度、王宮で預かってくれるらしい。
「ライン、せっかく覚醒アヌースをもらったんだ。明日から乗馬訓練といこうか。覚醒アヌースであれば、相性もあるが、1週間あれば乗りこなせるようになるさ」
相性が悪かったらどうしよう……。めっちゃ嫌われたら……。
ま、なるようになるか! 気にしても、どうしようもない。
「では、ラインよ。明日、王宮に来ると良い。門番に伝えておこう」
「ありがとうございます、陛下」
「うむ。では、これにて会議は終了としよう。各国ともに、用心してください」
『『うむ、互いに気を付けよう』』
ブツッと、すべての魔法具が黒くなった。接続が切れたんだ。
「さて、ラインよ。いずれお前に贈ろうと思っていた覚醒アヌース、先に贈られてしまったな。覚醒アヌースは、千里を駆けると言われる。つまり……騎士団長」
「つまり、国家間での移動を要請されているんだ」
「なるほど」
「それ専用の魔法具はすでに、先ほどの中にあったから、大丈夫だ。明日、乗馬を教える人材を派遣しよう」
「──いや、わしが教えよう」
え、爺さんが? それだと、接しやすい分助かるが……。
「覚醒アヌースではないが、アヌースには乗れるんじゃよ」
「そうですか。では、よろしくお願いします」
「任せろ、レイハル坊?」
「…………はぁ」
呆れてんじゃん。
「さて、と」
「爺さん、よろしくな」
「おお、任せろ!」
分厚い胸を叩き、そう言う。
国王と爺さん。どっちもファンキー。どっちも、ただじゃ死なねえだろうなぁ。こんな爺さんになりたいな。
そんな未来が見えないんだけど。遠い未来の話だし、見えなくて当然か。
翌日。
「これ、全部ですか……?」
城の一室。その部屋にはいろいろ置かれているわけで……。
「はい、そうです。アヌースは現在、中庭にいます。オプノヒス様もそちらにいらっしゃるかと。昨晩、国王陛下と酒盛りをなされていたので」
「はあ、そうですか……」
一国の王と酒盛り? ファンキー同士、気が合うのか?
ほんと、いろいろ送られてるな。
風の影響をなくす効果のあるブレスレット。
視界の悪化を防ぐ、魔法の仮面。
鞍などの乗馬用具。
体を清潔に保つ魔法具。
魔物に発見されにくくなる寝袋。
自動迎撃システムみたいなのがある魔法具。
かなり遠く間で見える望遠鏡。
魔力を注ぐこと光る閃光弾。
などなど……。
この、魔法の仮面。かなりのレア物だ。貴族の家宝級らしい。三賢者のレシピを元につくられた代物だそう。
名前は、ホルスの仮面。
名前の割に、鳥は模られていない。なんなら、とくに特徴のない仮面だ。
だが、その効果は名前に見合うだけのものがある。
目を通す穴は開いていないが、魔法の効果でちゃんと──むしろ、よりクリアになった──視野は通る。
そして、常時魔力探知を発動する。
だが、それはまだ序の口。
これは着用者の魔力を使用しない、仮面に込められた効果である。
それに対し、着用者の魔力を使用して発揮する効果もある。
『千里眼』。半径100メートル以内において、視界を自在に移動させることができる。また、壁の中を通過することもできる。安全な覗きを可能とする。
『透視』。遮蔽物の向こう側を見ることができる。覗きには必須。
「ほう、効果は?」
と、爺さんに聞かれたので、現在判明したこれらを話した。
「ほう……これは着用者を選ぶと言う、ある種呪いの品なんじゃが。お主とは相性がいいようじゃの」
へえ。嬉しいねぇ。覗きアイテムゲット。
…………使わねぇよ?
そして、もう1つ。こちらは着用者を選ぶことはない。体を清潔に保つ指輪だ。
名称は聖火の指輪。
完っ全に名前負けアイテムだ。
黒の台に、紅色の宝石。こちらも、レシピから作られたアイテムだ。
起動させると、深紅の炎が身を包み、汚れを落とす。
…………それだけ。
おまけに、クールタイムが存在する。
それは3時間。
ただ、発動の際、着用者の魔力を使用しない。
だが店頭で買おうと思えば、家が2、3軒は買えるほどの額の金が飛ぶ。
すごいのはこんなものか。
あとのも高価な代物だが、下位互換は存在する。
「さて、アヌースの乗馬訓練を始めようかの」
くるり、と爺さんが体の向きを回転させた。
その視界の先には、1匹のアヌースがいた。
「あれが、お主に、と贈られたアヌースじゃ。さて、名を付けないとならんな」
「ああ、そうだな……名前、名前…………」
この場合、神話辺りから取るのがいいだろう。
漫画とかからだと、著作権が……異世界だし、適応されないか。
まあ、いい。
八足馬…………いや、八足じゃねぇし。
一角馬、二角馬…………角ねぇな。
ネタ切れ。
ん? スレイプ…………レイプ……おっと、よくないよくない。
スレイ……。あ、北欧神話、豊穣の神フレイ。よし!
「……フレイ」
「──ぶるるるるっ!!」
「おお! 気に入ったようじゃの!」
アヌース──フレイは一鳴きし、こっちによって来た。
「ほう……かなり相性がいいようじゃの」
「そうなのか?」
「ああ」
「よろしくな、フレイ?」
「ぶるるっ!」
途端、何かがガチッと嵌った気がした。
それと同時に、アヌースが光り輝いた。光が収まると、フレイの顔に赤色の線が走っていた。
「覚醒、完了じゃな。これで意思疎通が可能となったはずじゃ」
おお、意志が伝わってくる。よろしく、か。
ああ、オレもよろしくな。
「ふむ……ここまで相性がいいんなら、とりあえず乗ってみな!」
「いいか、フレイ?」
肯定の意志が伝わって来た。オレとこいつは一心同体!! なんちってな。
一緒に贈られてきた馬具をセッティングし、乗る。
「なかなか様になっとるの。いいぞ。わしは乗る必要はないようじゃの」
「ばるるっ」
爺さんの馬が鳴いた。乗ってほしかったのだろう。
「わかったわかった。冗談じゃて。さて、乗せてくれるか?」
「ばるっ」
爺さんが馬に乗る。
「わしらは指示を物理的に伝える必要があるが、覚醒アヌースは知能が高いため、意志疎通で話が通じる。まあ、慣れじゃな」
意思での会話、か……。なら、『走って』、だ。
その意思を、フレイは読み取ってくれたらしく、前進してくれた。
「ほお…………まさに、一心同体じゃの」
そんな呟きなどと同時に、フレイから意思が伝わって来た。
その内容は、できること。
覚醒と、オレとのリンクのおかげでできることが増えたらしい。
覚醒アヌースは、主が現れることでようやく覚醒技能を手に入れる。
主は、本人(馬)の意志で変更可能だ。
もちろん、1人だけ、という制限も、人族でないとならないという制限もない。
本人(馬)が主と決めた者が主となる。
獲得できる覚醒技能も、馬それぞれだ。
フレイのできることは以下の通りだ。
『天翔』、空を駆ける。
『流星駆』、走るスピードが速くなる。
『雷翔』、電気を発射する。
『激震』、振動を起こす。
現時点ではこんなものだそう。
これから増える可能性もあるらしい。
ああ、技名は三賢者考案だ。
アヌースは、覚醒が確定したとき、判明している技名を他の覚醒アヌースから教えられる。
そこで、脈々と受け継がれるらしい。
「爺さん、ちょっと走ってくるわ!」
「おお、一時間以内に戻ってくるのじゃぞ?」
「へーーい! んじゃ、フレイ。行こう!」
「ぶるるる!!」
フレイの覚醒技能は、どれも素晴らしいものだった。
一緒に贈られた魔法具のおかげで、風とGは、全く気にならなかった。
『天翔』と『流星駆』は同時発動が可能で、使ってみたところ、覚醒アヌースが千里馬と言われるだけに、ハーマルまで行ってしまった。
『激震』、『雷翔』は、ゴブリン程度であれば、一撃で殺すことができた。
特に、『雷翔』は素晴らしかった。
周りの生き物に感電するから、敵が固まっていたら、少ない魔力で大きなダメージを与えることができる。電気は、風の派生属性だったか? 水だっけ?
『激震』は地面に向けて使うと、地震が起きたように、地面が大きく揺れた。
ゴブリンの頭に使うと、ゴブリンの頭がザクロの実のように弾け飛んだ。
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