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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
水晶使いの成長
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第65話  準備


 どこだ…………。






 時刻は午前9時半。

 店々が開店の準備を始め、店員同士で談笑の声が聞こえる。


 そんな通りを、1人の青年が彷徨っていた。

 言うまでもない。ラインだ。






「教会……どこやねん」


 教会のものらしきシンボルが全然見当たらない。

 かれこれ、1時間ほど歩いている。王都の地理を頭に入れようと思って早めに出たのが、不幸中の幸いだった。


 そもそも、教会のシンボルってなに?


 領都に教会なんてものはなかったし、そもそも信仰の2文字が日常生活にない。

 精々が三賢者を称えるぐらいだ。お祈りとかしたことないしな。


「──ライン」


 突如、背後から声をかけられた。この聞き覚えのある声は……


「副騎士団長様、おはようございます」

「ああ、おはよう。その様子だと、やはり迷っていたようだな」

「え、いや、あ、はい、ちょっとだけ」

「ふふ、正直でよい。さぁ、ついてこい」


 思わぬ助け舟!

 初日から遅刻とか、シャレにならないからな。

 ま、待ち合わせ相手がこの人なんだけど。




 数分ほど歩き、1つの大きな建物に到着した。

 たしかに、教会だ……。ただ、シンボルがないから、他の建物に埋もれている。

 遠くからじゃ見つけられないわけだ。


「ここが教会だ」


 白い外壁、カラフルなステンドグラス。空いている門。

 神聖……と言うより、静謐な雰囲気が漂っていた。


「さて、入ろうか」


 副騎士団長に連れられ、中に入る。


 入ると、そこは広間だった。祈りの間というらしい。

 元の世界で、教会と聞けば想像する場所─奥に聖典を置く台があり、その前に長椅子が並べられている。チャペルだ。

 奥の壁には、ステンドグラスが嵌められていた。三賢者を模したもののようだ。


「人がまったくいませんね」

「普段からこんなものだ。そもそも、ここは休憩場として使われる。まだ朝なのに、ここを使う者はいない。まあ、雰囲気的に使う者は少ないのだが」

「──そうですね。ただ、気持ちを安らげるために利用される方は多いですよ? 特に、長旅の直後の方々が」


 後ろには、真っ白な服に身を包んだ青年が立っていた。


 ま、足音──通りの談笑がうるさくて聴覚強化は切っていたため、単純に知覚した──がしていたから、誰かがいたのはわかっていたんだけど。


「これは失敬」

「いえ、お気になさらず。それより、本日はどういったご用向きで?」

「魔鉱をもらいにきた」

「かしこまりました。副騎士団長様ですね。お話はすでに伺っておりましたので、このまま案内させていただきます」


 ああ、すでに聞いていたのね。


「よろしく頼む、修道士殿」

「よろしくお願いします」

「では早速、参りましょうか」

「ああ」




 オレたちは修道士に連れられ、そのまま右手に進んだ。

 そこは、左手は──一枚一枚の間隔が広い──扉、右手はガラス張りの通路だった。

 ガラスの向こうは、緑の生い茂る中庭だった。


 そして、通路の行き止まりが見えてきた。

 行き止まりの壁のすぐ横には、一枚の扉があった。


「こちらです」


 扉を開けるとそこは人が10数人ほど入るかな、というぐらい狭い部屋だった。

 そして真ん中には太い柱。


 他にはなにもない。

 だがそのまま2人は突き進んで行く。もちろん、柱は迂回して。


 柱の裏が階段になっていた。けっこう急だ。


 階段の両脇と天井には、一定の間隔で明かりが灯っている。光源は魔法具だ。






 感覚だが、2階分ほど下ったかな?

 先を行く修道士の足が止まった。


 ──ガチャリ


 という音と共に、目の前が一段と明るくなった。扉があったのか。


「こちらになります。どうぞ、お進みください」 


 副騎士団長のあとをついて行く。


 そこは、とてつもなく大きな部屋だった。

 高さは建物2階分ほど。白地に金の装飾の壁、天井。床はつるつる。大理石のようだ。


 そして、部屋の奥。

 そこは、水色一色の山だった。それも、ただの水色じゃない。淡く光っている。


「これが魔鉱──オリハルコンだ」

「オリハルコン……これが…………」


 


 魔鉱石は、大きく2つに別れる。

 1つは、ミスリル。もう1つはオリハルコン。


 この2つの違いは、魔力親和性の高さだ。

 冒険者のランクにもなっているように、オリハルコンの方が高い。


 だが、ミスリルにもいい点がある。

 それは、魔力を使用しなくとも加工ができるという点だ。


 オリハルコンは、器具に魔力を注がないと加工ができない。

 だが、ミスリルはそんなことはしなくてもいい。

 これらの理由から、日用魔法具に使われる魔鉱は、ほとんどがミスリルだ。


「ミスリルはまた別の部屋に保管されていますよ。ミスリルは、このオリハルコンの中だと、相性がよくないのか、分離して外にはじき出されてしまうのです」


 いや、そのことは別にどうでもいい。

 問題は、なぜオレがここに連れて来られたのか、だ。


「副騎士団長様、オレがここに連れて来られた理由は……?」

「ああ、近衛騎士となったお前に、近衛騎士の証としてオリハルコンの武器を作ろうと思ってな」


 え、まじ? めっちゃ嬉しいんですけど!!


「喜んでくれて嬉しいよ」

「では、早速行いますか?」

「ああ、そうだな。ライン。あのオリハルコンの壁の前にある円陣の前に立ってくれ」

「あ、はい。わかりました」


 壁の前の円陣…………これか。

 魔法陣を期待したんだが、本当にただの円だった。


「そうしたら、手を前に突き出して、オリハルコンに意識を向けろ」


 手を前に突き出し、意識をオリハルコンに…………。


 ──!?


 その瞬間、オレの中の魔力とオリハルコンの一部がリンク(・・・)した。

 その感覚はまだ広がり続けている。


 少しして、ようやく止まった。

 あまり時間は経っていないのだろうが、体感時間はかなり長く感じた。


 とりあえず終わったので後ろを振り返った。

 そこには、驚いた顔の修道士と、かろうじて真顔を保っている副騎士団長がいた。


「えーーっと、終わりました……」

「あ、ああ」

「…………」


 なんとも言えない微妙な空気が流れている。

 あれ、これってもしかしなくてもオレのせい?


「すさまじいな。まさかこれほどのオリハルコンとつながるとは……」


 その言葉を聞き、再びオリハルコンの山に向き直った。

 …………心なしか、山との間隔が広くなったような…………いや、絶対に広くなった。山の形も変わってるし。


「副騎士団長様、オリハルコンとつながったというのは?」 

「言葉通りの意味だ。我々近衛騎士は、自身の魔力とオリハルコンをつなげることで、自分だけの武器を手に入れる。その際、こうしてオリハルコンとつなげるわけだが…………」


 オレの心は、「自分だけの武器」という言葉に支配されていた。


 オレだけの武器……つまり、オリジナル!

 数多開発されたMMO-RPGでも見かけなかった。それを再現できる可能性が、今ここに……!!


「あれ、オレとつながったオリハルコンは?」

「お前の魔力の中だ。まあ、それはあとだ。一体どれほど?」

「歴史に残るんじゃないですか? 騎士団長様よりも多いんじゃないですか? 僕が立ち会ったわけではありませんが、これほどの量は聞いたことがありませんよ」

「だよな。私もだ。ライン……とんでもない逸材だ」


 2人の呟きは、オリジナル武器という単語に支配されているラインの耳には入らなかった。




「では、さっそく工房へ?」

「ああ、そうだな。そうしよう」

「もしかして、オリハルコンを加工するのですか?」

「その通りだ」


 ひゃっほーーい!! やったった♪ オレだけのオリジナル武器が! ついに!




 再び修道士のあとを歩く。

 元来た道を進み、入った扉の隣にあった扉を開ける。

 そこは部屋ではなく、通路だった。

 だが、この廊下みたいに明るくない。そしてなにより…………


「長いなぁ…………」


 長かった。行き止まりも、曲がり角も見えなかった。




 暫し進み、ようやく目的地に到着した。

 行き止まりの先には一枚の観音開きの扉。そこも開けるのだろうと思っていたが、


 ──コンコン


 ノックだった。すると中から男の声で、


「なんの御用で?」

「オリハルコンの武器を作ってもらいに来た」

「わかりました。では、中へどうぞ」


 中に入ると、そこはあらゆる感覚でそこがどんな場所かを訴えてきた。


 ──鍛冶場だ。


 甲高い音。熱気。むさ苦しいおっさんども。


「おう! オリハルコンの加工だな。俺んとこへ来い! 手が空いてる!」


 奥から太い、イケボが呼んでいる。


「では…………」


 その一言で、目を合わせて頷き合う2人。


「──この先はライン、1人で行くんだ」

「あの声は……右奥の方だな」

「ああ、俺が案内したろ。坊主、ついてこい」

「あ、ありがとうございます」

「ライン、私は最初の広場にいるから、ゆっくりしてくるといい」

「わかりました」


 近くにいたおっさんに案内してもらい、先ほどの声の主のもとに辿り着いた。


 そこにいたのは、無精ひげを生やしたおっさん一歩手前ぐらい(30手前ぐらい?)の男だった。

 声の通り、イケオジとか言う見ためだ。

 




 

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