16話 最終試験
「ここですか」
目の前には、3階建ての校舎よりも高い、4階建てぐらいの高さの建物があった。
それだけではなく、隣にもう一つある。
「これが体育館よ。『通話』で係員と話したけど、ほとんどの人が終わっているそうだから、すぐに始まるわ」
中に入ると、いくつもの仕切りがあった。一つ一つが、面接会場なのだろう。
でも、話し声はほとんど聞こえない。
受験会場はうるさかったから常時発動させていた聴覚強化はオフにしていたが、ここで発動させても何も気にならない。
防音機能最高だな。
「えーと……あそこね」
そう言って指を指したのは、体育館の一番奥にある仕切りだった。
少し気になったので、魔力感知を発動させた。
魔力感知は、初級の魔法を操る者を探すことができると、アミリスさんが言っていた。
目覚めたばかりの俺は、魔力を垂れ流していたらしい。今では操れるようになったためか、そんなことはない。
話を戻すが、初級以上の魔法、またはそれと同じレベルの魔法を使える者を魔力探知で見ると、色がついている。
その者の強さ──総魔力量──に応じて、色が変わる。そしてそれとは別に、圧も感じることができるようになる。
これはその者の使える魔法の級や技術力から来ると言う説があるが、オレはそれらを全て含めたものから来るものだと確信した。
なぜ、こんなことを思い出したのか。理由はただ一つ。
──圧倒的強者が中にいる。
扉に近づくほど、圧を強く、大きく感じるようになった。
多分……いや、確実に今の状態では敵わない。だがいつか、必ず越えてみせる!
まあいい、さっさと入ろう。
コンコンコン
ノックは……3回で良かったはずだ。2回ノックは、確かトイレの時だったよな。
「……どうぞ」
で、静かに扉を開けて、入る前に一言。
「失礼します」
それで、椅子の右隣まで進む。よしよし。
高校選抜一を受験するって決めたら、半年前なのに小論と面接練習に入ってたからな。
面接は感覚でできたから余裕だったし。
小論……? 楽勝。無難な答えの書き方を感覚的に理解してたしな。
「では、名前と受験番号、あと紙を渡してください」
「はい。受験番号186、ライン・ルルクスです。どうぞ」
近くまで行ったところで、隣にいた係員が近づいて来たため、この人に渡した。
面接官は2人の男だ。
一人は初老の、顔の怖い男。
そして、もう一人。
圧倒的な魔力の主。
ここまで魔力を見せている……解放していると言うことは、魔力探知の使える受験者にプレッシャーを与えているのだろう。
ただ、これほどとなると……魔力探知を使えなくても緊張はするだろうな、圧があるから。
柔和な顔。
若干垂れ目で、一重の瞼。身長は、おそらく160ちょい。座っているため、わかりにくいが、おそらくそれぐらいだろう。少し低めだな。
鼻までかかってる黒髪に黒の瞳。
結婚詐欺師のような顔だが、おそらくは魔術師。
それも、フォーレンさんでは歯が立たないほどの使い手だろう。
しかも、今は覚醒状態になっている。鼻下から顎にかけ、線が1本通っている。
「──どうぞ、おかけください」
「失礼します」
右足を前に出し、左足を横──椅子の前に、そして右足を引きつけ、滑らかに座る。
4拍子のリズムで、が重要。
「ほう……。近接試験、遠隔試験両方受けてるんですね」
「はい。どちらも心得がありますので」
試験官は、交互に質問してくる。
そう思っていたが、質問は全て初老の強面おじさんがしてきた。
もしかしたら、この人はプレッシャー係なんだろうか。もう、慣れたけど。
その後は、取り留めのない質問をされた。
ただ、どのように命を助けるか、という質問が多かった。精神鑑定なのだろう。
「──エルフ、人間が襲われています」
と言い、絵を見せてきた。
馬車の中に、貴族らしき人が数人。そして、少し離れたところにエルフたち。
それぞれ、別々の魔物に襲われているな。
優先すべきはやはり……
「はい。まずはエルフを助けます。魔法でエルフたちを襲っている魔物を仕留め、その後、人間を襲っている魔物を仕留めます」
「なるほど」
これで終わりかと思ったのも束の間、
「助けることができますか? その魔物が伝説に謳われる龍だとしたら? 龍ではなく、ドラゴンだとしても……勝てますか?」
今まで沈黙を貫いていたプレッシャー係の男が質問を投げてきた。
強面おじさんも目を開いて驚いている。
こいつは、何がしたいんだ? やたら「勝てますか?」を強調してきやがる。
「勝てるように、この学校で強くなります。答えるとすれば……勝てます!」
「ほう……。いいでしょう」
納得する答えを出せたかな。
「その意気込みは評価しましょう。勝てるとは思いませんけどね。精々頑張ってください。合格を認めます」
「はい。面接は以上です。この、合格証明書を持って、隣の体育館へどうぞ」
「はい、ありがとうございました。あ、最後に一つ……よろしいでしょうか?」
意地悪な質問をしてくれた礼に、この優男に宣戦布告して行くか。
「オレは貴方を越えて、その更に先へ行きます」
「フッ……」
小さく笑みを浮かべていた。そんなに面白かったのか?
「では、失礼します」
礼をして、ドアを静かにしめる。
その頃、面接会場では
「フフッ。面白い子ですね。私に宣戦布告をして去っていくとは……」
「いやはや、隣にいて冷や汗ダラダラですよ」
「あぁ、すみませんね」
強面おじさんのシャツは体に張り付くほど、汗で濡れていた。
なぜなら強面おじさんは、ずっと魔力探知を発動させていたからだ。
本来の役割は、強面おじさんが魔力探知を発動させ、その顔で受験生にプレッシャーを与え、優男が質問をする。
それを、ラインの面接をする時だけ、変更したのだ。
「ライン・ルルクスと言いましたね。覚えておくとしましょう」
「今日はありがとうございました」
「いえ。これも報酬のためですから」
普通、この優男レベルの圧には耐えられないはず。
……だが、ラインは平然と耐えた。体だけでなく、心も強いという証明に他ならなかった。
そんな人材の発見、それも特別な人材の発見に、この優男──アーグ・リリスは胸を踊らせていた。
だからといって、ラインをどうこうしようというつもりは微塵もなかった。
アーグは、目的のお宝を見つけても、それを見つけたことに満足するのであって、宝には興味がない男だった。
その頃、ラインはと言うと……
「──えーと、ここから入ればいいのかな」
「はい。ここから中にどうぞ。少し待っていただくことになります。1時間ほどですね」
時刻は1時過ぎ。
2時から何かしらあるのか。この隙間時間は、おそらくわざとだろうな。この時間で、少しでも友好関係の構築に励めと。
何人か、正門の方に行ってたからな。落ちたんだろう。
試験中何人か、身体強化を使えないやつを見かけたし。
あの王命で、国民の平均レベルが上昇したっぽいからな。
ってか、あんな簡単なやつ、なんで使えないやつがいるんだよ。簡単だろ?
体育館に入ったが、最後に来たせいで一斉に視線が突き刺さった。あれだ。馬車の時と同じ。
ただ、今回のは興味から来るものだろう。
馬車に乗った時のような、ちっぽけな敵意はなかった。
……友好関係の構築か……。
俺は気の合う複数の友達と一緒にいたからな。
初対面はしんどいぜ……。話しかけられれば話せるけど……話してないやついなさそうだしな……。
あ、そうだ。制服とか、寮の部屋割りとかどうなるんだろ?
制服はどんな見た目かわかんない。部屋割りは……どうなんだろ?
そこら辺は話をしてないからな。「寮」と書いて、「監獄」と読むんだろうか。
に、しても、だ。
さっきの優男、なんなんだ。覚醒するほどの実力者だというのはわかった。ラーファーさんよりも格上な気がした。
身体強化や覚醒──覚醒は身体強化と同じか──を発動させても、個人の資質によって上昇率は変化するらしい。
だから、冒険者の魔鉱級にミスリル級とオリハルコン級の2つが存在してるんだそう。
で、さっきの優男はオリハルコンの中でも上位だろうな。
あれ、ラーファーさんはどっちだっけ。近衛騎士だからそんなのはないけど、たしかオリハルコンだったかな。……いや、ミスリルだったな?
単体の時に最も実力を発揮できるってのは、特段珍しい訳ではないそうだからな。俺も覚醒してやる!
……にしても、馬車の時も、みんな誰かと話してたな。
同じ出身だからなんだろうなぁ。
オレの村は、この冒険者学校のためにあるようなものだから、他の村よりも小さめらしい。
外周が約4キロ。家はおよそ30軒。家1軒あたり、最低でも2500平方メートルの土地がある。
それに対し、他の村はとてつもなく広い。
外周は約8キロ。家は50軒前後が一般的。土地は、大体5000平方メートルほど。
エルフの国なんかは、規模が桁違いらしい。
詳しい数字は知らないが、1つの村で、人間の村3つ分はあるそうだ。だが、そこに住む人口は村1つのおよそ半分とか言ってたな。
エルフの国はとてつもなく広いらしいからな。前世でいうと、カナダ、アメリカ辺りぐらい? 北部の島々とかは除いた。
いや、世界地図がないから、よくわからないな。もしかしたら、ロシアぐらいかもしれない。
なんて、考えていたその時、
「──ねぇ」
後ろから声をかけられた。え……なんで?
────────────────────
ブックマーク、コメント、星をつけて頂けると嬉しいです!
皆さんが読んでくださることが、私の作品を書くエネルギーへと変換されているのです!




