12話 親善試合
「ライン、昨日の続きだ」
「ん〜? ああ、はいはい。じゃ、行きましょかー」
「ラーファーを呼んでくるから、先に行っててくれ」
さっさと行っとくか。
「待て。ライン。そっちは山の方向だ」
う……、間違えた。
「ラインくん、武器はこれでよかったのよね?」
「うん。ありがとう。でも、いいや。最近、その棍、合わなくなったから。というより、今まで使ってた武器全部合わないんだよ」
納得した顔でオーカーさんが言った。
「ラインも成長したからな。そもそも、武器は鍛冶屋でサイズを測ってから作ってもらうものだからな。ラインが使ってた装備は大人の冒険者が使ってた物だし」
へぇ!
武器はオーダーメイドなのか。
夢が広がるな!
「問題ないよ。魔法を使って作れるから」
「? そんな魔法あったか?」
「ラインはあれなんじゃないか? 属性特化型。一つの属性しか使えない代わりに、その属性を自由に操れるやつ」
「……水晶術師とでも言えばいいのか?」
「別にわざわざ呼び名をつける必要もないんじゃない? 私みたいな回復術師も、似たような者じゃないの」
「水晶特化なんか、史上初だろうからな。呼び名はなくていいだろ。な? ライン?」
「まあね。水晶特化です、って言えばいいし」
なんて話していたら、フォーレンさんがラーファーさんを連れてきた。
「それじゃ、行こうか」
「じゃ、始めようか」
「審判は俺だな。あぁ、俺のことは気にしなくていいからな。上手く避けるから」
「ありがとう。心置きなく戦える」
そもそも気にしてねぇだろが。
俺も気にしてないけどさ。
あ、あとで属性特化型について教えてもらお。
「準備は良さそうだな。もし、ラインが危険だと判断したら、遠慮なく止めに入るからな」
「はっはっは。あんた相手だと、負けるかもしれないな」
「じゃあ、明日あたり勝負してよ」
「「え!?」」
「おお! いいな!」
フォーレンさん、アミリスさん、オーカーさんは若干嫌そうな顔を。
リーダーさん、ラーファーさんは少し嬉しそうな顔をした。
まさか、言ったらいけないやつだったかな?
「ラーファー、やろう!」
「受けて立とう!」
止めに入るかな、と思ったけど止める気はないみたいだ。
まあ、近衛騎士……中でも、単体で実力を発揮する人と戦えるとなると、経験においては合格点だからな。
「あ、ちょっと待って、リーダー。明日は領都に帰らないと。今日が2日目だから、明日は時間ないわよ。村人の修行もあるし」
「じゃあ、来週だな」
「そうするか。で、始めるか?」
2人とも少し嬉しそうだ。
「私はいいぞ」
「オレも、問題ない」
リーダーさんは剣、オーカーさんは槍。フォーレンさんとラミリスさんは武器を所持していない。
4人とも、同じデザインのガントレットをはめている。
これがチームの証だ……とか言っていた。
対してオレは普段着の服だけ。
数でも、質でも不利。
そしてなにより、向こうはパーティーで実力を最大発揮する。
この不利な状況を覆すには、誰か一人潰せばいい。
ただ、アタッカーが2人もいるから、後ろの2人には近づけないだろう。
つまり、勝ち負けじゃなく、どこまで長い時間戦えるか、が重要になってくる。
命の奪い合いじゃない。
「3……2……1……開始!」
始まった。
合図と同時にオレは駆け出し、4人は身体強化を発動した。
もちろん、オレも走りながら身体強化を発動させた。
「──『火球』」
前衛2人の間から飛んできた『火球』をなるべく無駄な動きを抑えて避ける。
それと同時に『晶弾』をフォーレンさんにむけて放つ。
だが、それはリーダーさんによって弾かれた。
「速いな。それに小さい。身体強化がなければ、私も危なかったな」
「少し残念だよ。出だしは一番いい魔法なんだけどね」
「属性特化型は魔法詠唱を必要としないと聞いたいたけど、厄介だな」
回復魔法は詠唱がいるのか。まあ、似たようなもの、としか言ってなかったからな。
似て非なるもの、なんだろう。
普通の魔法と、属性特化型の魔法の間、と言ったところか。
防がれてしまったが、少し言い訳をさせてほしい。
あの『晶弾』は、身体強化の前──つまり、合図とともに生成していたものだ。
身体強化を発動させた後で生成すれば、もっと速くなるし、頑丈になる。
つまり、こういうこと。
今放てばいい。
こうやって考えている間に生成した。
「これならどうだ!」
『晶弾』を8発、前衛2人にむけて放つ。
もちろん、殺傷能力は低くしてある。
2人はそれぞれの武器を振り、弾を防いだ。
半分は防がれてしまったが、半分は当たった。
そしてそのまま距離を詰めてきた。単純なパワーでは敵わないだろう。
「終わりだな」
「いや、まだだ。──『晶棘』」
地面から水晶の棘を出現させ、進行を防いだ。
2人は左右に避けた。『晶壁』でも防げた。そうしなかった理由は、ただ一つ。
『火球』が迫ってきていたからだ。
フォーレンさんの『火球』は、身体強化状態だと中級レベルにもなる。
『火球』だけ、ではあるが。
だからか、『火球』ばかり使ってくる。
他の手がわからないから安易に近づけない。
だから、前衛から倒して、少しずつ手札をめくりに行こうと思っていたけど。
チームで白金ランクってのは、思っていたより厄介だな。
『火球』を迎え撃つか、避けるか。
迎え撃つ!
前回と同じ、だが違う技で。
「──『晶拳』!」
前は凹凸があったが、今回はより洗練されたものになっている。
水晶の四角柱が集まってできた姿をしている。
前回はイメージが安定していなかった。
こんな名前を付けてしまったからな。その反省を生かし、イメージを定着させた。
押し勝った!
そのままフォーレンさんに……!
──なんてことはなく。
続いて3発の『火球』が発射され、『晶拳』は消え去った。
だが、今はそれどころではなかった。
背後から、前衛2人が仕掛けてきた。『晶壁』で防いだけど。
「ちゃんと覚えていたな。よしよし」
「忘れられると思った?」
お決まりの流れだな。
迎え撃つことで、敵の目を引かせる。
互いにやったことだ。
別に、『晶拳』を迎え撃つ必要はなかった。避けられたはずだ。
なのに、あえて迎え撃つという手をとった。前衛が攻撃を仕掛けないわけないしな。
「抜群の戦闘センスだな。リーダー、油断するなよ」
「わかってる」
……。
間に壁を挟んでいるからな。今、油断しているな。
「──『晶壁棘』!」
「グォッ!!」
「油断するなって言ったのはどちらさんでしたかっけ?」
「うるさい! 壁から攻撃が来るとは……」
『晶壁』と『晶棘』を組み合わせてみた。
そして、2人は致命的なミスを犯しているんだよな。
──後衛がら空き。
つまり、大チャンス。そうとなったら?
回れ右! そして? 武装しま〜す。
去年習得した、『晶装』。
全身鎧を作り出すことができる。もちろん、いらない部分は作らないことも可能。
今回は小手を作った。
小さめの『火球』──『火の玉』だったか──を連発で撃ってくるけど、残念。
「残念、──『晶盾』!」
スモールシールドを前方に多数設置した。
オレの魔力圏内のため、自由に動かすことができる。
隙間を通り抜けて来たものは、殴って打ち消す!
減速なしで辿り着くことに成功した。
とどめ
──のはずだった。
後ろから気配を感じた。十中八九、前衛2人だ。だから、『晶壁』を後方に設置した。
──それが失敗だった。
フォーレンさんが至近距離から『火球』を放ってきたのだ。
『晶盾』は全て瞬時に破壊され、咄嗟に顔を守った。
『晶装』で全身鎧を作り出せていれば、被ダメを軽くできたかもしれない。
でも……
──もう、遅かった。
背後から攻撃を受け、倒れ込んだ。
起き上がろうとした時には、喉元に剣、胸に槍、手のひらをこちらに向けた魔術師。
いじめか!
「そこまで!」
審判の声が、無情にも響きわたる。
いや、事実、オレは負けた。
何を悔しがる必要がある? 相手は冒険者で、向こうにとって有利な状況の中で戦ったんだ。
なのに……。
「ハハッ。良い気分だ」
なんでこんなに気分が高揚しているんだ?
「いや〜、強いな。将来が恐ろしい」
「もしかしたら、覚醒者になれるかもな」
「もし、じゃなくて、確定でしょ、これは」
あぁ、本当に良い気分だ。
なんでだろうな。手応えを感じたから?
それもあるだろう。でも多分、答えはこれ。
戦うのが、本気でぶつかりあえるのが、楽しかった。
前世だと、試合になんの喜びもなかった。さっさと帰らせてほしかった。
なんで、だろうな。
魔法のおかげ……かな?
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