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【完結】戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ  作者: 真輪月
戦闘狂の水晶使い
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第102話  戦争の前菜


 夜通し飛び続け、日が昇り始めた頃、目標の都市──メギオンが見えてきた。

 今のうちに防具を装着する。


「すまないな、フレイ。中までは侵攻されていないようだし、中で休んでいていいぞ」

「ぶるっ!」


 不要の意思が返ってきた。


 無理は禁物なんだが……まあ、自分の体調管理ぐらいできるだろう。賢いやつだし。

 それに、フレイは飛べる。飛んで塀の向こうに行って休むこともできる。


 ……飛ぶ?

 そうだ、セイレーンとかは飛べる種族だよな。

 飛べる種族は少ないが……まあ、魔術師が対処できるか。


 騎士と冒険者が戦っているのはこちらとは反対側の門――南門だった。

 都市内にも数人待機していることから、交代制で戦っているのか。


 だが、この状況じゃあどうやっても疲労は蓄積する。

 この都市が落とされるのも時間の問題か……。

 まあ、オレがそうはさせないんだが。


 しかし、人手が少なすぎるし、ちゃんとした指揮官がいない。

 都市が攻められているのであれば、戦場における指揮官が1人いるはずだ。

 

『ライン、まだ通じる(・・・・)……ようだな。いいか、最初に落とすべきは騎士団駐屯地だ! おそらく、その都市の中枢は乗っ取られている』

『了解!』


 それだけ交わすと、『通話トーク』が切れた。


 騎士団長の言うことは理解した。

 まあ……騎士団長が確認するといえば、この都市の中枢にと連絡を取ったってことだしな。


 つまり、繋がったが、相手は幻術を使った魔物だったということか。

 まあ、こちらも危ない。

 ささっと片付けてしまおう。


 あらかじめ『透視』を発動させ、上空から騎士団駐屯地へ向かう。


「フレイ、すまない。休むのはもう少し先にしてくれ」

「ぶるる」


 了解の意思が返ってきた。


 そうだ、念のため魔力探知も発動させる。

 すると、すべての謎が解けた。


 なぜ、援軍がいないのか。

 なぜ、中枢が乗っ取られているのか。

 なぜ、誰も気が付かなかったのか。


 それらの答えは、この魔力の壁(・・・・)にあった。


 かなり濃密な魔力量だ。結界に似ている。

 が、結界のように完璧な遮断ではなく、防いでいるのはおそらく『通話トーク』ぐらいだろう。

 魔法の威力も若干低下しそうだな……。


「さあ、行くぞ!」


 フレイとともに、騎士団駐屯地へ向かう。




 騎士団駐屯地


『おい、誰か来たぞ』

『演技を続けろ! 外への連絡は封じているからおそらく迷い込んだのだろう』

「よう!」


 ひそひそと小声で話をしていた騎士2人のもとに、窓から男が乗り込んできた。

 白色のコート。仮面。武器はなし。


 誰でもわかる。近衛騎士の【放浪者】。

 仮面から、それが【水晶使い】であることを判断できるが、この2人は知らなかった。

 

「これはこれは。【放浪者】様。よくお越しで」


 次の瞬間、2人の体は崩れ落ちた。

 一瞬遅れ、2つの物体がごろんっと落ちた。

 

 傍から見れば殺人──……殺エルフ?──だが、次の瞬間、この男──ラインの無実が証明される。


 床に転がる体2つと頭2つが、妖狐のそれへと変化した。

 ラインは『透視』で、2人の騎士が妖狐であったのを確認済みだ。

 そうでなければ、殺しはしない。


 ラインの持つ刀には、一切血は付いていなかった。

 それほどの速さだった。






「さて、ささっと次へ向かうとしよう。まずはこの術師を仕留めないとな」


 この結界を維持できるのは、かなりの熟練者である証拠だ。

 もしかしたら、魔物連合第三隊の隊長……本物だろう。


 戦場には出ていないだろう。

 魔法の詠唱や流れ矢の回避に集中力を削がれるわけにはいかないからな。


 と、すると……安全地帯。

 ここではないとすると……領主の館か?

 

「フレイ、領主の館へ行くぞ」


 


 領主の館に到着し、玄関から──もちろん、ノックして人が出てきてから──入った。 


「【放浪者】か。戦況は順調だと聞いたが……」

「領主様ですね」


 入ると、壮年の男のエルフが出てきた。

 身なりや姿勢から、領主だと判断した。


「うむ。お主ほどの戦力がここに来ているということは、戦いは終わったのか?」

「──領主様、どうされ……【放浪者】ですか」


 奥から騎士が出てきた。

 領主は本物だが、こいつは魔物か。


「【放浪者】様、今すぐ戦いに──」


 うるさいから頸部を強く殴って気絶させた。

 すると幻術が解け、妖狐の姿を露わにした。


「こ、これは……!?」

「この都市の中枢に魔物が入り込んでいます。この館にいる騎士や冒険者はこいつだけですか?」

「あ、ああ……うむ、今朝、襲撃を受けているから護衛に来たと」


 領主は今朝に連合が攻めてきたと思っているのか。


「襲撃は昨日からです。すでに騎士団駐屯地を見てきましたが、そこにいた騎士はすべて魔物でした。遺体は一室に隠されていました」

「そうか……なら、私はどうすれば……」

「私はこの戦いを終わらせに行きます。なので、何者も館内に入れないでください」

「うむ、わかった。一つ、お主は【水晶使い】でいいのだな?」

「はい、その通りです」


 一応、オレを疑ってくれている(・・・・・・・・)ようだ。とりあえず安心。


「では、行ってきます」

「頼んだ」


 カッコつけて窓から去る。下にはフレイが待機済みだ。

 ……決まった! ……小脇にこの妖狐がいなければな……。

 



 フレイとともに、まずは冒険者組合に向かう。


 騎士たちを殺した犯人は妖狐ではない。戦闘痕が一切なかった。

 壁も天井も無傷。装飾品も無傷。


 ありえるとしたら、人狼だな。

 先に妖狐が入り込み、人狼を招き入れた。

 人狼の数は1体か2体ぐらいだろう。


 騎士団駐屯地にも、領主の館にもいなかったとすると、可能性があるのは冒険者組合。

 そこにもいなければ、すでに都市を去ったか、民家に潜伏しているか。

 どちらにしろ、組合にいなければ戦闘に参加する。




 冒険者組合の扉を開けると、戦闘準備や仮眠をとる冒険者や騎士で溢れていた。

 回復術師による治療も行われているようだ。

 時間も押し迫っているようだ。


 ひとまず、『透視』で見渡すが、受付嬢も含め、魔物はいなかった。

 とすると……。4階か。


 4階は組合長、組合員の部屋だ。

 

 受付嬢はオレの姿を見て顔パス……するつもりはなく。


「すみません、身分を証明するものを見せてください」


 オレは【水晶使い】だから、騎士の身分を証明するもの。

 ……何かあったっけ?

 

 ああ、思い出した。

 オレは無言でオリハルコンを手の中に出した。

 

 受付嬢はペコリとお辞儀をし、持ち場に戻った。

 戦ってくれとは言ってこなかった。が、周りの冒険者や騎士は、お前も戦えよって言いたげな顔をしていた。


 残念ながらオレは仮面を着けているため、顔芸で返すことはできない。


 オレは4階の扉をノックもせずに開けた。

 まあ、魔物じゃなかったとしても、状況が状況だ。見逃してくれるだろう。


 ただ、万が一の保険のため、急いで来てそのまま開けましたよって開け方にしておく(どんな開け方だよ)。


『『!!』』

「……大当たり……」


 思わず笑みがこぼれてしまったじゃないか。

 

 部屋の中には、組合長と組合員が1人と、人狼が2体。

 組合長も組合員も魔物だ。


 まさか、組合長までもやられているとは……。だが、部屋の中には少しだけ戦闘痕がある。

 急所を突かれたが、必死に抵抗したってところだろうか。


 だが、初めから知っているオレからすれば、こいつらは敵ではない。

 人狼が跳びかかってくるが、それよりも速くオレの一撃が走った。


 人狼はミスリル級だが、暗殺向きの魔物だ。直接戦闘能力は低い。

 

 刀を出し、『飛撃』を放つ。

 普通は防ぐ反応をとるところだが、オレが狙ったのは椅子に座る偽組合長だ。

 自分への攻撃でなかったことから、2体とも動きが一瞬固まった。

 

 そんな人狼2体の首を斬り、偽組合員をノールックの『晶弾』で脳天を貫く。

 

 偽組合長はすでに幻術を解き、机の上に立っている。行儀の悪いことだ。

 真っすぐにオレを見てくるが、バカだね~~。


 偽組合長の斜め後ろには『晶装・槍』があるってのに。

 

「最期に吐け。この都市内に潜入したのはお前らだけか?」

『最期に教えてやる。そうだ』


 わお。自分で負けを認めちゃったよ、こいつ。

 まあ、こいつに言う最期・・はオレの最期を示しているのは知っているけど。


 妖狐はこちらに襲い掛かろうと足に力を入れ……。

 るが、その前にオレの攻撃が後頭部と背中の真ん中に刺さった。

 

『ぐっ……がふっごふぉっ』

 

 妖狐は息絶えた。 







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