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未来色少女  作者: 葵鴉 カイリ
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未来型兵器1

 教室の窓から入り込む斜陽の光と、その神々しいも麗しい姿。


 俺は……知っている。

 

 人間のようで人間では無い美しい青緑に輝いた瞳の色、絹のように滑らかで、純白の祭服を……


 瞬間頭を割るような激しい頭痛が俺を襲う。


 それはきっと思い出してはいけない。


 それはきっと知ってはいけない。

 

 それはきっと……今辿り着いてはいけない真実。


 瞬きをする。


 瞬きをした。

 

 彼女の姿が身に覚えのない記憶と重なる。


 まるで今にも泣きそうな表情で、見るに堪えないその涙。


『ごめんなさい……』


 グサリと俺の心臓を貫く痛み。


(あの時……俺は彼女と何を話した?)

 

 手についた真っ赤な血液。


 瞬きと同時にザザザザザとノイズ立てて、転々と場面が変わる。


〔なんだ?この記憶は?〕


 頭の痛みが引いていくのと同時に映像もぴたりと止んだ。


「っっはぁはぁはぁ……はぁ」


 一気に空気が肺に入ってくる、どうやら今まで息をする事を忘れていたようで、すっと生きている現実に戻った時、酸素を欲する心臓が激しい動悸を立てて俺に呼吸を急かしていた。


 胸に手を当てて心臓の鼓動を感じながら刺されていない現実を確認する。


 「大丈夫?」

 

 「え?」


 彼女は心配そうに俺を見つめる。


 なぜそんな事を聞いてくるのか最初は意味がわからなかったが、ポツリポツリと雨のように額から頬を伝い流れ落ちる汗の量にすぐ気がついた。きっと今の俺は傍から見たらお顔真っ青で病人みたいな顔してるんだろう。


 少し取り乱したが彼女にバレないぐらいの小さな息を吐いて、平然を装いながら会話を続ける。


「悪い、なんでもない。それで未来型兵器ってのは一体なんなんだ?というか小早川さん、複数形に疑問って……先生とグルじゃないのか?」


「未来兵器は、言うなれば改造人間。スーパマン?」


「いや、スーパーマンは人造人間じゃないし、そもそも小早川さん女性じゃん、ウーマンじゃん」


「そう。別にどっちでもいいわ」


 あれ?もしかして拗ねたか?表情は変わってないようだけど少しだけ可愛らしく頬を膨らませているのがわかる。


「もし、兵器って言うならなんか見せてもらっても? あ、一応言っとくけど殺人以外で頼むわ」


「分かったわ」


 そう言って彼女は左手からマジックのように小さな種が出現させて、それを地面に落とした。


 落ちた種に左手を向けた瞬間、左手から肩の方に向かって紅の回路が起動する。


 それから種は10秒もたたないうちに彼女の背丈を少し超えるぐらいの小さな木に成長した。


 * 


ありえない。


 教室はコンクリートでできており、しかもここは3階、植物が栄養を吸収できる土も水も一切存在しない場所に、先程までなかったそこに、確かに木が生えている。


 その歪な光景は彼女の存在を裏付けてしまうほど異常だったのだ。


 半信半疑で無茶なことを言ったつもりなのに、彼女は能力をしっかりと見せつけてきた。


 はっきり言って全てがありえない……信じられない。


 そう言って一蹴出来そうなくらい夢幻のような話だが……


 俺はそこに歪に生えた木をしっかりと目視で確認できている。


「これ触っても大丈夫なのか?」


 そう聞くと、小早川さんはコクリと頷いた。


「いい。 ただここには栄養がないからすぐに枯れてしまうかも」


「そうか」


 驚きすぎて淡白な答えしかできない。何度も目を擦ってみるがそれは幻のように消えることはない、恐る恐る近づいて人差し指と親指で少しだけ葉っぱに触れてみた。葉脈もしっかりとあり、匂いも触り心地も新緑の葉そのもの。


 しかし、触ってたった3分程度でその葉は茶色く朽ちて腐り始めていた。


 俺は驚いて急いで足を後進させる。


「やっぱり腐っちゃった。 でも結構成長した。さすが未来とは違う、空気がいい」


 そんなことを言いなだら可愛らしく自分の背丈ほどある朽ちた木の隣で自分の身長と比べている小早川さん。


 しっかりと質量のある木を見ながら震える声でようやっと確信をした。 


「小早川さん……本当に未来人なんだな」


「だからそう言っているわ」


 彼女は表情一つ変えることなく、ただ俺の質問に即答した。


 未来人……あまりにもSF過ぎて信じきれないがもし、これが白昼夢などではなく現実なら今までの彼女の行動に少なからず今納得がいく気もする。


 思い返してみれば彼女の今までの言動……例えば男子よりも圧倒的に早く走れたり、全教科100点だとか……惚れ過ぎていて全く気にしていなかったが明らかに普通の人間よりハイスペックすぎる身体能力と、知識量。


 それに小早川さんを家に帰る姿をクラスの誰一人として見たことがないらしいし、色々な人が声を掛けてはいるのに彼女は常に無口で人と接そうとしない。


 にも関わらずクラスの誰一人として彼女を忌嫌わらない。


 全て未来人……ではなく未来の兵器としての能力なのだろうか?


「もしかして身体能力が異常に良かったりテストで満点取ってたりするのって兵器だから?」


「そう。 みんな気づかないくらい溶け込めれていた。 タイターはヴィリには能力を隠すことが出来ないと言っていたけどちゃんと出来る」


 自信満々のこの表情、話していて何となく察してきたぞ。


 多分小早川さん……天然だ。


 まぁ能力以前に俺的にはもっと未来人だと確信できる根拠があるのだが……


 俺は小早川さんの容姿を何度も瞬きをしながら確認する。

間違いないだろう。小早川さんの姿は前の世界で俺を殺した彼女と姿が一緒だ。


 ただあの時俺を殺した小早川さんの背丈は俺と同じ位で髪も長髪だったし、どこか大人びていた気がする。

いくつか差異はあるが、それでもあの時俺を殺した人物が彼女である事に変わりはない。


 もしもあの時点で、彼女が未来から来ていたのなら……考えれば考えるほどに点が線になって繋がっていき、彼女の言葉に真実味が帯びてくる異常さに少しゾッとした。


 しかしそうなると彼女の存在を知っている先生は一体何者なんだ?俺と同じく前の世界から来たというなら何故あの人は俺が刺されたことを知らない?もしかしたら先生は未来からこの時代に来たジョンタイターなる人物なのでは?

もしそうなら俺が刺された事を知らないのも、先生が小早川さんは俺を殺さないと言った言葉にも合点がいく気がする。


 なんだ?俺ってそんなに巻き込まれ体質だったのか?


 巻き込まれ……てるな。誘拐されてるし、鏡花の病気の件についても、十分に巻き込まれてる。


 なんで俺、こんな面倒なことの巻き込まれちゃうのかなぁ。


 俺は大きく落胆した。



「なぜ落胆するの?意味がわからない?」


「いや、すまない。こっちのことだ気にしないでくれ……それよりも先生の事知らないって本当か?先生はこの状況のこと知っててみたいだったけど?」


「知らない。 私は一人できた。 間違いない」


 信じて欲しい、そう言わんばかりに瞳を大きく輝かせて、俺の手をギュッと握る。


 あああ、手が柔らかい!駄目だって、そんなに親しく無い男の手を不用意に握るなんて!


 先生の事を言いたいけど!言った方がいいのはわかるけど!


 もう少しこのままいでいたいので、俺は握られたまま表情を殺して淡々と話す。


「そうか。それならそれで構わない。 それで?わざわざ未来からタイターを探しに来たとか言ってたよな」


「そう最悪の未来から消えたタイターを追いかけて今日タイプθ-κに来たのに、何故か全く知らないうちに未知数な世界線、タイプhに変わっていたの」


 タイプθ?κ?h?、世界線、未来人、最悪の未来、ジョンタイター。


 小早川さんが来たという未来はどうやら輝かしいものではないのだろう。


 大体の話は見えてきたのだがいまだに分からない言葉がある。


「それで、そのタイプhってのはなんなんだ?」


 そうこのタイプhというワードだ。


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