覚醒 4
すみません掲載予約する予定だったのが間違えて投稿してしまいました……
一旦取り消しを行いましたが、わざわざ足を運んで見に来てくださった読者の方々に申し訳ないのでやはり再度掲載させていただきます……予約完了をした手前……何というか……すみません……
風を切る体、重力に逆らうことなく真下に落下しながら耳元でヒューと甲高い音が響いている。
「俺は……戻って来たのか?」
さっきから意識が遠くて生きてる心地が全くしない、まるで夢を見てるような、そんな感じだ。
(おじさん、これから僕のいうこと意識して)
脳内に少年の声が響く。
それよりもなんで俺空から落ちてるの?
(そりゃシステリアを突き放したからね)
システリアを……?
少しずつ思い出してくる。
そういえば俺の意思とは関係なく勝手に口が動いて、体が動いて、気がついたらシステリアを突き放してた様な気がする。はは、だとしたらシステリアもまさか本気で抱えていた腕を振りほどかれるなんて想定外だっただろうな。
……そういえば一昨日ヴィリの暴力を止めた時も少しの力で抑えれたよな?もしかして彼女達の力は俺に対してはそれ程強くは働かないのか? もしそうならクロノスの血液とクロノス因子の関係性に深く関係しているのだろう。
きっと今頃真上でシステリアは愕然としているのだろうか、そりゃ助けるために必死に逃げ回ってたのに唐突に突き離されちゃ理解できないだろうな。
俺は今も意識は遠く自分の意思で体を動かしてはいない、感覚的にはそうだな。例えるなら映画館で映画を見ているようなそんな感覚に近い、だから客観的に視覚を通して現状を見ているのだが……それにしても……なんだ。こうして見ているとシステリアから見た俺はそこらへんにいる一般人で、弱者で、守ってもらうことしかできない情けない男だと思われているのかもしれないな。
もしそうだったなら俺が未来で一緒に闘いただなんて語る姿はさぞ滑稽に見えただろう。
でも俺は本気だった。
諦めるなんてできなかった。
(後はおじさん次第さ、頑張ってね)
少しずつ映画の映像が近づき、意識が鮮明になってくる。
ふと隣を見ると少年が隣にいることに気がついた。彼はにこりと笑って立ち上がり、俺の前に来て手を差し伸べる。
映画館の中で俺は彼の手を取ると同時に体の五感が戻り、生きていることを実感する。頭痛が消え以前よりクリアになった脳内に流れこんでくるのは他でもない、クロノスの血液の操作についての断片的な知識だった。
空を飛べない俺は重力に逆らう事なく引力に従う。
(わかった……あれ神様だわ、凄いな先生に使い方は教えてもらってたけど本来の使い方っこうなんだ)
俺はクロノスの血液の武器としての使い方想像すると、右手の血が俺の意思でうねうねと動いていた。
(うわぁ相変わらず気持ち悪……本当にこれが能力ってどうなんよ)
先程高層ビルでミサイルが着弾し、爆発した際に顔を守るために突き出していた血だらけの両手を真横に向ける。
機会は本番一発勝負。
深呼吸をして体を脱力させる。
全神経を右手と視覚に集中させて機会を待つ、色が消えるほど、視界が狭くなるほど、全てがスローモーションになるほど、1秒を1分に感じ始めた時……ついにすれ違った。
刹那、右手から滴る血液を鞭のように扱い、敵を捉える。
成功したのかなんて、わからない、だけど、ここで奴を止めないといけない!!!
敵は相当な速さで上昇していたのだろう、捕まえた瞬間に反動で俺の体が少し空に引き戻される。
「捕まえたぁぁぁああああ」
体を大きく捻る。
腕が千切れそうなほど痛む、血管が血を噴き出す、骨が外れる、それでも捕まえた奴を俺は離しはしない。
血液を体の中に戻そうと右手を握り締めると、鞭のようにしなっていた血は硬化し直線に張る。
重力の降下ではきっとこいつは殺せないし、何よりビルに直撃させることは周りを巻き込めかねない……どうする?どうする?
考えをめぐれせる。
ビルまであと100m……誰も死なない方法は……
「先生!システリアの能力は!!」
『……!? 転移だ!それよりもどうやって意識を……』
先生は俺からの質問が意外すぎたのか戸惑ったように返答し、状況を説明するように話かけてきているが、答えられるほど並列して物事を考えれる余裕は全くない。
先生は確かに転移と言った。
ならできることは一つ……
(勇……祐……死なないで!)
システリアの声が聞こえた。
もしかして契約の効果で念話もできるのか?
わからない……だけどシステリアが確かにこちらに来ている事は感じ取れる。
一か八か、俺はビルまで残り30mの所で端的に念じる。
(海、転移)
「伝われええええええええええ」
俺が念じながら発した言葉と同時に、間後ろに現れたシステリアが俺を抱き抱えて加速、敵がビルに当たる寸前でシステリアはビルの真上に魔法陣を作り上げて時間跳躍を行う、1秒足らずでヒラリと光の中に消え、俺たちの目下50mが大海原に変わる、俺を抱えたシステリアは更にスピードを加速、敵は真横まで来ているがGが強すぎて抵抗できるほどの余裕はなさそうだ。
俺は最後の力を振り絞り、数cm、敵を俺たちよりも下に移動させる。
波一つたっていない海面手前、全身の力を抜いて能力を解放、敵を叩きつける、大きな水飛沫が周辺に飛び散り、海面スレスレでうまく力を逃がして楕円を描いて上昇し、距離を取ってかたら満身創痍の俺を抱えたシステリアは右手を前に突き出し、エネルギーを圧縮し、掌に赤い熱が集中したと思った途端、何か不気味で小さな黒い球体が出現する。
「さようなら……」
システリアは感情のない言葉を吐き捨てて真後ろに下がり転移を行う、瞬間気がつくと俺たちは先程衝突しかけた高層ビルの屋上に移動していた。
朦朧とする意識の中、うっすらと見えたのは遠くに見える地平線、ここから海まで20kmは有にあるにも関わらず、雲にすら届くほどの大きな水柱がしっかりと目視で確認でき、それから数分後に大きく唸り声のような重い爆発音が空気を揺らす。
冷めて目で遠方を見ているシステリアはどこか懐かしそうな表情に見えた。
「人がいるのも邪魔なものね」
その時改めて実感した、これが未来の世界なんだと。
しっかりと聞こえていた爆発音が遠のいていくと同時に全身の力が抜けて俺はその場に倒れ込む。
原因はきっと疲労困憊によるものだろう、たったひと時の戦闘だったというのに肉体の疲労は過去一番まで跳ね上がっている。腕は上がることなく、指一本動かすことすらままならない。
ぼやけて見えるシステリアは俺の異変に気が付いて急いで何かを施しているように見える、真上からはもう1つの影がやってきてシステリアと誰かが何かを一生懸命に叫んでるんだよ。
「システリア……君を……助け…………」
(……そんなに泣かなくっても……死ぬわけじゃないんだか……ら)
そう思いながら本日3度目の気絶で最終日を迎えることになる。
いや、違うな。
この気絶を最後に俺の当たり前が終わったんだ。




