全てが繋がって尚 3
ここまで付いてきてくださった皆様、本当にありがとうございます!
明日からは1話投稿になりますが作品は第一章書き終わっており、品質は落ちる事はありません!むしろこれから日常パート終了後は一気に話が進みます!!
世界線の説明に付いてきた皆様につまらないなど言わせません!
最後にそう来たか……そう言わせれるオチがありますので楽しんでください!
前置きが長くなりましたがこれからもよろしくお願いいたします!
一緒に駆け抜けていきましょう!
いつもの様にすぎる日常でも、終わりが近づいているという事を感じるだけで何とも感慨深いものがあるものだ。
だがしかし!
勉強に対して真摯になるかと言われるとそういうわけではない!
見よ!この堂々とした欠伸を!
口だけ開けて、声は出さないが担任の先生はすぐに気づいてくれる程の立派な欠伸だ。
時間は少し戻るがあの後、すぐに教室に鏡花がやってきて俺に膨れた顔をグッと近づけてきた。
俺は鏡花との約束を完全に忘れていた。
『新型AIの発表があるから一緒に行こ!』
そう言えばそんなそんな約束していたな、前回の鏡花ならこの時点でゲームオーバー。
きっと保健室送り間違いなしだろうが、この世界の鏡花はぽんぽんと俺を優しく殴るだけで病気が発症しない。
以前の鏡花は病気の事でかなりに悩んでいたし、そんな彼女を一番近くで見てきたから、こうして病気が発症していない本来あるべき姿の鏡花と接することができているのは感慨深いもんがあるな。
俺はその後ちゃんと鏡花と藤司に謝って次の約束をした。
一年前からに方々でニュースになっている六つの彗星を見に行く約束だ。
確か流星の名前はオリュンポス彗星群……これはギリシャ神話におけるヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン、そしてゼウスの6人が由来とされている。
流星程度ならこのような世界で大々的に報道もされないし、わざわざオリュンポスという神聖な名前を宛てがうことなどしなかっただろう。これは彗星群……彗星とはすなわち小天体、そしてこの小天体は太陽系のものではなく、それぞれが全く別の場所から偶然地球に集まるのだ。
専門家たちはその数奇な彗星群に大変頭を悩ましたらしい。
それは超周期彗星の様に楕円の公転軌道を描くものではなく、放物線と双曲線?とかいうよくわからない軌道を描く彗星で簡単に言えば一度来たら2度と戻っていない彗星らしい。
だから宗教的なものができていたりと、世界の人々はもう彗星群しか眼中にないみたいだ。
この彗星群が観測できるのが明日の夜11時、まさか彗星群が明日降るなんて……完璧に盲点だった。
そういえば……前回の世界で鏡花とも、約束をした気がするな。
結局、俺が行方不明になったせいで一緒に見にいけなかったし、今回は見に行きないな。
彗星群を一緒に見にいくということで、何とか許してもらって、気づいたら昼休み。
昼食は今朝家にあった食材を適当に詰めた自作弁当だ。
美味しいかはわからないが、確認しながら口に含む。
(うん、腐ってないな)
「おい、勇祐……今日……弁当作ったのか?」
安心しながら弁当を頬張っていると、藤司が顔を引きつらせながら聞いてきた。
「あぁ、よく気づいたな」
毎日一緒に飯を食べてるだけの事はあって、すぐに俺の持って来た弁当を誰が作ったのかお見通しとは恐れ入るな。
俺が親友の観察眼に感心していると、藤司は嫌そうに箸をこちらに向けきた。
「そりゃ、生かぼちゃに火の通ってない肉……ご飯には、うま味調味料が雪のように敷き詰められている……こんな料理と呼べない弁当お前しか作れないだろ……親御さん止めなかったのか?」
「現実逃避したくて家族が起きる前に家出たからな」
「……お、おう」
そんな素っ気ない会話を2人で駄べりながら昼食をとる。
基本的に学校では鏡花と藤司と俺の3人で行動がすることが多いが、毎時間男の中、ましてや女子人気が高い藤司の近くに、恋人でもない鏡花が混ざると他の女子から嫉妬されて良くない噂とかが立ちかねない。
その為、鏡花は昼だけ別の学友と食事を取っている。
ふと隣の席のヴィリに目を向ける。
相変わらずの堂々のボッチ飯。
昨日話してみた感じ、彼女は未来から来ただけの抜けている少女って感じだし、仕方なく人を避けているだけで本人も独りで居たいわけではないと思う。
今朝から俺に話しかけてこないのは彼女なりに気を遣っているのだろうから、兵器だとしてもそうした気遣いができる時点で彼女にも心があるということだ。
逃げてしまったのは単純に申し訳ないし、未だに気まずいのも事実。
だけど、何処かで話さないといけないし、事情を知っていてほっといていいのかと言われるとそういうわけでもない気がする。
「なぁ藤司?」
「?どした?」
「俺、今朝色々あったじゃん。」
そう言って話題を振ると、藤司の黙々と弁当の具材を口に運んでいた箸の動作がピタリと止まって、具材が落ちる。
「……その話題に自分で触れに行くあたり流石勇祐……メンタルすごいよな」
藤司の朝練が終わった後、ホームルームが始まる前に二人で便所に行って用を足しながら昨日、小早川さんに告白して振られたことを未来の話題を抜いて話している。
「ありがとさん。 それでさ、俺まだ諦めきれないのよ」
「だろうな」
俺の覚悟ある言葉を、適当に流しながら落ちた具材を箸で拾って口に放り込む。
「え? 驚かんの?」
「驚くかよ、お前の諦めの悪さは俺が1番知ってるんだ」
「んじゃ話早いや、今ヴィ……小早川さん一人だし俺と藤司と3人一緒にご飯食べね?」
そう提案すると、少しめんどくさそうに箸を突きつけてきた。
「あのなぁ、そこに何で俺を入れる?」
「そりゃ二人じゃ気まずいからに決まってるだろ? いいじゃんか。 昨日だって俺が鏡花との仲を取り持ってあげていわけだし!」
実際は約束を忘れてたんだけどな。
言ったら怒られそうだし……少しぐらい嘘ついてもバチは当たらんだろ。
藤司から感じる疑いの目が痛いが、愛想笑いで無視した。
「……仕方ねぇな」
「すまんね」
少し呆れた顔で、それでもいろいろな話を否定せずに聞いてくれて、ちゃんと応援してくれる藤司。
俺は親友からの許可を取ったということで、少し深呼吸をしてヴィリに声をかけた。
「小早川さん……今朝は悪かった。 その……よかったら昼飯一緒に食べないか?」
「……」
俺の言葉にコンビニのおにぎりを食べようとしていたヴィリの手が少し止まった。
できる限りの笑顔で話しかけているのだが、ヴィリの表情はピクリともしない。その空気は一瞬だったのだが、全てを知っていた藤司には耐えられなかった様だ、口をパクパクとしながら真っ青ではないか。
おい友よ!何で俺よりも先にこの空気に気圧されてる!
そんな金魚の様に口をパクパクさせている藤司と引き攣った俺を3度ぐらい見て、ヴィリは口を開いた。
「小早川じゃない、ヴィリ」
システリアからコードネームに関しては聞いてるけど学校位は普段呼びじゃいけないのかな?
今は一般的な日常を過ごす時間だ、SF関係を信じていないとか今更言うつもりなんて毛程もないが、藤司にどう説明すればいいのか難しすぎる。
小早川さんは本当は外国人でした!なんて嘘が通るわけがない、見た目ガッツリ黄色人種の黒髪、清楚、超日本人だもん。
そりゃ未来型兵器の姿になりゃいくらでも言いようがあるけど、だからって未来人の事を言ったら大騒ぎだし……
「うーん……」
クラスには同級生がごまんといる。
俺と小早川さんの昨日のことを知ってるから余計に微妙な空気が周囲を漂う。
少し考えていると、教室の空気に耐えられなくなった藤司が遂に泡を吹き始めた。多分頭がショートしている藤司には先程ヴィリが言った言葉は聞こえていないだろう。
俺は急いでヴィリに近付いて声を抑えながら質問をする。
「……一応公衆の面前でヴィリって言っていいものなの?」
「問題ない。未来の事やこの世界線についての大きな説明さえしなければ……多分。」
「多分って……」
「何か起こってからじゃ遅い。 だからヴィリって呼んで。」
「何かって……」
(現状未来の事やら世界線移動やらで、既に俺の身の回りに関しては何かは起こっていると思うのだが……)
ツッコミを心の中で押し殺した時、偶然ヴィリと目が合った。
今まで全くと言っていいほど表情を変えてこなかったヴィリが、瞳を潤ませるこちらに訴えかける。
「……」
「……」
少しの沈黙。
「はぁわかったよ。俺の負けだ。」
「うん」
俺はヴィリに、未来と世界線の話をしない代わりにどう説明すればいいか伺うとアンドロイドだと藤司と鏡花にだけは説明してもいいという、何とも意外な反応が帰ってきた。2人を指定してくるあたり、もしかして未来において藤司と鏡花はヴィリと何かしら関係があったとか……
少し疎外感を感じた、何故俺はこの世界しかいないのだろう……もし未来に……
そこまで考えて俺は彼女の境遇を思い出し、想像するのをやめた。
根負けしてヴィリの要件を飲むと俺の了承にヴィリは可愛らしく、口角を少しだけ上げて優しい声音で頷いた。
弱ったなぁ、こんな顔見せられたらたとえ振られていたとしても、まだ脈があるんじゃないかと勘違いしてしまうじゃないか、俺は赤らめた頬を隠すために振り返り、放心状態の藤司の頬を抓る。
「痛って! へ、何でお前頬赤らめてんの? ははぁ、もしかして恥ずかしくなっちゃったか?」
そう言って相変わらずな慰め方をしようとする藤司の頬を再度抓る。
「隣みろよ。」
クラスの騒めきがようやく藤司の耳にも入ったようだ。
先程の俺を揶揄っていた余裕のある声が一気にうわずって震え始める。
「こここ小早川さん?」
「よろしく」
「ゆ……勇祐ぇぇ良かったなぁ」
そう言って軽く拳を俺の肩に当ててきた。藤司は親しい奴に何か良い事があったら大袈裟なほど喜んでくれるが、流石にクラスじゃ出来ないから涙目で喜んでくれているんだろう。
「バカ泣くなよこんなことで」
呆れながら笑う俺たちのバカな友情を見せつけられて、ヴィリは栗の様に口を開けてパチパチと軽い拍手をしてくれた。
「改めて私はヴィリ、あなたの事はよく知ってる。」
「え? 藤司のことしってんの?」
「うん。 藤司は凄い(未来で)」
「それって先の話か?」
「うん」
そういえば全ての世界線において、俺だけがこの世界にしか存在していないだけで藤司や鏡花は色々な世界に存在するのだろう。そう思うとヴィリは未来のみんなのことを見てきたと言うことか、なんか面白いな。
「え?何の話してんの二人とも、てか、え? ヴィリ?え?」
そう言って頭にハテナをつけている親友、不憫だ。
「藤司、びっくりすると思うが真面目な話何だ聞いてくれ。」
そう切り出すと、藤司少し改まった反応で真摯に聞いてくれる姿勢をとってくれた。
「お、おう。 どした勇祐?」
「こちらの小早川さん……ヴィリはハーフなんだ。」
「!!」
「……へ?」
アンドロイドと説明してくれと言われたが、それは兵器と説明するのと変わらない。
俺はヴィリを兵器として見たくないし、友人達にも機械だからと一線引かれるような環境を作りたくない。この言い訳はあまりにも苦しいし、藤司と一緒にヴィリも驚いている。