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未来色少女  作者: 葵鴉 カイリ
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志摩青原と言う少女1

新たな登場人物です!



はて、この状況はどういうことだ?


俺には幼馴染はいれどこんな、黒髪、短髪元気っ子の超絶かわいい知人なんて……記憶にない!


もしや、この世界線の俺はこんな可愛い子と知り合いだったのか?


俺はその小さく華奢な体を舐め回すように見る。


一応誤解がないように補足しておくが、ただ舐め回すようにと言ってもそれは自分の記憶に該当する人物が存在するかを確かめる為であり、決して変な目で見てはいない。


なぜならそう!今の俺は言うなれば賢者タイム、好きな子に振られたことにより異性に対しての特別な感情が無へと帰している状態なのだ。


何が言いたいのかって?要するに今はほっといて下さい。


どれだけ見ても記憶に該当する子は存在しない……だからここはスルーが安定だな。


もし、この世界の俺が彼女と関わりがあったとしても、それは大したモノではないのだろう。


俺がこの世界線に魂だけ移動しているのはわかっているが、それでもこの世界の俺と言う人格の全てが失われたわけではないと思う。


周りと話していても違和感はあれどだいたい話は通じるし、なんとなくだが、この世界の記憶を受け継いでいる感じはする。


例えば鏡花が今日俺に誘ってきた都内の新型AIの発表会に、最初すんなりと納得できたのはそう言うことなのだろう。


じゃあ目の前の彼女に何か思い当たる節があるのかと言われると全く持って何の感情も湧かない。


多分、何かしら関わりがあるのならば俺の意志とは関係なく体がそれ相応の反応をするはずだし、それが現状言動に現れていないと言うことは、この世界の俺も彼女という存在を知らないということで間違いないだろう。


普段なら関わってあげてもいいけど、駄目、面倒臭い。


だから無視して目の前にある家に入ろう。


きっと人違いだ。


俺の反応を見て彼女も間違えたことに気がつくだろう。


人違いで向こうは恥ずかしいかもしれないが、今はそこまで気が回らないし、一旦これで問題はないはず。


俺は何も見なかった事にして、そのまま彼女を無視して横を通り抜けようとした瞬間、勢いよく首元の襟をグイッと引っ張られる。


「うぇ」


襟が喉仏が押さえつけ、嘔吐く。


「ちょっと! 何スルーしてるのよ!」


怒鳴る少女咽せる俺。


あ、今のなんか小説のタイトルにありそうなぐらい語呂がいいな。ってのはさておき、本当に何者なんだ?


「ケホケホ……いや。 そりゃ知らない子に声かけられたら関わらないだろ?」


「いやいや、こんな美少女に声かけられたら普通関わるだろうが!」


ほんと見た目通り元気いいな。


活発な子は俺のタイプではないが嫌いじゃない。


「んで、ほんと誰よ。 俺君知らない。」


「私はあなたを知ってるよ? 河原勇祐クン。」


不気味すぎる。俺の知らない人が俺のことを知っている恐怖、これがストーカー?


俺って容姿は別に良くない。むしろ悪い方だとすら思う、鼻は高くないし、顔はのっぺりの塩顔、肉付きはガリガリのガリで身長は……平均よりは高い185cmぐらいだったか?


魅力なんて大層なものは俺には何一つないってのに、本当、何で連続して面倒事が向こうからやってくるんだよ。


「何で俺を知ってるの?」


「そりゃあんたの彼女だからに決まってるでしょーが!」


彼女?え?彼女?


今朝俺は普通に幼馴染と登校していたのに彼女居たの?


待て待て待て、俺さっきヴィリに告白したんだけど!てことは俺は彼女持ちでヴィリに告白したってことになるじゃん!


 どんなクズだよ!


え?この世界線の俺ってそんなリアル充実してたの?死ねよ。あ、今生きてんの俺じゃん。


……ほんと、傷ついて憔悴してるなんて言っておいて無駄なこと考える余裕がある自分に心底呆れてしまう。


はは、少し笑える。


「ごめん。えーと君は確かぁ」


だから 誰!?心当たりないんだよ!


チラチラと俺は彼女の方を見る。


彼女も頬を膨らませてチラチラと見る。


何だこの空気は?


志摩青原(シマ アオハラ)貴方の彼女だよ?」


ニコリと両頬に人差し指を当てて無邪気に笑う。


あざと可愛い……だがやっぱり誰!?


「へぇっと? ごめんね。今日色々あって疲れてるんだよ。また今度でもいい?」


俺は愛想笑いをしてその場を凌ごうとしたが、やはり逃してはくれない。


「だーめ!」


ですよねぇ。そんなツッコミを心で入れながら再度志摩青原という女性と向き合う。


はてさて、これからどうするか……一刻も早く家で休みたいのに、それを阻止してくるこの不思議自称彼女。


一体何が目的なんだ?制服は……俺と同じ高校だよな?もし本当に彼女なら、今朝の時点で一緒に登校してもおかしくないのに、俺は幼馴染の鏡花と登校したし、何より同じ学校の人間なら今日校内の何処かで接触していてもおかしくないのにそんなことは一切なかった。


何より親友の藤司ですら俺が恋愛の話題を振った時、俺に彼女がいるなんて発言をしてなかったんだ。


結論から言って電波系としか思えない。


「えーっと、志摩さん? 俺に何の用があってここに? 申し訳ないけど俺に彼女がいた記憶はないし、当分は作る気もない。 もしアプローチかなんかならもう少し常識的な方法で頼む。」


俺は彼女にキッパリと思っていることを伝えると、志摩青原は少し固まった後に何かをボソリと呟いた。


「ふふ、大当たり♪」


?今何を言ったんだ?声が小さすぎてよく聞こえなかった。


「どうした?」


「なーんでも!勇祐クン♡」


小悪魔的に指先で、シメシメと口を隠しているが、広角が上がっているせいで少しだけ口元が見切れている。


そんな彼女の表情に俺は少し後退りする。完全に賢者タイムと同等の状態だと言うのに、目が合わせられないだと?

少し斜めに構えて、まるで新しいおもちゃでも見つけたような上目遣いをする志摩青原は小悪魔的だ。


その艶美な表情を醸し出す妖艶さは世の童貞をいちころにしてしまう程にあざとく可愛く、そして美しかった。


クソ、落ち着け落ち着け。


急いで後ろを向いて、目を瞑って深呼吸をしようとすると後ろに柔らかい感触がする。


心拍が一気に跳ね上がる。


動悸が止まらない、何なんだ?俺の反応を見て楽しんでいるのか?


脳と心臓、どちらが先にオーバーヒートするかという極限状態の俺に、志摩青原は耳元で甘く熱の籠った吐息混じりの声で囁く。


「かっわいい♡」


「やめろ!! 童貞だぞ!!!!」


「じゃあ卒業式する?」


「……!?」


何だその言葉?え?日本語……だよな?


知らない、そんな日本語知らない!


心臓よりも先に脳が逝ってしまい、理性が飛ぶと同時に少しだけ冷静になる。


この志摩青原は彼女、彼女なら!


彼女……何だよな?


彼女なのに卒業するなんてわざわざ言うか?


そんなことどうでもいい。これからの人生、今しかチャンスはないかもしれない。


脳内で自問自答を繰り返す。


自制心が壊れかけたそんな時、脳裏に2人少女が過った。


幼少期に誘拐された際に出会った少女と、今日放課後の教室で黄昏れるヴィリの姿、なんで2人の姿が思い浮かんだのかはわからないけど、おかげで答えが出た。


やっぱり駄目だよな。告白して振られた当日に別の女の子に言い寄られたからってすぐに鞍替えするとか……俺は誰でも良かった訳じゃない。


成り行きで告ったけどそれは付き合えたらいいなとか、そんな軽い覚悟の告白なんかじゃないかった。


彼女だけを大切にしたいから、彼女だけを見ていたいから告白したんだ。


どれだけ積極的に迫られても、俺は俺を許せなくなる様なことはできない。


しちゃいけないんだ。


震える手で、彼女を俺から引き剥がす。


「すまない。 俺はやっぱり君の事を知らない……君の気持ちを踏み躙るようで申し訳ないけど、俺はテキトーに女の子と付き合ったり、そういうことしたくない」


しっかりと目を見て伝えた。


すると、少女は満面の笑みで一歩下がってくるりと振り返る。


「そっか……」


少し寂しそうな声音、見ず知らずの彼女の言った言葉はとても淫らな言葉だったが、だがそれでも本人なりに勇気を出して言ったのだと思う。この状況で、はい。では、さようなら。と家に入れるほど俺は冷酷ではない。


頑張って家に入りたい気持ちを抑えて、一応謝る。


「すまない……」


「いいよ。 だって私、本当は彼女じゃないし……」


「……は?」


「ぷっ……あははははは」


「・・・・」


何だこの女?本当に何がしたいのか全く読めない。


いや、ただ一つわかることがある。


肩を震わせて笑っている彼女から読み取れる感情。


それは、今現在俺は遊ばれていると言うことだ。


(クソが!意味わかんねぇ、童貞は純粋なんだよ!)


堪忍袋の緒が切れる。


こうなったら向こうの理由なんてどうだっていいい!


例え罰ゲームだろうと、いじめであろうと何だろうとだ!


なんか言ってやらないと気が済まない。


そう思い、彼女に迫ると言葉が喉でつっかえた。


彼女は笑顔だった。


笑顔だったのに瞳からは大粒の涙が無数に頬を伝っていたのだ。


面白いからじゃない。


楽しいからじゃない。


その笑顔は、目から溢れる感情を必死に隠す為にただ背伸びをしている子供のような切ない笑顔だった。


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