初めての街
リーシャの自己紹介を聞いた春樹と百合は驚いていた。そんな中、春樹の心にいるソリュウはじっくり彼女を観察している。
(娘か。)
(ソリュウさん。ここで攻撃とかやめてくださいよ。)
(安心しろ。力が完全に戻ってない今仕掛けはしない。)
(そう言う話じゃない。)
春樹が心の中でツッコミを入れている。百合は勇者のことを知って驚き目をパチパチさせている。
「ところでここで何してたの?」
すると、レイに質問され返答に困ってしまった。それもそのはず、二人は魔族と魔王で魔界から来たなんて勇者の娘に言えるわけないからだ。そこにソリュウが春樹にアドバイスした。
「・・・じ、実はデリングという街から来た旅人なんですけど道中魔物に襲われて逃げてきたんです。」
「あ~、そうなの!?デリングって結構遠いところから来たのね。」
「デリングからここまできたって途中魔物が蔓延る魔族領を通ってきたことになるよね?よくここまでこれたわね。」
「う、うん。運が良かったんです。」
春樹が汗を流しながらソリュウのアドバイス通りに話す。百合も春樹に任せてニコニコしながら黙って見ている。すると、シノノメが二人の周りを回りながらクンクン匂いを嗅いでいた。
「ん~、魔族のオーラを感じるけど・・・」
(まずい。この女、探知持ちか。)
(何それ?)
(レンジャースキルの1つで五感のどれかで相手の状態や位置を知るスキルだ。)
(それ、本当にまずくない?)
二人がシノノメを警戒しているとシュリがシノノメの頭を撫でて抑えた。
「二人とも魔物と戦ってたんだから魔族の匂いぐらい着いているさ。」
「う~、そうなのかなぁ?」
「とにかく、荷物がないなら近くの街に行かないか?いいだろ、リーダー?」
「もちろん!」
リーシャが笑顔で了承したので二人はホッとしてリーシャ達の案内で近くの街に向かった。
しばらく歩いていると異世界に来たと実感するような街が見えてきた。大きな川の隣にあり高い壁に囲まれた石造りの建物が並んでいた。
「ようこそ。シャーナの街へ!」
春樹達はリーシャに連れられて異世界初の街シャーナへと赴くのだった。