魔王がいれば勇者もいる
魔族領域と呼ばれる場所から抜け出して数日、ソリュウのおかげでこの世界のことや簡単な知識は分かった。
が、問題が発生した。お金がない。春樹も百合も異世界のお金なんて持っておらずソリュウも春樹の体を乗っ取っる時に元の体ごとお金が溶けてしまっていた。
「・・・ヤバい。何日も何も食べてない。」
(魔族は何日も断食しても大丈夫な体だが人間の体はこんな時不便だ。)
(なんとかならないの?)
(一応、魔物を退治した時の報酬とかがあるが冒険者にならないと意味がない。)
(冒険者ってどうしたらなれるの?)
(街にあるギルドで申請しないとならないが俺達の場合、出身が魔族だからなれるわけがない。)
二人はどうしようかと悩みながら歩いていると目の前に狼みたいな魔物が数頭現れた。
(仕方ない。あれを食って飢えをしのぐぞ。)
「嫌だー!あれを食って飢えをしのぐのは嫌だ~!」
「それより私って強いの?」
「物凄く強い。そもそも新しい魔王様として転生したから俺よりも強い。」
「嘘~。どうやって戦えばいいの?」
「とにかく、殴ればあれぐらいは倒せる。」
「ねぇ、今どっち?」
「ソリュウだ。」
「めんどくさい。」
主導権を取っていたソリュウに言われて襲ってきた魔物を殴ると一撃で粉砕した。
「・・・ヤバすぎない?」
「僕より強いんだ。」
(来るぞ、応戦しろ。)
「え!?」
百合に見とれていると春樹の方にも魔物が襲ってきた。春樹はとっさに持っていた剣で真っ二つにすると魔物は逃げて行った。
「・・・」
(どうした?)
(命を奪うのってその・・・)
(平和な世界の人間らしいな。仕方ない。お前が慣れるまで戦闘は俺がしてやる。)
初めて命を奪ったことに罪悪感を感じていた春樹を心配したソリュウが提案した。春樹がそれを了承しようとした瞬間、逃げていた魔物のうち一頭が背後から襲ってきた。春樹は主導権をソリュウに渡そうとするが遅い。すると、一人の少女が現れ魔物を一瞬で倒した。
「あ、ありがとうございます。」
「あなた達、大丈夫?」
少女は甲冑に全身を覆う黒いタイツと変わった格好だった。春樹と百合がお礼を言っていると仲間と思われる少女達がやってきた。
「リーシャ!いきなり飛び出してどうしたの!?」
「レイ!この人達がグルフに襲われていたの。」
「相変わらずね。」
仲間がやってくると二人に対して自己紹介を行った。
「初めまして。私はレイ・エリザベレナ。リーシャと一緒に旅をしている魔法剣士よ。」
レイはリーシャと同じ剣を持っていて
「わ、私はマギナって言います。リーシャさんのパーティで魔導師をしています。」
マギナはいかにも魔法使いみたいなローブにハット、杖を持っている眼鏡をかけていた。
「僕がシノノメ!主に諜報やサポート役!」
シノノメは頭に狐のお面を被り忍者みたいな格好をしていた。
「あたいがシュリだ。このパーティーでタンク、前衛で盾の役割をしてる。」
シュリは短パンにチューブトップとラフな格好だ。
「そして、私がリーダーのリーシャ・シャインシェリアよ。」
「よろしくお願いします。」
春樹はリーシャと握手する。すると、ソリュウが春樹に声をかける。
(シャインシェリア。魔王ヴァルジオン様を倒した勇者シャボット・シャインシェリアと同じだ。)
(!)
ソリュウに言われ春樹が驚いている。そこにシノノメが説明を加える。
「リーシャは魔王を倒した勇者シャボット・シャインシェリアの娘だよ!」
「!」
リーシャのことを知った瞬間、二人は驚いてしまった。