今度こそ
大広間に出た春樹は驚いていた。奥の玉座に死んだはずの幼なじみの花崎百合さんが座っていたのだ。髪の色が緑以外は全て花崎さんと同じで彼女は虚ろな目で下を向いていた。
(花崎さん!)
(魔王様。)
(え?花崎さんが魔王様!?)
突然のことに春樹は戸惑っていた。それでも体は花崎に向かって歩いている。
「おや、随分と貧相な体で帰って来ましたね。」
最初に語りかけたのは背中にカラスの翼が生えている執事風の男だった。春樹の体は彼を無視して花崎に向かって歩いている。
すると、人間と獣が合わさったような魔族が前に出た。
「ソリュウ、また懲りずに来たか。」
「当たり前だ。退け、ヴォルスター。」
ヴォルスターと呼ばれた魔族はニヤリとすると、花崎に切りかかってきた。春樹はなんとか防御するがぶっ飛ばされた。
「元の体ならいざ知らず、その人間の体じゃ満足な動きは無理だろ?」
ヴォルスターはニヤニヤしながら春樹に近づいてくる。春樹は立ち上がろうとするが上手く動かない。それもそのはず、元々は普通の少年であり喧嘩すらしたことない少年がいきなり闘えるわけがなかった。それにソリュウは体を乗っ取ってからまだ時間が経っておらず彼の中にはソリュウと春樹の二人の魂が入っている状態だった。
(動けこの体。)
(待って!)
(!)
動こうとした瞬間、春樹がソリュウと会話することが出来たのだ。
(まだ残ってたのか。)
(さっき魔王様って言ってた子って僕の知り合いに似ているんだけど・・・)
(話は後だ。邪魔するな。)
(僕も何かしたい!花崎さんを守りたい!)
春樹がそう強く思った瞬間、体が軽快に動きヴォルスターの爪攻撃をかわしたのだ。
「何!」
下がったヴォルスターは警戒し風の刃で攻撃したが春樹は持っていた2本の剣で全て弾いた。
(なんだこれは?)
(僕はあの時花崎さんを守れなかった。けど今度は絶対守る!)
(・・・利害の一致か。仕方ない、協力しよう。)
二人の魂の思いが重なった瞬間、春樹の体は剣を構えていた。
((今度こそ!))