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1 夢だと信じたい
「…貴女、本当に使えない人間なのね。それなら、要らないわ。処分よ処分。」
甲高く耳障りのする声を出す女性。
「止めとけ。一応は、異世界の民な訳だ。あいつらの食用にさせるのは勿体無い。物好きな貴族に売れば、少しは役に立つだろうよ。イヒヒ。」
気持ちの悪い笑い方をする男性。
「兄さん、さすがです。こんな人間にも温情を与えるなんて。本当に、こんなクズな人なんかに。」
親の仇を見るように睨んでくる青年。
その三人の後ろには銀色の甲冑を着た者が何十人も控えている。
手には剣を持ち、私を切り刻みたい衝動を必死に抑えているように小刻みに震えていた。
彼らと私には、大きな違いがある。
それは外見で、すぐに分かることだ。
私は自分の耳を触りながら、彼らを見た。
動物の耳と尻尾を、彼らは持っていたのだ。