魔王様はプリ〇ュアが観たい
「ワレハ プリ〇ュア……」
深淵の魔王の間にて独りテレビに齧り付く宵闇の衣を纏いし魔王。テレビには三人の可愛らしいプリ〇ュアが映し出されていた―――
暗黒の魔霧が立ち込める魔界の奥深く、勇者一行は魔王城へと足を向けていた。
「これで四度目となる魔王城遠征だ。今回で終わらせるぞ!」
「おおー!」
各々の武器を掲げる勇者一行。時刻は朝の八時半。朝日の清々しさも相まって、気分はとても晴れやかである。
「伝令!! またしても勇者一行が現れました!!!!」
一方、魔王城では勇者一行の到来を告げる伝令が慌ただしく入り乱れ、魔王城は勇者を迎え撃つべく魔物達がスタンバイを始めた。
「なんだってこの時間に来るんだ!?」
「知りませんよ!!」
魔王の側近である【サジタリウス】は酷く困惑し、勇者一行を如何に追い出すかに全力を注いでいた。
「門番の何度でも復活するアイツはどうした!?」
「ダメです。今回は二ターンでやられました」
「まだ開けられてない時間稼ぎの宝箱は!?」
「今回は見向きもされないですね」
「ラスボス前の雑魚ラッシュ行けーーーー!!!!」
「はいーーーー!!!!」
ワラワラと控え室から押し寄せる雑魚場達。しかし幾ら数で押しても雑魚は雑魚。物の見事に瞬殺され、ついに魔王の間の扉が軋みと共に開け放たれた―――!!
「魔王覚悟!!」
勇者が勢い良く魔王の間へと突入すると、そこにはテレビに齧り付く魔王が居た。
「魔王め! 今日で全てを終わらせる!! 皆行くぞ!!」
「オー!!」
気合を入れ剣を振りかざす勇者。しかし魔王は振り向きもせず、プリ〇ュアに熱を上げている。
「お、お待ち下され!!」
「あ?」
つんのめりながらも慌てて体勢を立て直し、サジタリウスが勇者の前へと立ちはだかった。
「ま、魔王様は今お楽しみの最中で御座います! 後三十分はお待ち下され!!」
「…………」
勇者はサジタリウスを攻撃!
──ザシュ!
勇者の攻撃!
サジタリウスに157のダメージ!
サジタリウスをやっつけた!
「ま、魔王様…………グフッ」
サジタリウスは大の字に倒れ込み息絶える。しかし魔王は見向きもしない。
勇者は業を煮やし、テレビに向かい剣を向けた。
──ゴガァ!!
そして勢い良くテレビを破壊した!
「…………」
すると魔王は静かに立ち上がり、勇者一行を静かに見つめた。魔王の手には何故かプリ〇ュアの変身ステッキが握られている……。
「マダ…………」
「お、ようやく戦う気になったか魔王!!」
「マダ プリ〇ュア ガ ヘンシンシテタ デショーガ!!!!」
「!?!?!?」
魔王は爆発的に闘志を溢れさせ、プリ〇ュア視聴を妨害された怒りを勇者へと向けた!!
──ブンッ!
変身ステッキを力強く握り締め叩き付けた魔王!
魔王の攻撃!
魔法使いに257のダメージ!
魔法使いは息絶えた……
盛大に吹き飛ばされ壁に激突し死んだ魔法使い。変身ステッキを叩き付けられた頭は潰れてペチャンコになっており、今だけ100頭身になった。
「僧侶! 魔法使いを蘇生してくれ!」
「は、はい!!」
蘇生呪文を詠唱する僧侶。しかし魔王の攻撃は無慈悲にも僧侶へと向けられた。
「キュア…………アタック!!!!」
──グチャア!!
魔王の攻撃!
僧侶に322のダメージ!
僧侶は息絶えた……
「ひ、ひぃぃぃぃ!!!!」
無残にも飛び散った僧侶を見て、戦士が思わず逃げ出す。しかし魔王に回り込まれ同じく頭を潰された……。
「プリ〇ュア……プリ〇ュアァァ…………」
独り残された勇者は―――
「俺だってプリ〇ュア観てぇよ!!!!」
何故か泣いていた。
「皆朝早い方が良いって言うからさ!! 仕方なく録画してきたのに!!!! 本当は実況スレに張り付いて皆とプリ〇ュア談義するのが楽しみだったのにぃぃぃぃ!!!!」
カランと剣を落とし、勇者はその場に跪いた。
「テレビ……モウイチダイ アル」
魔王は押し入れの奥に仕舞ってあった古いテレビを取り出し線を繋いだ。電源を入れプリ〇ュアが映し出されると、二人は満面の笑みで肩を並べプリ〇ュアを観た。
「ゴメンな。テレビ壊しちゃって」
「ヨイ……ワレモ オマエ ノ ナカマ コロシタ」
「ああ、別に良いよ。ラスダン前の泉でタダで復活出来るからさ!」
魔物の蘇生魔法で蘇ったサジタリウスはその様子を観てハンカチを濡らしたと言う……………………
読んで頂きましてありがとうございました!!
他にも山ほどアホ臭い短編がありますので、お時間が在るときにでも宜しくお願い致します!!
(*´д`*)