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実家に彼の訃報が届いたのは街を出てすぐだった。病死だったらしいが、詳しくはわからない。僕があの街で彼との数少ない思い出に閉じ込められないように、逃げ場を作った頃を見計らったかのようだった。葬儀は実家の近く。僕が知らなかっただけで彼の片鱗はまだあの街にあったということだ。僕は行けなかった。何か夢のようにその知らせを聞いて、薄れかけていたあの雨の日に背を向けて、賑やかな新しい地に身を投じた。
強いね。
僕が壊れたおもちゃのように繰り返していた時、彼はあの雨のような目で、どんな気持ちだったのだろう。怒っていたのか、困惑していたのか、それとも泣きたかったのか。
もう10年ほど経った今考えると、あの言葉は間違っていたのかもしれないと思う。誰よりも弱くて、少なくとも彼自身はそう思っていて、人に話す勇気もなくて、苦しんでいたかもしれない。あの雨の中で涙を流す僕の肩を抱きしめて、彼が耳元で囁いたような気がしたのだ。ありがとう、と…