表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの雨の記憶  作者: 梨花
4/6

3

彼はそれから2年ほど経った時、急に学校から消えてしまった。町からも、僕らの日常からも。小さな町では、噂は腐るほど回った。夜逃げだの、親が病気だっただの、いや子供が不治の病だっただの、親が手を挙げていただの。 どれが本当かなんて知らなかったけれど、昨日まで確かに側にいた人が、こんなにも簡単にいなくなるということを僕は人生で初めて思い知った。

彼の住んでいた家の場所を、不自然なぐらい誰も知らなかった。大人は皆口を噤んでいた。必死に見当をつけて向かった場所はまだ土も柔らかい空き地になっていた。


何人が僕と同じような気持ちでいたかはわからない。賑やかだった教室が嘘のように大きな存在をなくしても、また喧騒が現れるのに時間はかからなかった。

まるで彼自身がいるときは皆の関心を集め、晴れたら忘れ去られる雨だったようだった。彼が消えた街は何も変わることなく、僕の日常もなんら変わらなかった。中学を卒業して、高校に入り、大学はこの小さい町から遠くを選んだ。忙しい日々の中で、僕の中でのあの雨の日もいつしか梅雨明けの水溜りのように消えていってしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ