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僕がどもりながらそう呟く間、また彼は僕の知らない大人びた顔をしていた。その顔が今まで以上に揺らいで見えた。
ふと彼の手が少し乱暴に僕の頬を撫でた。
なんでお前が泣いてるんや。
僕は一瞬意味がわからかったけれど、その時初めて頰が少し痒い事に気がついた。
僕は泣いていた。なぜか全然わからない。けれど、彼の目を見ているとぎゅっと心臓が握られたみたいに痛くなったのだ。
強いね。
僕は泣きながら言った。強いね、君は。本当に、強いんだね。
彼は僕の頰をぬぐい続けるだけで、何も言わなかった。
雨が降ってきて、小さな木の下にいた僕らを好き放題濡らしても、僕達は何も感じずに泣いていた。いや、彼が泣いていたかは知らない。彼の表情は僕のぐちゃぐちゃの顔とは比べ物にならないぐらい綺麗だったし、雨がその顔にも容赦なく降りかかっていたから。
それでも、泣いていたと思う。僕らは、2人で、泣いていたと思う。