表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの雨の記憶  作者: 梨花
1/6

眠り

今年は雨が多かった。


実家に戻ってきた次の日は、狙ったように彼の三回忌だった。僕は昔のよしみで母に回ってくるその知らせを聞いたが、今更参りに行こうという気は起こらず、ただこの家で一番風の通る客間に来て窓を開け放して横たわった。

良くも悪くも独特の匂いが鼻をつく。この街の匂いだ。離れていれば忘れた気がするけれど、戻ってくれば昨日のように記憶を掘り起こしてしまう。息苦しさを感じていた小さな体、飽きるほど通った街並み、陽炎のようなあの日の情景も。開け放した窓から耳をかき回す様な蝉の声が聞こえている。日差しは容赦無く肌を焼く。もう9月だというのに、秋の気配はない。僕は額に浮かんだ汗を拭った。

滴ろうとする水は痒い。手近を見渡すが、汗を拭えそうなものは見当たらなかった。

僕は畳に寝転んでいる。

身体中を蝕む怠さに起き上がる気力はなく、諦めて再び目を閉じる。聴覚を弄ばれながら、そのままうとうとと微睡んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ