ある小さな星の物語
とある小さな星に私は生まれた。
数多く存在し、繋がれていく命の1つ。
もちろんこの星にも統治者は存在するが、見た事は無い。
だが、私達を大事にしてくれている事は分かる。
その慈愛を身に感じるのだ。
私の背が伸びてくると、隣に住むおじさんからこの星の歴史を聞かされた。
そのおじさんも星の全てを見てきた訳では無い。
命が生まれ、死にゆく中で語り継がれてきたそうだ。
元々星が生まれた時の命の数は今に比べて少なかったらしい。
統治者も星と共に生まれたが故に幼く、母なる神によって守られてきた。
だからといって平穏だった訳ではない。ある時は伝染病が蔓延し、ある時は見たこともない外敵の侵攻を受けた。
しかし母なる神は神の雫によって病を癒し、化け物のごとき侵略者すらも駆逐された。
年月が過ぎ、母なる神から統治者が全てを受け継ぐと、星は荒れ始める。
水は汚れ、大地には不純物が積もる様になった。
統治者は星の命に興味が無いのだと、皆が悲観したそうだ。
それでも豊穣な大地に根付く命は増え続けた。
大地が荒れても生命力のみなぎる星に、栄華はいつまでも続くと、そう信じていた。
異変が起こり始めたのは更に年月が過ぎた時だ。
星はゆっくりと、だが確実に蝕まれていた。
生まれてくる命の数はそう変わらない。
だが見るからに虚弱な者が生まれ始めた。
ひ弱な身体故に寿命を待たずに死んでしまう。
周りを見れば、命の数が減って来ているのは明らかだった。
その頃から統治者はこの星に対して真摯になったそうだ。
命を強くしようとして鍛え、栄養を振る舞った。病に侵されぬ様に浄化作業も頻繁行われる。
豊穣な大地が蘇る様に、勉強し、改革を行っていったのだ。母なる神と同じ様に、神の雫を与えてくれたりもしたそうだ。
今までの事を恥じる様に、必死に私達の身を心配してくれた。
だが星の衰えは止まらなかった。
とうとう、住むことが出来ない大地が現れたのだ。
その場所に命が生まれても、儚く消えていってしまう。
いつしか誰も生まれない土地になったのだ。
統治者は悩み、禁断の領域に手を出してしまう。
人工生命体。
大量の財を投入する事で確かに命は増えた。人工生命体は誰も住めなかった土地にさえ生きることが出来たのだ。
だがそれは儚い仮初めのもの。
星の財政が圧迫されると人工生命体計画は中止となる。
最後の人工生命体が死に絶えると、元の何もない土地になってしまった。
ここまでが語られた歴史だ。
語ったおじさんは役目を果たして、永い眠りについた。
暗い過去の筈なのに満足そうだった。
種の減少は悲しい事だが、統治者の慈愛を近くに感じていたからだろう。
それからの環境も厳しいものだった。
仲間の命はまた1つ、また1つと失われて行く。
そう遠くない将来、命が住むことが許されない死の星となるだろう。
ある日、統治者から星に住む全ての命に向けての演説があった。
星を立て直すことはもう不可能に近い。
これ以上無理をさせる事は星の寿命を縮ませる事。
1秒でも長く私達と一緒にいたいと。
統治者の命が尽きる時には、星に命は存在していないかもしれない。
だがずっと寄り添って生きて行く。
今まで苦労をかけた。
ありがとう。
私はこの日の事を忘れないだろう。
私は足腰が弱り、生気が失われ体が白みを帯びている。
寿命も幾ばくも無いだろう。
それでも為さねば成らぬことがある。数少ない生まれた命に歴史を語ろう。
いかに愛されていたかを。
そして意識が遠くなる中、温もりを感じる。
統治者の声が聞こえた気がする。
(かみよありがとう。)そう言われた気がした。
充足感に包まれ、そっとその役目を終えると、大空に舞い落ちるのだった。
共感してしまった貴方に言いたい。
星の命はいつでも貴方に寄り添っていると。
これって何のジャンルなんでしょう?




