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1-9 学校が……

 翌朝、少し拗ねた父親と朝食を囲む破目になったのだが、昨日暴れた際にまた自分の妻から再度後頭部にチョップをいただき、お隣の奥さんからも頭頂部にチョップを食らったので大人しくはなったのだが。あのコンボ、いつもおっさんが黙るまで続くからな。


「結局、果帆はどこへ連れていかれたんだ。なんだったら今日会社を休んで迎えにいってもいいんだが」


「まだ言ってるわね。学校でもよく知らされていないようよ。政府の方からうちへ係官がやってきて説明してくれるそうです。それが明日になるか、明後日になるか」


 母親の説明に僕は少し驚いた。そいつは初耳だった。ちゃんと早々にケアには来るのか。


「へ、そんな話があったの?」

「ええ、そうなんだけど、何しろ通常の防疫なんかの運用外の出来事だそうで、お役所も相当バタバタしているらしいわよ」


「あんな事に慣れてたらおかしいわい。どっち道、今回の事態を全て我が家で何とかしろと言われても逆に困るんだが。出てくるのがゴブリンだけとは限らないんだし」


『囚われのお姫様』を助けにドラゴンとか出てきたらどうするんだ。迷宮魔物って、普通はダンジョンに従うものだよね。


 もし、果帆が人間迷宮として魔物とかを完全にコントロールできれば隔離から出られるかも。ウイルス自体も迷宮に従う者として扱えるのかもしれないし。


 自分で言っていて、何を言いたいのかよくわからない。そうさ、僕だってまだ混乱しているんだから。


「そうは言ってもな、我が家の姫君が攫われたままなのだぞ」


「わかっているよ、僕だって果帆の事は可愛いんだからね。今日また先生に話を聞いてくるつもりさ。会いに行けるようなら会いたいし。状況がまったくわからないから本人の話も聞きたい。いきなり先生から隔離の話をされて、それっきり果帆とは会えていないんだからな」


「そうか、頼んだぞ」

 父親は難しい顔をしていたが、どうせ果帆に会いにいくための休みを取る算段をつけているのに違いない。


 それに行ったら連れて帰るとか言って暴れちゃいそうだし。最初の時はこの人を絶対に置いていこうと心に決めた。面倒を起こして、他の家族も後々まで面会できなくなる恐れがある。


 だがその時、玄関の開く音がして光一が呼ぶ声がする。あののんびり屋の光一が、こんな時間にだと。マジか!


「おーい、真央。もう学校行くぞー」

「おう、ちょっと待ってくれ」

 僕は残りの御飯をかき込んでから御茶を慌てて飲み干して、用意してあった背嚢式のバッグを手に取った。


「いってきます」

「はい、いってらっしゃい」


「果帆の事、頼んだぞー、真央」

 もう糞親父め、そればっかりだな。あんたもさっさと会社にいってきなさい。


「今日はまた早いな、空からゲームソフトの雨が降るんじゃねえ?」

「うるさい、今日は学校で松村ちゃんと果帆ちゃんの話をしようと思ってたんだよ。どうにも気になってなあ」


 確かに、光一も昨日はゴブリンと白兵戦だったんだし、肝心の奪還したお姫様ときたら日本政府に隔離されちまっているんだ。そりゃあ家族でなくても落ち着かないわ。あいつから見ても妹みたいなもんなんだしな。


「ああ、僕もそう思ってね。お父さんが煩い事、煩い事」

「まあ、あのおじさんの事だから仕方が無いよ」


「これがただの行方不明とかいうんだったら、会社の仕事は放り出して昨日の昼間から飛び出していくんだろうがなあ」


 小さい頃から、果帆がちょっとでも傷を作ったりすると、ぎゃあぎゃあ煩かったのだ。しまいにお母さん達から後頭部チョップを食らうので、僕達には恒例のいい見世物だった。


 そんな感じの会話をしていると、もう学校についてしまった。僕達にとっては家から近いのが何よりの売りなんだからな。


 教室に行くと、誰もいなかった。部活の奴らは直接部室に行っているんだろう。


「お前は朝連しなくていいのか? 夏の大会があるんだろ」


「それどころじゃないよ。ちょっと部活は休むとキャプテンには言ってある。果帆ちゃんの事が気になって部活どころじゃない」

「そうか」


 とりあえず、職員室に行ってみたが会議中で中に入れてもらえなかった。松村先生がやってきて教室に戻るように指示されてしまった。


「話なら後で聞くわ。今、学校側でも色々協議しているところだから。ね?」

「わかりました」


 さすがに家族といえども教員同士の話には混ぜてもらえないようだった。だが、松村先生はやや疲れた顔で笑顔を作り僕達を嗜めた。


 この騒ぎの中で担任が抜けているのはきついものがある。一つだけ救いは、もうじき夏休みで今は期末テストも終了したタイミングだった事だ。


 他に生徒もいない廊下を歩きながら、僕と光一はどうしようもないので埒の明かないような話をしていただけだった。


「なあ、果帆ちゃんが面会できるようなら行くのか?」


「そうだなあ。親父が暴れちゃいそうだから、お母さんも置いていって、お父さんの見張り役かな。普通はこういう時に親が行くもんなんだが」


「ああ、それがいいかもな。しかし、果帆ちゃんは一体どこにつれていかれちまったんだ」

「うーん、東京都内なのかなあ」


 僕達がいるのは愛知県だ。東京なら新幹線ですぐなんだが、はたしてどこへ連れていかれたものやら。万が一の危険な場合を考えて離島で隔離されているとかの可能性も考えられる。


 教室で待っていると、まだ時間は早いが他の生徒もちらほらと登校してきている。まだ8時前だ、いつもなら部活の連中以外はいない時間だ。だが僕ら同様に早々と来ていた奴がいた。


「おはよう、早坂」

「お早う、おやおや海堂先生、今日はまた大変お早いお着きで」


 いつもは、俺達と一緒にもう40分以上は遅い。剣道部はあまり朝連はやっていない部だしな。


「皮肉るなよ。今日は特別さ」

「そうね、私もそう思ってさあ。先生方も朝からまた会議みたいよ」


「ああ、見てきたところさ。まあ仕方ないよ」

「この話、一体どうなっちゃうのかしらね」

「そんな事、俺が知るもんか」


 些か投げやりな光一の態度に眉を顰めた早坂だったが、そういう横顔も彼女の美少女ぶりを際立たせた。こんな時だけど、やはり男の子としては気になるもんだ。


「状況だけでもわかれば落ち着くんだけどな」

 それから何気ない会話をしていると、次々とやってきたクラスの他の連中も混ざってきた。


「なあ、今日学校を休んでいる奴らもいるぜ。昨日あんな酷い事になったから安全が確認されるまで親が休ませるとかいう話らしい。電話でボヤいていたぜ」


「ああ、もうすぐ夏休みだしな。無理も無いさ。また機関銃の雨が降ってもなんだし」


 休んだ分はきっと夏休み中に補習だからな。こっちは身内が被害に遭っているんだから、それどころじゃない。


 そして、やがて松村先生がやってきて、まるで神社でやるように手を叩き生徒の注目を集めた。


「はい注目。みんな、よく聞いてね」

 美人女教師の美しい顔に皆注視したが、その口からはこんな言葉が発せられた。


「みんな! 今日はせっかく来てくれたところ悪いんだけど、夏休みには少し早いのですが本校は本日から休校となる事が決定いたしました。科学文部省からの指示です」


 みんな一瞬キョトンとした表情だったが、誰とも無く似たような反応が広がっていった。


「「「えーっ!」」」

 うわあ、とうとう学校閉鎖だー。インフルエンザかよっ!


ダンジョンクライシス日本

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