旅立ちの歌
それは晴れた日だった。眩しく暑い、別れとは程遠い真上の太陽があった。
「見送りなんていらなかったのに」
「私、一応恋人なんだよ?これから長いお別れなんだから、見送らないわけないでしょ」
彼女はそう笑顔で言った。なんの湿り気もない。太陽と同じだ。
俺はもうすぐ旅立つ。この小さな島から。同じ月の下歩いた道、その手を握り永遠を誓ったあの日。君との思い出の全てが星のように輝く。
「そろそろかな」
「うん、向こうで勉強して、少し遊んで、観光もして、また勉強して、たまには私のことも思い出してね」
その言葉にたまらなくなり、彼女の力んだ肩を抱き寄せた。共に流れる涙が寂しくも暖かかった。
「これが夢なら、この瞬間が覚めなきゃいいのに」
震えた声で彼女が言った。
「大丈夫だ、側にいる。ずっと側に。俺の歌は君にだけ届けばいい」
繋がった彼女との解き、彼は一本のギターを手に旅立って行った。