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神社の小箱  作者: ほね
2/3

お手玉

次になまりが神社を訪れたのは、年明けだった。

公民館で行われる地域の小正月行事で使う道具を

持ってきてほしいと頼まれたのだった。

母親と二人で神社の倉庫に向かった。


母親が神社の倉庫で飾りを探している間、

外で待っていた。

(寒い...。ここに道具があるならこの神社でやればいいのに...。)


ふと、例の小箱のことを思い出して、見に行ってみた。


蓋が少し空いている。

前と同じ半紙と赤いお手玉が入っていた。

片手で投げてみると、今時珍しい小豆入りのものだった。


(また、子供のいたずらかな?)

お手玉をいじりながら考えた。

でも、なんのためにしているんだろう?


そうこういううちに、飾りが見つかったらしく母親から声がかかった。


(今日は代わりに渡せるものないからねっと。)

お手玉を小箱に戻して、勢いよく賽銭箱前の新雪に足を突っ込んだ。


除雪車が端に寄せた雪のせいで、狭い歩道を前後に一列に並ばなければならなかった。

公民館に向かいながら、母親に聞いた。

「公民館狭いなら、神社でやってもいいんじゃない?」

「小正月のこと?」

ちょっとだけ間があった。

「昔は、神社でやってたんだけどちょっとね。」

母がちょっとねというときは言いたくない時だ。

何か言ったような気がするけれど、

なんとなく気まずくなって話はそれでやめてしまった。

昨晩降った雪が音を吸って、何も聞こえなかった。


結局、公民館につくとミズキ団子なんかを作るのに忙しくなって、

母に聞きそびれてしまった。


行事が終わると、地区の子供たちは家に帰るように言われた。

神社の倉庫に飾りを返すか聞いたが、

神社の倉庫に飾りを返す作業は大人たちだけでやるということで、

なぜか、母と一緒に家に返されてしまった。


----(ここまで)

(菱餅かぁ...)

あれから神社が少し気になるようになって、

何回か小箱を覗いている。


今回木箱の紙にお願いされたのは菱餅だった。


幸い菱餅なら家にある。

なまりは菱餅の味が好きになれなかった。

どうせ苦手なのならと、こっそり小箱にいれておくことにした。

ビニール袋に入れて、外へ出た。


神社に着くころには、シャーベット状の雪で足元は濡れていた。


いつも通り、賽銭箱の脇の小箱を探したが、見つからない。

手足をついて、賽銭箱の影なんかもくまなく見てみるけど、

小箱はなかった。


考えてみれば、小箱には誰かが物を入れているのだ。

小箱を持って帰っているのかもしれない。

(菱餅どうしようか。)


「あれ、なまりちゃん。何探してるの?」

声をかけられた。

振り返ると近所のお姉さんがいた。

名前が思い出せない。

7歳年上で、昔はよく遊んでもらった気がするんだけれど。


「ええと。落とし物的な。」

我ながら苦しい回答だ。


「そうなの。何探してるの?」

「えー、いえ、もう見つかったので大丈夫です。」

こういう対応が本当に苦手だ。


それから、当たり障りのない話を少しした。

「なまりちゃん、最近この神社結構来てるよね。たまに見かけるよ。」

見られていたのか。

「たまに、来るんです。来るんですか?ここ」

「あー、えっと覚えてないよね。」

少しだけなまりから目をそらした。


参拝した後、お姉さんは帰っていった。


さあ、帰ろうかと賽銭箱の横に移動しておいた菱餅に手を伸ばそうとして、

何かが転がる音がした。

手が何かにぶつかったようだ。

転がっていたのは、いつもの小箱だった。


(あれ、さっきまでなかったよね?)

首をかしげながら、小箱に菱餅を入れた。

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