それからの話をしてみましょうか。 ― キリト ―
お久しぶりです…!かなり久々で、キリトのキャラが若干違っているかもしれませんが、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
(本編のキリトSideの前後編からの続きになります。)
とまあ、一時的に避難させて貰うつもりだったのだけど。あ、今魔王城にお邪魔しています。
『えーと? オルト魔王なの? へー、気づかなかった。それで俺が好き…って事でいいの、か?』
正直突然の事で迷った。ぐるぐると道に迷うでもなく人生の岐路に迷うでもなく…いや、ある意味人生の岐路、かもしれない。
何しろ俺の予定では、この旅を終えて少ししたら。可愛い嫁さんを貰うつもりだったからな。
それが今、俺が可愛い(?)嫁さんになるのか、やっぱり予定通り可愛い嫁さんを貰うのか。(あれ? そういや俺、今(も昔も)彼女が居ないな? おかしいな?)
オルトが魔王だったとか衝撃の事実だと思うのだけど、俺的にそれを上回る衝撃の事実に、魔王だったの? あ、そうなん? 位にしか思えない。
まあ、オルトは無闇矢鱈に危害を加えてくるようなタイプではないと思う。紳士的っていうの? そんな感じで俺のグチも嫌な顔一つせず、よく聞いてくれてたし良い魔王(?)だ…と思う。
『ううーん? 俺、見ての通り男だけど? いいの?』
『ああ、魔族は特に性別にこだわりは無いよ。中には両性の者も居るからね』
『あ、そうなの?』
じゃあ、問題無いなー。って、んな訳あるか。
『いや、いやいやいや!』
『そんなに嫌がられると悲しくなるなぁ』
いや、そうじゃない。って、解ってるくせに。
『違くて。多分…いや、間違いなく寿命の差とかあるだろ? 魔族は長命だって聞いた事あるぞ。そんなのどちらも辛いだけだろう』
見送るのも見送られるのも、辛い。
『ん? それなら心配には及ばないよ。そうだね…私は後二千年位は生きると思うけれど何ら問題は無いよ』
サラッと言うなや。
『千年分位、君に私の寿命を譲渡する事が出来る。だから私と一緒に千年の時を過ごそうね』
『サラッと言うなや』
とか何とか。何やかんやこの後もオルトと、やり取りがあった訳だけど。
最終的にはオルト側に付く事にした。そして、付き合う事になった? らしい。(すまない、可愛い俺の嫁! 居ないけど!)
そうだなー、あの国にこだわる必要も特に無いし、バカ様…じゃない。神子様達の子守りもいい加減ウンザリだったし?
千年は衣食住にも困らなさそうだし(しかし寿命、めっちゃ長くなるなー…これ人間卒業ってコト?)世話になった…? 一応、世話になった師匠には事情を知らせれば喜んで送り出してくれるだろう。
むしろ本人喜んで飛んで来るだろう。(魔族領のしかも魔王城の古文書や他蔵書も読みたければ読ませてくれるってーってな事を書けば間違いないな)他は…そうだな、魔法剣士団長や親友辺りには連絡しておこう。それで後の事は上手くやってくれるだろう。
まあ、結局のところ。俺もオルトの事は嫌いじゃない。オルト風に言うのならば“惹かれている”のだろう。
『んー…オルト。長い長ーい時間だけど俺のことを大切にできるか? ちなみに俺は一夫一妻派だぞ?』
男だから子は産めないぞ、本当に良いのか? と、ちょっと強気に念を押せば。
『ふふ、勿論だよ。キリト、ずっとずっと大切にするから宜しくね。ああ、それと。子の問題も心配いらないよ。そもそも魔王の後継は基本的に血筋ではなく指名制だからね』
オルトはそう言って嬉しそうに微笑んでいた。
――…てな事から、数ヶ月後。魔王城の一室、魔王サマの執務室にて。
「オルトー。和睦の書状の草稿、ラスタさんから預かって来たぞー、確認してくれとさ」
「ああ、解った。ありがとうキリト」
「んじゃ、俺はこれで」
「もう行ってしまうのかい?」
「…いや、そんな寂しそうな顔すんの止めてくれよ。出て行きづらいわ。ちょっとミコサマ班に差し入れしてくるから、その後にまた寄るわ」
「そうか。彼らにも退屈な仕事をさせているからな…では、差し入れをしたら、また来てくれるね?」
「おう。茶位淹れてやるよ。そんじゃ、また後でな」
俺達の国と(と言うか人間側の一部の国々、だな)魔族の国で和睦を結ぶ事になった。
その方が俺が人間の国(他国)に遊びに行く時、行きやすくなるだろうからって。まあ、他にも理由はあるけどな。
元々、魔王を倒せ! みたいに騒ぎ立てていたのは、魔族の領土を狙っていた俺が住んでいた国と、その属国の小さな国だけで(と言う事がオルト達の話を聞いて解った。おおい、話が違うじゃねぇか! コレ、オガクズオージ辺りは知ってたんじゃないの? …いや、アレは知らないか)他の魔族領と隣接する国とは不可侵条約的なものが結ばれているらしい。
何なら、とある国からは魔族領に日帰りで遊びに来たり、観光して帰るツアー客等も居るのだとか。知らなかったわ、うん。とても平和だな?
とりあえず“和睦”とは、なっているけれど。強制的にって感じかな。
少し前ミコサマ一行が魔王城に乗り込んできたものの(あ、上級魔族達はミコサマ一行の相手と言う無駄な時間は使わず、小さく弱い温厚な性格の下級魔物達の避難誘導をしたり、戦闘向きではない魔族達を、ヤツらに絡まれたりすると面倒だからと避難させたりしていたんだって)オルトと俺であっさり返り討ちにしたバカ…ミコサマ一行、いらんから近々送り返すわーって内容の書状を送ると共に、迷惑行為は止めて下さーい。神子達の今の状態を見ても、まだ何か仕掛けたいのならー、全力でそちらの国(属国も含めて、まとめて)ぶっ潰しまーす。但し何もしないなら、こちらも何もしませーん。みたいな書状も付けた内容だったりする。
ちなみに。バカサマ…(もうコレで良くね?)ミコサマ方。あまりに騒いで騒いで、煩いから物理的に…ではなく。オルトの魔法で静かにしていて貰っている。
そんなミコサマ達。今では、とーっても静かでお利口さんです。魔法って便利ですね。
「お疲れ様でーす」
「あ、キリト様、お疲れ様です!」
「ミコサマ一行の見張り大変ですね、これ差し入れです。良かったら皆さんでどぞ!」
「おお!ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」
この間、ミコサマ達は一言も話さない。静かで良いなー。それもその筈。
「あ、来週にはアチラの国に送る事になりそうです」
「そうなのですね! キリト様、梱包等はどうするのですか?」
「ああ、オルトが魔法陣でまとめて転送するし、一応頑丈にしてあるらしいので、壊れたりはしないでしょ…って事で、そのまま送り返すみたいですよ」
「はー、流石魔王様。この石像達を一度で転送してしまえるとは凄いお方と解っていても凄いですね」
そう、彼らは今“愚者達の石像”というタイトルで金の立派なプレート付きの頑丈そうな台座に乗っていたのだ。石像として。
ふと、ミコ一行が来た時の事を思い出してみる。
『ああーっ!!! お前っ! あの時の! お前が魔王だったのか!! 魔王は悪いヤツだから倒さないとダメだけど心を入れ替えてオレと一緒に来るって言うなら許してやってもいいぞ!!』
『キサリ! 何を言っているんだ! 魔王を倒す為に俺達はここまで来たんだぞ!』
『そうですよ、情けなど無用です!』
『キサリは…優し、過ぎる』
『そうだ! キサリの魅力に気づいてしまうライバルは、これ以上いらん!!』
『なっ、何言ってるんだよ!!オ、オレに、そんな魅力とか無いし!! コイツにだって、オレの側でやり直すチャンスとかやってもいいと思っただけだぞ!!』
あー、あー煩いなー。と言うか、いつもの茶番ですね。と言うかオルトの横に俺も居るんだけどそこはスルーなのね。別に良いけど。
そもそも“オレと一緒”に“オレの側”て。ミコサマ、オルトに惚れてんの? それともハーレム要員が足りないの? しかも、まさか国に連れて帰るつもりか? 倒して来いと言われている魔王を? と、首を傾げていると。
『ハァ、本当に煩いね君達。無駄なお喋りしか出来ないのなら、もう黙って貰っても良いかな?』
オルトが溜め息を吐いた後、薄く笑った。
『うるせぇ! 皆話は後だ! 先ずは魔王を倒すぞ!』
と、オガクズオージが剣を抜き、オルトに切かかったり。(ホントは必要無いだろうけど、オルトには一応シールドを張っておいた。ニコッてされた。何だよ、何か照れるわ)
『ヤメロよ!! アイツのキレイな顔に傷でも付いたらどうすんだ!!』
バカミコ…(もう良いでしょ…)が、バカ言ってたり。
他の魔法使い達や、武闘家とかもオガクズオージに続き攻撃を仕掛けてきたけど――…
『ふふふ、これはこれは…中級以下じゃないか。いや、中級魔族にも失礼だった。相手にならない』
『だよなー。正直、俺一人でも余裕だもん』
…――本当に話にならなかった。
そして、煩い一行はオルトの魔法一つにより石像に生まれ変わり静かになりましたとさ、めでたしめでたし。
と、流石にそれで済ませる訳にも行かず。
オルトはミコサマ一行に対し、あの国への大きな貸し(脅しとも言うな。こちらに手を出す気ならば神子達と同じ目に合わせるぞ、ってやつね)と共に“和睦”という名の温情を与えたのだ。
この先、神子達が己のしてきた事を(まあ…あくどい事を道中沢山してたもんな、コイツ達。俺が助けられる範囲で助けられた人や魔物も居たけど…全部は助けきれていないよな、きっと)心から悔いて反省した時。石化の魔法は解けるだろう、と。(コレ大丈夫?解ける時は来るのか?)
ミコサマ一行の悪行を途中からだが、見てきたオルトやラスタさん、オルトの部下達が記録した報告書の写しと証拠となる映像石なる物も添えて。(その場の事象を映して残す事が出来るとか! やべー、そんなもんがあるのか研究させて欲しい! と思った事はオルトには内緒だ。バレてそうだけど)ミコ達はもうすぐ自分達の国へと送還されるのだ。
そうそう、ミコ達は石化してるけど意識は保たれたままだ。するかしないかは別として、意識を眠らせたら反省出来ないしな。そして、オルトからのお情けで石像フレンズ(ミコの不愉快な仲間達)のみならば意思疎通だけは出来るんだとさ。…どんな罵詈雑言が飛び交ってるのやら。煩そうだし聞こえなくて良かったー!
とりあえず。これで、俺の魔王を倒す(訳がないだろ)ミコサマ方の子守旅も無事(?)終わりとなるのだった。
ここまでお読み下さりありがとうございます…!!




