“彼”を見つけた日。2 ―オルトレイン―
一応、オルト編(出会い)は完結です。何か色々すみません…先に謝ります。
結果から言うならば。神子達は視界に入れるのも不快だと言ってもいいだろう人間達だった――…ただし、一人の人間は除くが。
『ピキィ、ピキキィ!!』
神子一行の前に立ちはだかったと言うより、偶然出くわしてしまったのだろう下級中も下級。おまけに魔物としては気性がとても穏やかで、一部の上級魔族の間には愛好家も居るという。そんな小さな魔物を仕留めるではなく――…
「あはははっ、弱いなぁ! コレならオレでも余裕で倒せるぞ! そらっ! あはははっ!」
足元に落ちていた石を楽しげに魔物に投げつける神子。そんな神子を微笑ましげに見ている奴らにも、ただただ不快な気持ちしか感じなかった。
(……チッ、下種共が)
人型となる事も出来ないほどの低級の魔物。そうではなかったとしても。それを魔王に助ける義務などは無いが――…
「さて。せっかく、散歩に外ヘ出てきたのだし…」
(…たまには簡単な基礎魔術でも放ってみるのも悪くないな。腕が鈍ってしまうかもしれないし?)
「《雷の矢》」
私は隠れて見ていた木々の間、指先から一つ。基礎魔術を放った。
「ぎゃあああっ、い、いたいぃっ!!? な、なんだっ!?!?」
「キサリッ!!」
「すぐに回復をします!」
「雷の矢…だ。キサリの、腕、掠めた。許さない、どこに、いる、術者!」
一気に殺気を放つ(まあ…殺気、なんて言える程のものでもないがね)一行。
「えーと、皆さん。とりあえず、そこの茂みに隠れませんか? この開けた場では格好の餌食ですから…」
よく見れば一人だけ冷静に指示を出している者がいる。
「チッ! そんな事は貴様に言われなくとも解っている!! さあ、早くキサリを!!」
ふむ。かなり久々に基礎魔術を使ったが普通に出せるようだ。
(おやおや。あんな弱い魔術。万が一に当たったところで“お強い神子サマご一行”ならば全然平気なものだろう?)
「ふふ、弱いフリが随分と、上手らしい。おや…?」
たかが、かすり傷でギャアギャア騒ぐ、アレと仲間達は、さっさと草むらに隠れたのだけど。
一人だけ、数歩歩きしゃがみ込む者が居た。
彼は先程まで低俗な事をしていた神子…(アレを“神子”などとは…例え私が人間だったとしても言いたくはないね)に痛めつけられていた魔物に――…
(何をする気かな? …やれやれ。今度は“石の槍”でも久々に出してみようか)
「ん?」
…――小さな声だが、謝罪をしていた。
「ごめん。お前は悪くないのに、ごめんな」
そして、彼は――…
「…《癒しの雫》」
『ピキィ! ピキィ!』
魔物は、ピョンピョンと。傷が癒えた姿を彼に跳ねて見せていた。
「良かった、傷も癒えたし…。今度は悪いヤツに会わないように気をつけろよ? 今、仲間の所まで送ってやるからな」
「…《転送・場所。“コキアの洞窟”》」
…――その魔物に手を翳し、無詠唱で傷付いた魔物を癒した。更に、その下級の魔物達が生息している、ここから近くにある洞窟まで転移させてしまった訳だが。
(…ふむ?)
そんな彼はようやく回復を終えたらしいミコ達が戻って来た時。
「あれっ! ターナ! アイツはどうしたんだ?」
「ええと…アイツ、ですか?」
「そうだよ、キサリが遊んでいたオモチャだよ。ほんと察しが悪いよね、君」
「はあ、ああ。居ませんね…すみません。逃げられてしまったみたいです」
「ハッ、あんな下級中も下級中の魔物に逃げられるとか…鈍臭い平凡野郎だな!」
上品そうに見せているようだが、本性がバレているよ? と言ってやりたくなるような、杖を持ち、白いローブを着た人間と、上質そうなシャツの上に黒革のベスト。ブーツを覆う長さの黒革のパンツスタイル。腰には細身の長剣を装備した偉そうな態度の男に責められていた。
他の二人も、彼を庇うような態度ではなく言葉に出さないだけで、上品ぶった男と偉そうにしている男と同じ気持ちらしい。
ちなみに神子は止める気があるのだか無いのだか(まあ…無いだろうね)――…
「皆、やめろって! もういいよ! ターナはフツーのヤツだし、ぼんやりしてるところがあるからな! ほら、謝れば許してやるから!」
…――何故、彼に謝る必要が? と私は眉を顰めた、が。
「ハハ…えーと。ミナサン、スミマセンデシタ」
彼は、これ以上騒がれても面倒とか思ったのか(そのように見えたのだけど?)眉を下げて、うっすら笑みを浮かべながら形だけの謝罪をしていた。
その日の夜。私は前魔王夫妻との会食を終え、全ての業務を終えてから(勿論、会談も会議も滞り無く済ませてきたよ)、再び神子達が立ち寄っているだろう街へと入った。
私は昼間見た、あの“彼”が気になっていたのだ。
彼は、神子達の中で一番強い。(と言うか、比べるのは彼に失礼だったかな?)しかし、弱いフリをしているように見えるのは何故か。
それに目立たぬような容姿をしているが、よく見てみれば…少し釣り気味の目や、形の良い鼻や唇などから、気が強そうにも見えた――…
「あれは、神子達に言われている程…平凡じゃないだろう」
「は? 申し訳ありません、魔王様。もう一度仰って頂けますか?」
着いて来ていた(一応、護衛も兼ねての事だけど、私を倒せる者が居たとすれば、ラスタでも敵わないのではないかな…まあ、いいや)ラスタに『独り言だ』と返事を返して。
「それじゃ、少し遊んでくるよ」
「はい。それでは、お帰りの時間まで、お待ちしております」
「うん。ああ、いや。待つだけなのは退屈だろう? ラスタも少し散歩でも、食事でも好きにしてくると良い」
「ありがとうございます。それでは少々街の中を歩いて来ます」
そして。ラスタと別れてやって来たのは、この街にある宿屋の前。
街に入り“彼”の気配を探りながら、ここまで来たのだが、どうやら彼はこの宿の地下にある酒場に居るようだった。
あの下種…ミコ達の気配は感じられないので別行動をしているのだろう。
(これは幸運、だね)
酒場に入ると、防音魔法が掛かっているからか、階上では聞こえなかった音楽や騒がしい声がよく聞こえて来たので――…
(…騒がしいな)
…――少し眉間にシワが寄っていたようだった。
通りすがりの酔っ払いに『おう! あんちゃん、顔こえぇな! 色男が台無しだぞぉ!』とか言われた。
「…ふむ」
私は眉間を揉んで、左右の口角を軽く上げ、柔らかい雰囲気になるよう心掛けてから――…
「やあ、こんばんは。隣、空いているかな? 座っても?」
「え? ああ、はい。空いていますよ、どうぞ」
…――一人で酒を呑んでいた“彼”に声を掛け、その隣に腰を下ろしたのだった。
この時。彼は最初、ミコ達に見せる様な顔しか見せてはくれなかったのだけど、話をしている内に、あの下級の魔物に垣間見せた、素の方で話をするようになった。
そんな彼を見て私は――…
(何だろうな…彼、“キリト”を。もう少し近くで見ていたいような? 話をしたい、ような。ふむ、不思議な感覚だ)
…――暫く、彼らの先回りをしてみよう。そして、彼を観察しつつも、近付いてみようと思ったのだった。
これは、余談になるが。今だから言うけれど…あの時。キリトが素を見せてくれたのは、少し酒の効果もあったのかもしれない。
話の途中。彼に『今日は気分が良いから、一杯ご馳走させてくれ』と奢ったのだけど。その酒は店で一番高く、それでいて飲みやすい物。しかし、とても強い物だったらしい――…。
(今だから、言えるけど。酒も、幸運要素の一つだったのかもしれないなぁ、なんて)
オルト、軽く(?)ス○ーカー化。(笑)
ここまでお読み下さりありがとうございました…!!(次回は、本編後の二人の話になるので、少しはイチャ甘になるよう頑張ります!)
↑と、書いたのですが、次話は神子一行vs魔王戦(笑)になります。すみません^^;




