空白の三日間
「忠明さん、この度はご愁傷さまです」
佐久間は、深々と頭を下げ挨拶をした。
忠明と和子も、佐久間に礼をした。
「こちらは?」
「私の恋人の母親で、飯島和子さんです」
「こちらは、警視庁捜査一課の佐久間警部さんです」
「佐久間です。どうかされましたか?」
「実は・・・・」
忠明と和子は、事情を話した。
佐久間は、直ぐに山川刑事に携帯で連絡し、約五分後に駆けつけた。
どうやら、側で待機していたようだ。
「詳しく、事情を教えてください」
佐久間は二人を近くの茶店に案内した。
二人から事情を聴いた佐久間は、顔をしかめて話を続けた。
「事情を把握しました。里美さんが姿を消したのは、忠明さんの父親が変死体で見つかった直後なんですね。それは、間違いないですか?」
「はい。いつもは、手が空くと、タッくんにお弁当を作り、届けますがこの日は、私とお昼食べていました。お昼のニュースを一緒に見ていて、二人で頭が真っ白になったのを、よく覚えています」
「その時、あなたは?」
「私も、同時刻にテレビのニュースを見ていました。同僚に確認して貰って構いません」
「お母さん、里美さんはその時に変わったことありませんでしたか?」
しばらく、考えていた和子が、
「そういえば・・・・」
「何かお心当たりでも?」
「誰かから、電話が掛かってきて、ちょっと出てくると・・・」
「ーーーーーー!」
「忠明さんは、里美さんに電話をした記憶はないですか?」
「はい。頭に里美と母親の顔が浮かびましたが。とにかく、警察の方が先だと思い電話はしませんでした」
「・・・・・・」
佐久間と山川は互いに目で会話し、忠明達に考えを伝えた。
「里美さんは、誰かに呼び出された可能性があります。そして、今回の犯人か関係のある人物かもしれません。失踪してから、三日経過していることも非常に気に掛かります。あなたや和子さんの互いに気を使って、連絡を避けるタイミングを見計らって行われたとすると、悪質度がかなり高い犯行と言えます」
佐久間は携帯で、直ぐに捜索本部に連絡を入れた。
「本部長、至急の指示を関係班へ。被害者、河村正利氏の息子と交際中である関係者一名、事件発生当日から行方不明。名前は飯島里美。二十歳。ニュース放送直後に、誰かから電話で呼び出された模様。現在、三日経過。全力で行方を捜索願いたい」
「了解。全警察官へ伝達」
「山さん我々も至急捜索本部へ戻ろう」
佐久間は、忠明と和子に告げた。
「言いにくいのですが」
「何でしょうか?」
「・・・里美さんは、何か忠明さんの役に立ちたいと考えて、黙っていなくなったのなら、里美さんは非常に危ない立場にいます。犯人は里美さんに対して危害を加える行動を取るかもしれません。また通常の誘拐であれば、三日以内に身代金の要求電話が大抵来るものです。お母さんは、家で待機していてください。何かあれば、警察からも連絡を入れます。但し、家の中に盗聴器があるかも
しれません。和子さんの携帯にワン切りしましので、警察が貸与するこの携帯で、その場合は自宅から少し離れた所から掛け直してください」
山川刑事が、付け加えて質問した。
「失礼ですが、他にご家族は?」
「主人がおります」
「ご主人は、このことをご存知でしょうか?」
「いえ、主人もあのニュース以来、急に無口になったままで、私ともロクに口をきかないんです」
「そうですか。いいですか?今が正念場です。決して諦めず、気を強く持ってください。忠明くんも」
「・・・・はい。わかりました」