里美の失踪
司法解剖から二日後、親しい親近者のみで葬儀が行われた。
母親は、あれから体調を崩し、叔母に寄り添いながら対応をしていた。
事件後という事もあり、里美が気を使って連絡を控えているのだと忠明は理解していたが、ここ数日全く連絡がつかない。
携帯も電源を切ったままだ。
(里美に会いたいな)
葬儀の最中、里美の母親である飯島和子が焼香に現れ、静かに挨拶をする。
母の貴子は、和子と抱き合い、泣きじゃくった。
しばらく、母親と話をしていた和子は忠明に近づくと、小声で話をした。
「後で少し話す時間あるかしら?里美のことで」
「はい。わかりました」
忠明は、少し違和感を覚えた。
和子が葬儀に来ているのに、何故里美はいないのだろう。
病気か何かで寝込んでいるのだろうか。
将来の父親に当たる人間の死に、心を痛めてショックで寝込んでいるに違いないと自分に言い聞かせていた。
葬儀が終わり、父親は灰となった。
火葬場の煙突の煙が、この世とあの世の境目だと感じながら、黙って空を見上げていたところに和子が来た。
「和子おばさん、今日はありがとうございました。母も喜んでました」
和子は、表情が固いままだ。
「タッくん、里美がいないの。あなたのところには連絡が入ってないかしら?」
「ーーーー?いつからですか?」
「あなたのお父様が、亡くなったニュースが放送された日からよ。もう三日間も連絡がないの」
「僕も里美に連絡を入れたんですが」
「いつ連絡を?」
「二日前くらいです。それまでは里美は僕に気を使って連絡を避けてるとばかり」
「私は、里美がずっとあなたの側で支えているのだろうと。でも喪服は家にあるし、取りにも戻らないなんて不思議に思っていたのよ。このタイミングじゃあなたや貴子に電話するのも、気がねしてしまって」
「警察へは、捜索願い出されたんですか?」
「いいえ。さっき、いないことがわかったばかりだもの。どこに相談したらよいか」
「なら、都合がいいです。今日刑事さんが焼香に来ています。佐久間警部に相談しましょう」
忠明と和子は、近くにいた佐久間警部に事情を話し、相談し始めた。