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永遠の恋人 〜佐久間警部の要請〜  作者: 佐久間元三
悲劇の渦中へ
6/18

任意聴取

「どうぞ、こちらへ」


 山川に案内された忠明は、警視庁捜査一課を訪れていた。


「私は、警視庁捜査一課の佐久間と申します。今案内したのは山川刑事です」


 忠明は、軽く頭を下げ挨拶した。


「あの、昼間のニュースで父親が変死体で発見されたと。110番したらこちらを案内されて」


「失礼ですが、息子さん本人ですか?お母様は?」


「母親は、癌で退院したばかりなんです。まだ、自宅療養中で満足に外出出来る状態ではありません。私は河村正利の一人息子、河村忠明と申します。父親に会わせて欲しいんです」


「・・・今、司法解剖をしてますので、あと二時間程度で対面出来ます。一刻も早くお会いさせたいのですが、殺人事件につき、ご了承ください」


「・・・・わかりました」


 佐久間は、忠明にコーヒーを渡し、解剖が終わるまで、任意で事情聴取することを申し出た。


「忠明さん、我々は一秒でも犯人を検挙しなければならない。その為には、身内でもアリバイや事件と関係しているか否か確認しなければならないんです。我々もしたくてする訳ではありません。非常時とはいえ、あなたに質問することについて、ご理解ください」


「はい。犯人検挙なら何でも答えます」


「ありがとうございます。では、いくつか答えられる範囲で結構です。答えたくない質問は黙秘可能です。宜しいですか?」


「・・・はい」


「まず、あなたは最後に父親に会ったのはいつですか?」


「・・・一年くらい前です。はっきりとは思い出せません」


「一年前?本当ですか?」


「・・・はい。私は家庭を犠牲に研究に没頭する父親をどうしても許せまんでした。父親と同じように考古学を専攻してました。でも、大学教授には興味がなく、父親に反発して大学院進学を辞めて、介護の道に進んだんです。ちょうど、母親も癌で体調を崩したこともあって」


「お母様が入院されたのは、いつまでどの病院にですか?」


「一月くらい前までです。千葉県の北柏にある東京慈恵会医大附属病院です。C病棟に問い合わせしていただければ、確認出来ると思いますよ」


「お母様が入院中、お父様は?」


「一度も見舞いに来てないと思います」


「それでは、父親の職場関係など状況はどの程度把握されていますか?」


「大学時代、助教授と講師は父に仕えていたはずですが、覚えてませんので、大学に問い合わせしていただいた方が良いかと。母親も、同じで生活を何年も共にしていないので。とにかく他人なんですよ」


「・・・家族関係が、言葉が悪くなりますが崩壊していることは理解します。父親宛に不審な手紙や電話等あったかどうか、ご存知ですか?ここ一年前の間でです」


「私は、介護の仕事を選んだ時から、実家を出てしまいました。母親に確認しないと正直分かりません。母親には確認しますが覚えているかどうか。それに、苦情や脅迫の類は大学の方に入るのではないかと」


「というと?」


「父親は、家庭を知られたくない性格です。普通卒業アルバムには、学生や教授の住所も載せるんですが、父親も私も住所の掲載はNGとしてましたから」


「なるほど。よく分かりました」


「では、最後に・・・」


 佐久間が、最後の質問をしようとした時に司法解剖が終了した連絡が入った。


「忠明さん、解剖が終了したようです。お父様に会ってあげてください」


「質問は、宜しいのですか?」


「はい。今日はこれで結構ですよ。ご案内します。警察病院の地下の安置室になります。病院まで案内します。地下は暗いので気を付けてついて来てください」


 地下二階にある安置室に、忠明は案内された。


「・・・父さん。馬鹿やろう。家庭を、母さんを散々苦しめて、家庭サービスもしないで。母さんがどんなに悲しむか。最期は誰に殺されたんだか。あなたらしい最期だよ」


 佐久間と山川は、静かに見届けていた。


「でも、犯人は必ず探し出し、報いを受けさせて見せるよ、父さん!」


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