変死体
忠明は、相変わらず、日々を介護に追われて過ごしていた。
母親も、無事退院し、今は自宅で療養中である。
里美も、時々、忠明の代わりに様子を見に行ってくれ、助かっている。
相変わらず、父親は大学から、家に戻らないが・・・。
忠明は、父親はいないものだと、自分に言い聞かせて、学生時代から過ごしてきた為、さほど気にしなかった。
しかし、妻が癌でやっとのこと、死の淵から生還して退院したのに、全く家庭を省みないとは、どういう事なのか、理解出来なかった。
今夜にでも、飛出した大学に行って、父親をぶん殴ってでも説得し、家に強引に戻そうと考えていた時、昼のニュースが流れた。
『次のニュースです。速報が入りました。東京都町田市の山林から発見された変死体の身元が判明した模様です。変死体は、東京○○工業大学の大学教授河村正利さん五十八歳であることが、関係者の話で明らかになりました。繰り返し、お伝えします。変死体は、東京・・・・・』
「ーーーーーー!」
忠明は、立ち上がり、ニュースを見続けた。
ニュースが終わると、違う局にチャンネルを回し、何度も確認したがどのニュースでも、同じだった。
父親は、何者かに殺されたのだ。
頭の中が真っ白となり、何も考えられない。
母親の顔と里美の顔が脳裏に浮かんだ。
(と、とりあえず、落ち着け。まずは、母に電話だ。ニュースをまだ見てないかもしれない。すぐに、母の所に行かなければ。里美には、どうする?接客中かもしれない。こちらから、今は連絡をするのをやめよう。後で連絡を)
忠明は、警察へ確認する為に、電話を掛けて、その後、母親に連絡を入れた。
・・・・この時から里美の消息も分からなくなっていた。
しかし、そんな事は、この時の忠明には分かりようがなかった。
悲劇の歯車が静かに、ゆっくりと回り始めたのだ。