飯島正志の最期
翌日の早朝、六時。
飯島正志の自宅を捜査員二十名で取り囲み、佐久間が呼び鈴を鳴らした。
「・・・はい。どちらさま。あら?佐久間警部さん、こんな朝早くどうしたんですか?」
「ご主人に用がありまして。ご主人はご在宅でしょうか?」
「はい。あなた?刑事さんがお見えよ」
奥から、声が聞こえる。
「入って貰いなさい」
「どうぞ、散らかってますが」
佐久間たちは、奥のリビングに通された。
「これは、刑事さん。どうされました?こんな朝早く?」
「おはようございます。飯島正志さん。あなたに逮捕状が出ています。河村正利と飯島里美の殺人教唆容疑並びに近藤俊彦殺害容疑です」
「ーーーー!話が見えませんな?」
飯島正志は、落ち着いた様子で、葉巻に火をつけた。
逆に妻の和子は、驚きを隠せない様子で手で口を押さえている。
佐久間は、説明を始めた。
「近藤俊彦が、刺殺され遺留品からあなたとの通話履歴が消されていない状態で発見されました。電話会社での調査の結果、飯島里美さんの失踪から殺害に至るまでの間も、近藤俊彦とコンタクトされていたことは、判明しています。また、あなた名義の口座から定期的に二十万円ずつ送金された記録も証拠として抑えました。戸籍を調べてみましたが、和子さんとの結婚前に近藤智美さんと籍を入れられ、子供を一人もうけた。近藤俊彦さんを
です」
「ほう?随分と調べたな?君は実に優秀な刑事のようだ。俊彦の成田湯川駅での読みといい、勘がとても鋭い。俊彦も君の、いや、警視庁の力を読み違えたようだ。そうだ、俊彦は私が処分したよ」
「ーーーーーー!あなたは人じゃない。自分の子供を二人も殺したのよ!この人殺し!」
「二人?いや、違うな。一人だよ?」
「ーーーー?一人?」
「ああ。詳しくは馬鹿妻に聴くがいい。それにしても、里美も忠明の父親が殺された時に、俊彦に事件のことを聞きに行かなければ、もう少し、長生きさせてやったものを。馬鹿な娘だ」
「あんたなんか、死ねばいいのよ!里美を返しなさいよ!」
飯島和子は、半狂乱でつめ寄ろうとした時、飯島正志は冷静に銃を構えた。
「ーーーーーー!」
その場が瞬時に凍りつく。
「お前たちは、皆、馬鹿だ。馬鹿だから俺に殺される。一つ心残りは、忠明を地獄に送れなかったことか。奴を殺せば全てが終わったのに。お前たち警察が奴を匿うから、奴は生き延びた。和子、お前も生き残れた。お前を最後に殺そうと思ってたよ。里美の死を悲しむ姿を堪能できて、爽快だったよ」
飯島正志は、そう言い放つとコミカミに銃を押し当て、佐久間が取押える直前に躊躇いもなく、引き金を引き、果てた。
「捜査本部に連絡を。・・・被疑者、死亡と・・・」




