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コメディ

逆逆逆ハーレム位まで行ったら疑心暗鬼になる説

作者: kitatu

 

 ハーレムとは、男性が複数の女性に囲まれ、好かれている状態である。


 逆ハーとは、女性が複数の男性に囲まれ、好かれている状態である。


 もし、その先に逆逆ハーレムとあれば、通常逆ハーレムの逆は、ただのハーレムである。それでは逆逆ハーレムというものは存在できない。


 そこで、逆ハーレムメンバーが逆にハーレムを作っている場合を逆逆ハーレムと定義した時のお話。


☆☆☆


 私、坂山晴子は、オタクである。

 自他共に認めるオタクである。刀男子や乙女ゲームをこよなく愛する女子高生である。


 そんな、私に転機が訪れたのは高校2年生の時。

誰もいない図書室で1人勉強しているとクラスのリーダー的ポジションでサッカー部のエースで焼けた肌に短く揃えられた黒髪。男のくせに長い睫毛とパッチリした二重の目をもつ美男子に声を掛けられたのだ。


「それ、自転車レースのアニメだよね?」


「う、うん」


「好きなの?」


「う、うん」


「そうなんだ。実は俺も見てるんだよね〜」


 この男、虹山霊夢は、隠れオタクなのであった。


 それから、この男と時々話すようになり、初めは、イケメンに話しかけられて舞い上がる気持ちより、恐怖が勝っていた。


しかし、話していくうちに、イケメンに対する耐性が出来て気軽に話せるようになった。


 さらに、その副産物として、今まであまり男子と話せなかったけれど、話す事が出来るようになってからは、同じ文芸部のすらっとした長身のクール系イケメンの葉山先輩や、IT社長の息子で年下の後輩の道明寺貞作君やハーフモデルのイケメン転校生、久坂ハエル君とも急激に仲良くなった。


 正直言って、仲良くなり過ぎたと思う。


 初めは、皆と良く喋れるようになって自分はイケメンを楽しませることが出来ている!と小さな自尊心を満たしていたが、段々とイケメン達の反応が変わるにつれ、悩みになっている。


 そう、イケメン達が自分に好意を向けていることに気づいたのだ。


 今まで、恋愛はゲームの中しか経験の無かった私が何故気づいたかというと実は、迫られたのだ。4人中3人には壁ドンされているし、1人には告白のようなモノをされている。


 告白をされた時には、弟の見ていたハーレムアニメのセリフを引用してとぼけてやると顔を真っ赤にしていたので滅茶苦茶萌えた。


 まぁ、ハーレムアニメを見る限りハーレム要因は報われないから可哀想だなぁと思う。


 なにはともあれ、悩みでは悩みであるが、いわゆる逆ハーという悩みである。


 モテない女性にとっては嫌味である。


 実際、自分でも悩みと思っているが思い込んでいるだけで、私の様なタイプの女は自分の欲望を絶対に隠し、相手に察させるように働き、自尊心を満たす生き物なのである。


 嫌な女だね。自分でも思うよ。


 ふと、そんな風に空想に耽っていたら私の家族ぐるみの友達の愛ちゃんが話しかけてきた。


「ハレちゃん!昨日のアニメ見た?」


 愛ちゃんは昔っから私の事を晴子の晴からとってハレちゃんと言ってくる。

 愛ちゃんは、私に相応しくない様な可愛くて良い子で、人付き合いの苦手な私でも仲良くしてくれる友達だ本当に大切にせねば。


「みたよ!めっちゃユーリかっこよかった〜」


「本当にね!声優の攻くんの声に痺れちゃった〜」


 いつも通りのアニメの話で盛り上がった。


「そういえば、ハレちゃん。虹山君がアニメオタクって知ってる?」


 それは、私と虹山君の秘密なのになんで愛ちゃんが知ってるんだろう?

 少し胸がざわざわした。


「妹が虹山君と最近よく遊んでるんだって!」


「えっ!?本当!?」


 私は、身を乗り出して聞いてしまった。


「うわっ!?びっくりしたぁ〜本当だよぉ」


「いや、虹山君がそんな遊ぶイメージが無かったからさぁ〜」


 私は、慌てて取り繕った。


「そうかな。虹山君、サッカー部のエースでイケメンだから遊ぶイメージだと思うけど……。現に、妹も虹山君は良く遊ぶ女の子が沢山居てライバルが多くて大変だって言ってたよ」


「そうなんだ……」


 自分だって逆ハーレム状態で同じ事をしているのはわかっていたが、この無性に裏切られたような気持ちになって沈んでしまった。


 そのまま、時は進み放課後。何時ものように部活の無い、水曜日。図書室には、私と虹山の2人だけがいた。


「どうしたんだ?晴子?今日は、なんか元気が無いじゃないか?」


 虹山が本当に心配したかのように尋ねてくる。


「いや、なんでも無い」


 ハーレム要因だと思ってた虹山が逆にハーレムを作っていて私もハーレム要因なんじゃ無いかと思ってることがショックなんて言える訳がないのだ。


「なんでも無いって事はないだろ?」


「無いったら無いの!」


 私は、怒気を強めて言った。本当にクズでメンド臭い女である。自覚している。


「なぁ、話してくれよ。俺は、お前の笑っている顔が見たいんだ」


 虹山が私に優しい台詞を掛けてくる。そこで、私は吹っ切れた。


「そんな、気持ち悪いセリフ誰にでも言ってるんでしょ!」


 虹山は、少し狼狽えた。


「そんな……。俺は晴子にしか言ってないよ」


「うそ、おっしゃい!愛ちゃんの妹やその他の女の子も侍らせてよく言えるわ!」


「いや、翔子や京香や栞には、そんな事を言ってないよ!」


「ほら!思い当たる相手が3人も居るじゃない!……ってあれ?京香に栞?鈴木京香に檜山栞?」


「あ、ああ。確かに鈴木京香に檜山栞だけど……」


「そ、そうなんだ。良い事じゃないけど教えといてあげるわ。鈴木京香は、弟の学校のオタサーで姫やってて逆ハー築いてるし、檜山栞は、大学生やバイト先の店長や親戚のおじさんと仲良くしてるわよ……」


「そ、そんな。翔子ちゃんは!妹の翔子ちゃんは!」


「この前、うちで弟と弟の友達とスマブラしてたわ。他の子は知らないけど弟は好きだって。あと、弟にもいつもくっついてくる3姉妹がいるわ」


「一体どうなっているんだ……。俺のハーレムだと思っていたのに」


「アニメの見過ぎよ」


 まぁ、私も言えないけどね


「待ってくれ。ということは晴子、お前もか?」


「ち、ちがうわよ」


「いや、絶対お前もだろ!てか、噂だと思って聞き流してたけど道明寺、久坂、葉山さんと出来ているんだろ!」


 どんぴしゃである。


「そ、そんな訳ないでしょ!疑心暗鬼になり過ぎよ!」


「言っておくけどな!道明寺は、親の付き合いで許嫁がいっぱいいるし、葉山さんは、毎日義理の姉妹と寝てるくらい仲良いし、ハエルは只のヤリチンだぞ!」


「ええええええっ!?私の逆ハーレムが!?」


「逆ハーって認めるんだな!もちろんお前の逆ハーだよ皆、一応お前が本命だからな」


「いやよ!そんなの!本当に本命か分からないじゃない!私なんてハーレムメンバー全員本命だと思ってたのよ!」


「俺もそうだよ!全員本命なんだよ!もう、どうすればいいかわかんねえよ!ってか逆ハーメンバーにしやがって!」


「あんただってそうじゃない!どうせハーレムメンバーで私のことなんて、チョロチョロインだと思ってたんでしょ!」


「ちがうわ!一応本命だったんだよ!他のハーレムメンバーはチヤホヤされて悪い気がしなかったからそのままにしてただけだ!」


「最低、クズ男!死ね!」


「うるさい!クズ女!お前こそ死ね!」


 はぁ、はぁ、はぁ。


 私と、虹山は止まらない口論の末、疲れて息をきらした。


 それから、2人の呼吸が元に戻るのに長い時間が流れた。


 そして、呼吸が元に戻ると虹山が口を開いた。


「俺、一つ良いこと考えた」


「私も多分同じこと考えたわ」



 こうして、私達は付き合うことにした。


 世の中の人間全員、ハーレムを作っていると信じ込んだ私達は、ハーレムメンバーとして報われない人生を送るより、事情を知り、ハーレムに懲りた者同士が上手くいくと思ったからだ。


 案の定、偶に喧嘩はするが、つつがなく付き合っている。


 ハーレムは、やはり空想の世界だけで充分である。

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