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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
休戦
71/104

10.とある観察者の報告

 囚我(とらわれ)廃人(はいと)、二十二歳。

 “組織”にて第二部隊の部隊長を務める。

 『魔法科学』の分野において天才と称され、その研究は魂からヒトを生み出すことすら理論上可能とさせた。

 『Alice』を筆頭とする、魂を利用とした人形を生むことを得意とし、その作品たちは現在“組織”の戦力として活躍している。

 “組織”の創始者である壱獄煉(いちごくれん)(けい)とは親友。

 実は嘘誠院音無の『師匠』であり、彼に召喚術を教えたのは囚我廃人である。


 風見(かざみ)リユ(りゆ)、二十歳。

 風見(かざみ)(じん)の姉であり、“組織”のNo.2である。

 “組織”の創始者である壱獄煉荊とは仲良しとのこと。

 自由奔放な性格で、面白そうなら“組織”として動くし、そうでないなら命令であろうと拒否する自由っぷり。

 (むらさき)時雨(しぐれ)の鉄扇は元は彼女のものである。


 壱獄煉(いちごくれん)(けい)

 “組織”の創始者。

 囚我廃人とは親友で、風見リユとは仲良し。

 通称『荊様』


 やっと訪れた休息の時間。

 だが完全な休息とは言えない。次の戦いに備えるため、各々やるべきことが山ほどあるのだから。


 嘘誠院(きょせいいん)音無(おとなし)が目を覚ましたのは“組織”での戦闘から帰還して三日目のことだった。

 否、正確に言えば、通常通り会話が出来る状態で意識を覚醒させることが出来たのが、というべきだろう。

『自分のせいで猫神(ねこがみ)(あや)が死んだ』

 嘘誠院音無はそんな考えに囚われていた。そして、耐えきれず発狂するしかなかった。言ってしまえばその考えは早とちりなのだが、あんな光景を目の当たりにしてしまえば無理のない話なのかもしれない。

 そんな嘘誠院音無をコントロールすべく、戸垂田(へたれた)小坂(こさか)黒岩(くろいわ)(あかつき)を呼び、鎮静剤を使い、三度目の正直でやっとどうにか覚醒させることが出来たようだ。


 嘘誠院音無が目を覚ました為、直後彼らは今回の戦闘でのことをまとめ、情報を共有することにした。

 九十姉妹の強さのからくり、昼夜(ちゅうや)海菜(しいな)の対処法、九十九(つくも)(らい)についての詳細、そして“組織”にいる者の人数。

 どれもこれも不完全な情報だったが、彼らにとっては現状を整理し、今後どうすべきか見直す良いきっかけになったようだ。

 そして最終的な結論として弾き出されたのは次の戦闘に向けた『修行』である。


 修行の二文字に心が踊らないわけがない黒岩暁だったが、戸垂田小坂はそんな彼女の対処法をきちんと心得ていたらしく、条件をつけた。これにより、黒岩暁に限らず修行で無茶をする者は居なくなっただろう。リスクを伴いすぎる鍛練に意味はないのだ。

 戸垂田小坂の条件に大人しく従うことにした黒岩暁は、一先ず頭を使って鍛練の足しにすることにしたようだ。良くも悪くも一直線な彼女にとって中々いい傾向である。

 ここで予想外だったのは、先の戦闘での敗因──決して彼女が負けたとは思えないが──について、黒岩暁が冷静に、克つ的確に考察していたことである。

 黒岩暁の敗因は彼女の言うとおり、『黒岩暁の強さ』である。九十姉妹はそれを逆手にとっていた。

 今後こういうことが合ったときの対処法として黒岩暁が最終的に考えたのは『呪術の習得』だった。そして、それを教えられそうな者の候補として雨宮(あまみや)雪乃(せつの)を思い浮かべたようだが、即座に厳しいと判断した。

 無理もない、黒岩暁と雨宮雪乃の関係は険悪なのだから。

 だというのに、黒岩暁は戸垂田小坂に依頼され、雨宮(あまみや)気流子(けるこ)と共に雨宮雪乃の元へ食事を運び、彼女に食べさせることになってしまう。


 雨宮雪乃は致命傷を負い倒れ、未だ意識が戻らない猫神綾の元から動かないでいた。食事もとらず、黒岩暁に言わせてみれば、生死をさ迷う猫神綾よりもずっと死んでいるような状態のようだ。

 案の定、二人が呼び掛けても全く反応を示さない雨宮雪乃だったが、雨宮気流子が地雷を踏み抜くとやっと反応を示した。だがそれは直ぐに口論となってしまい、最終的に雨宮気流子が平手打ちをかまして強制終了となってしまった。

 その後雨宮雪乃が食事をとったのかは定かではない。


 一方“組織”では、まず昼夜海菜から囚我廃人へ報告が行われた。囚我廃人の作品である『Alice』が魂ごと消滅させられてしまったので当然の流れである。

 どうやら囚我廃人は今回の戦闘で実験をしていたらしい。

 力を抑えた状態での嘘誠院(きょせいいん)狂偽(きょうぎ)の強制召喚。恐らくこれは今後重要な役割を果たしていくだろう。嘘誠院狂偽によってもう一度世界が滅ぼされてしまう前に、彼をどうにかする唯一の手になるかもしれないのだから。

 その他にも色々と考えているようで、囚我廃人は昼夜海菜に様々なことを聞いていた。

 そして最後に囚我廃人は神様の話をする。

 残念ながら昼夜海菜は全く信じていないようだったが。


 そんな二人の会話を盗聴していたのが琴博(ことはく)桜月(さくらつき)だ。

 琴博桜月は紫時雨の訓練の様子を見守りながらずっと盗聴をしていた。そして、それは昼夜海菜が部屋を去ったあとも続いていた。壱獄煉荊が囚我廃人の部屋に居たからだ。

 ここでもやはり『神様』の話が出てきている。

 琴博桜月は昼夜海菜よりも神様の存在を信じているようだ。おまけに、壱獄煉荊が神様になってしまえばいいなんて考えてしまっていた。


 神様の話が終わると、次に始まったのは『Alice』に組み込んでいた術式を紫時雨にも組み込んで良いかどうかの今後を見込んだ話。琴博桜月は無意識のうちに拒絶したようだ。

 囚我廃人は琴博桜月がこの会話を盗聴することを知っていてこの話をしたらしい。許可を取る本命は壱獄煉荊ではなく琴博桜月だった。


 壱獄煉荊が部屋を去ると琴博桜月も盗聴をやめた。そして一人になった囚我廃人は資料を片手に思考を巡らせる。

 どうやら世界が滅ぶ前の嘘誠院音無と随分親しかったようだ。考えるのは彼のことばかりである。しかし、だというのに、何故その愛が全くをもって嘘誠院音無に伝わっていないのだろうか。嘘誠院音無が家族のような存在に救われ始めたのはごく最近のことである。もっと早くに愛を感じることができれば、世界が滅びることもなかったというのに。


 囚我廃人は次の戦闘に参加するつもりのようだ。しかし、嘘誠院音無に会うつもりは全くないらしい。一方で嘘誠院音無は囚我廃人をずっと探していたが、果たしてどうなることやら。

 次の戦闘は別の意味で中々荒れることになりそうだ。


 さて、囚我廃人が疑問視していた九十九(つくも)(らい)の居場所だが、彼女は嘘誠院音無の家を訪れていた。


 嘘誠院音無、昼夜空美、黒岩暁の三人が戸垂田小坂に内緒でほんの少し術の『確認作業』を行っている頃、九十九雷は訪れた。

 戸垂田小坂は警戒心から扉を閉め追い払おうとするものの、九十九雷はそれに食い下がりなんとか話を聞いてもらおうとする。

 不思議なことに、彼女は記憶喪失であり、自身を九十九雷ではなく終夜(よすがら)雷と名乗っていた。そして、『嘘誠院音無たちにしなければならないこと』を成すためにやって来たのだという。

 内緒で『確認作業』を行っていた三人が戻ると、終夜雷への聞き取りが本格的に始まった。

 が、それは雨宮気流子の体当たりにより中止。あまり警戒しないで側に置いておく、という結論に至った。

 雨宮気流子や昼夜空美が『誰かに似ている気がする』という終夜雷だが、他の者たちにはピンと来ていないようだ。


 三人での『確認作業』では一つの疑問が生まれた。

 嘘誠院音無が猫神綾の魔術を召喚してみたところ、雷が召喚されたのだ。しかし、雷に撃たれたところはしっかりと凍っており、それが猫神綾の魔術であることの証明には一応なった。

 だが、雷はどこから出てきたのだろうか。



 次の戦いはそう遠くないうちに始まる。

 この戦いの終着点はどこにあるのだろうか。

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