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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
初戦
44/104

3.雨宮気流子

「……で、貴様らの答えはそれか」


 お腹空いて不貞腐れて寝てたのに、なんか怒られながら言われた。理不尽だよねー。人にものを頼むときは食べ物を献上しろって教わんなかったのかな! お供え物をよこせー! 我を誰とこころみるー!

……あれ? なんか違った。試しちゃだめだね。心得なきゃ。


「答えって言われてもなぁ……」


 気流りんと同じく寝ていたらしい小坂くんがアクビをしながら苦笑した。うん、やっぱ寝るよね。だってつまんないもん。やることないんだもん。


「得体の知れない何だかを完成させろって言われて大人しくやるやつが居るわけないだろ。それに、厳密に言えば何時までやれなんて言われてねぇんだし、まだやってなかったとしても問題はねぇよな?」


 妙にイライラしてる小坂くんが意地悪く笑って言ってる。悪い顔してるなー。

 何でもいいけど何の話してるんだろう? 完成させるって何のことだっけかなー。気流りんお腹すいてたからちゃんと聞いてなかったんだよね。これって何もくれなかった海菜にゃんが悪くない?


「……屁理屈を」

「言うに決まってんだろ? こっちは腹が減ってイライラしてんだよ!!」

「そうだそうだー!」


 珍しく小坂くんと意見が一致した! そうだよね! お腹減ったよね!!


「こちとらテメェらのせいで昨日の夕飯から記憶がねぇぞ! 夕飯から食いっぱぐれてるとしたらいい加減に限界だろ飯寄越せ!」

「お腹すいたー!!」

「…………チッ」


 おかしいなぁ。なんか物凄い顔で舌打ちされちゃった。海菜にゃんって空美ちゃんとクリソツだから空美ちゃんに舌打ちされたような気分になって凹むよね。空美ちゃん元気かなー。っていうかなんで気流りんたちこんなところにいるんだろ。多分その辺もちゃんと話してたと思うんだけど、気流りん何せ話聞いてなかったからなー。

 んー……お腹すいたなぁ。


「……いいか、これは命令だ。そして、素直に命令に従うならば、食べ物を用意しよう」

「従わないなら?」

「その時はこっちで実力行使するまでだ」


 海菜にゃんはそう言って腰に刺さってた日本刀を抜いた。ふざけてる場合じゃなくなっちゃったかもしれない。おっかしーなー?


「そんな脅され方されてもなぁ? 俺もカエル娘も、力を使わなきゃ脅しなんて意味ねぇよな」


 それでも小坂くんは挑発をやめない。

 それでも海菜にゃんの目付きは変わらない。


「誰が脅しだと言った?」耳が壊れそうなくらい喧しい音と共に、鉄格子がバラバラになって落ちた。勿論、斬ってそうしたのは海菜にゃん。「これは警告だ」

 そう言って一歩、気流りんたちが入れられた檻の中に海菜にゃんは足を踏み入れた。勿論日本刀は構えたまま。……うん、目の前で鉄格子がバラバラになるのを見せつけられると、流石にその刀に恐怖しないわけにはいかないよね。


「例えば、雨宮気流子が傷を負い、血を流したとしよう。その血が魔方陣に落ちたとしよう。そうすれば条件の半分がクリアーできる。そして、その雨宮気流子の傷を戸垂田小坂、貴様が癒したとしよう。そうすれば魔方陣が完成するだろうな」

「なるほど、ソイツは確かに警告だ」


 ()()()()()()()()じゃ()()()()()、と小坂くんは不敵に笑って何かを思い切り投げた。その日本刀の切っ先めがけて。

 カキィン、と甲高い音が鳴って投げたものと日本刀がぶつかる音がする。それからカラン、と軽い音がして、何かが海菜にゃんの隣に落ちた。

 それは小さなメスだった。


「つまり、お前がこいつに触れられなければいいってことだよな?」


 何処から出したのか、メスの先を海菜にゃんに向けて挑戦的に小坂くんは言った。その刃はあまりにも小さくて、日本刀を相手にできるようなものじゃないってことぐらい気流りんにも分かる。

 でも、どうしてかその背中がとても頼もしかった。小坂くんの癖に。


「やれるもんならやってみろ」

「!」


 海菜にゃんはそう言って()めがけて刀を振った。

 ()は只それを見てるだけで、ああ、斬られちゃうなぁなんて思いながら、全く動けなかった。 斬られたら絶対に痛いって分かってるのに。


「……ッ!」


 でも、顔を歪めたのは海菜にゃんの方だった。

 海菜にゃんが刀を振って()を斬る。その一瞬前に金属同士がぶつかる甲高い音が聞こえた。そして、刀は()には当たらなかった。横の床を斬っていた。


「心配しなくていいぞ、()()()。今だけならお前は俺が守ってやる」


 小坂くんはそう言っていつのまにか取り出したメスを五本ずつ両手にもって宣言した。気流りんを守る、だって。小坂くんの癖に?

 治癒術しか使えないから戦えない、なんて言ってたのにどうするんだろう? なんて思ってたら、その答えを小坂くんは威圧するように言ってくれた。勿論、威圧してるのは海菜にゃんね。


「ずっと、お前の身体に合ってない日本刀の長さが気になってたんだ。けど今ので分かったよ。

 お前のそれはただの媒体だ。お前の能力を発動させるためのキーだな。空美と双子ってところを考えると『空間系』……さっきの鉄格子から『空間を斬る能力』ってところだな。

 やろうと思えば素手でも出来るがリーチが足りない……或いは、刃物を媒体としないと上手くイメージができなくて能力が安定して発動しない。どうだ?」

「…………」

「図星みたいだな。

 さて、そこまで分かれば後は簡単だ。ちょっとした術を乗せたこのメスを、お前が能力を発動した瞬間にぶつければいい。そうすれば魔力が遮断されてそいつはただの刀。しかも振ってる最中に魔力のぶつかり合いが起きてんだから軌道がぶれて修正もできずカエル娘には当たらない。

 俺が医者を目指してるのが運の尽きだったな」


…………?

 どういうことだろう。まずなんで小坂くんは海菜にゃんの能力がわかったんだろう。空美ちゃんそんなこと言ってなかったよね?


「何故そこまで……」

「医者はホンの少しのヒントから元凶を見出ださなきゃいけないもんだよな。それからその対処法もな」

「バカな……そんなアホみたいな観察力と思考力があってたまるか!」

「褒められてんだか貶されてんだかわかんねーな。実際出来たんだから認めてくれよ」

「……っ、口ばっかで実際にできなければなんの問題でもない。力ずくでその魔方陣を完成させよう!」

「出来なかったら言わねえよ。俺らはお前に従わないし、お前に実力を行使されることもない」


 カキィン、と甲高い音がした。

 また海菜にゃんの刀は気流りんとは別方向を斬っていて、近くには小坂くんが投げたメスが転がっていた。

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