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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
戦略
37/104

6.昼夜空美

 猫さんが倒れて、音無さんが仙人さんに連れていかれて。残された私たちの間には気まずい沈黙が流れていました。


「…………」

「…………」

「…………」


 何を話したらいいのかさっぱりわかりません。空気をクラッシュしてくれそうな気流子さんという頼みの綱も猫さんを運びにいってしまったので頼りに出来ません。肝心なときにいないんですから、もう。


 というか、これから私はどうしたらいいのでしょう。

 “組織”内の意見の食い違いを理由に私は“組織”から逃げ出し、そしてここに来ました。ここにいる以上、私はこれから“組織”と戦わなければなりません。果たして、それはなんのために? 音無さんを守るため? いいえ、それは何かが違います。

 一つ屋根の下で暮らしてるとは言えど、皆さんのように音無さんをすぐに大切に思えるほど私は単純ではありません。音無さんよりもよっぽどお姉ちゃんや第一部隊の皆さんの方が大事だし、大好きです。

 では何故大好きな皆と敵対する道を選んだのか。私は、この戦いに参加する前にまず、自分と向き合わなければならないような気がします。


「そっらっみちゃーん! あーそーぼ!」

「きゃああああぁ!?」


 一気に考えてきた思考を崩されました。体制も崩されました。床に押し倒されました。なんてこと!

 犯人は気流子さんです。勿論気流子さんです。むしろ気流子さん以外にやる人がいません。


「な、何ですか急に……」

「えー、だってつまんないんだもん。ほら、小坂くんも葉折んも構ってくれなさそうだしぃー」


 ぶーぶーと口を尖らせる気流子さん。本当に私より年上なんでしょうか。確かに、小坂さんは猫さんや雪乃さん(?)、それから雪乃さんが連れてきた男の子の面倒で忙しいみたいです。葉折さんは何かを深く考えているのか、とても真剣な表情で若干周囲に魔力が漏れてしまっているのでとても近付ける雰囲気じゃないですね。

 なるほど、私しかいないですね。

 だからと言って、突然飛び付いて押し倒していい理由にはならないんですけど。

 まず遊ぶってなんなんですか。かくれんぼですか? 鬼ごっこですか? どちらにせよ、二人ではあまり楽しくなさそうな気がします。


「ちっちっち、そうじゃないんだよ助手ちゃん」

「助手ちゃん!?」

「ちなみに音無君が助手一号。別名ワトソン君。いや、ワト(なし)君!」

「わ、ワト無……」


 誰ですかそれは。っていうかなんで助手なんですか。いつから助手になったんですか。

 なんだかそのどや顔が妙に腹立たしいです。


「そ、それで、何をするんですか?」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた! 説明しよう! これからすることと言えば!」

「言えばー?」

「小坂君にちょっかいをかけまくることだよ!」

「ぜ、絶対に怒られるやつじゃないですか! 嫌です!」


 何を言い出すかと思えば!

 小坂さんが忙しそうだから私のところに来たんじゃないんですか!? しかもちょっかいをかけまくるって絶対に迷惑ですし!

……多分、騒ぎまくってる今の時点で、すでに迷惑なんですけれども。


「けっろろーん! みんなでやれば怖くないー! レリゴー!」

「レリゴーしません!」


 拳を挙げて動き出そうとする気流子さんを、私は気流子さんの腰に抱きついてホールドすることで阻止しました。

 阻止できませんでした。

 普通にそのままずるずると引きずられてしまいます。私がどんなに力を込めて体重をかけても抵抗ゼロです。確かに、雪乃さん(?)が投げた岩を片手で砕いた時点でバカ力だとは思っていましたけど……まさか、こんなに力が強いだなんて。


「こっさかくーん!」


 スパァン! と、気流子さんはそのまま勢いよく扉を開けて声高らかに叫びます。扉が壊れたかと思いました。丈夫な扉でよかったです。


「…………」


 そんな元気な気流子さんに対して小坂さんと言えば、じろりと視線だけ一瞬こちらに向けて、すぐに戻してしまいました。構ってくれる気ゼロです。背中から謎の威圧を感じます。怖いです。とても怖いです。怪我人の近くで騒いだからでしょうか。


「……全部聞こえてるからな」

「そっかー、じゃあいくらでもちょっかいかけられるね!」

「なんでそうなるんだよ!」


 本当になんでそうなったんでしょう……その精神の強さに感服するばかりです。どうしてそうなった。さっきまでの凄まじい雰囲気とか何処に行っちゃったんですかね。


「ん……うるさいぃ……」

「ん? ああ、悪いな。でも目が覚めてよかったぜ。大丈夫か?」


 なんて、ぎゃあぎゃあと騒いでいれば、部屋で寝ていた少年が目を覚ましたようです。突然小坂さんの声色が優しくなって恐怖を覚えました。変わり身早っ。


「えっと……?」


 眠たそうにしながら少年は目を擦りつつ、身体を起こしました。

 茶色い髪。茶色い瞳。パット見普通の、ごくごくあり触れた少年。

 でも何故でしょう、私はその彼に強烈なくらい記憶に焼き付いているような見覚えがありました。でも、何処でなのか、何で見たのか、強烈に焼き付いているはずなのに何一つ思い出せないのでした。

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