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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
戦略
32/104

1.嘘誠院音無

 見知らぬ白っぽい髪の女性と、茶色っぽい髪の少年の治療を終えると、動けない(動かせてもらえない)僕を囲んで状況の説明が始まった。

「なんっか、こう、カボチャをドンってしたら台所ごとバキッといったんですだな。不思議なこともあるですだなぁ」

「それでまあ、気流ちゃんが蛙を追い回してた訳なんだけど」

「って言うか酷くない!? 初対面なのにガチホモ乙女とか! 同じ空気を吸いたくないとか!! 僕の扱いってなんなの!?」

「ねー、なんでもいいけど気流りんお腹すいたんだけど、なんか無い? 今ならあんパンで許してあげるよ」

「そういや行きなり飛び出してお前、どこ行ってたんだよ」

「それでですだな、蛙と思ってたやつは実は嘘つきだったんですだ」

「で、この子が木偶と入れ替わっちゃった空美ちゃんね」

「よ、よろしく……おねがいしま……」

「音無なら僕の魅力わかってくれるよね! そりゃそうだよ音無だもん!」

「暁にゃんのバカーッ!! 何もかもが燃えちゃってるじゃん! 気流りんのおやつまで炭になっちゃってるんだけど!」

「……まあ、こんな感じだ」

 分かるか。

 何一つわからないしなんの話かもわからないし。って言うか仙人さんは僕の家軽く燃やしてませんか!?

「もうなんでもいいです……簡潔に一言で纏めてください……」

「居候が増えた」

「それは知ってます!!」

 その後、なんとかちゃんとした説明をしてもらえた僕なのであった。


「えっと……? 空美さんがここにきた理由はいいとして、気流子さんに化けて……?」

「気流子だけど気流子じゃなくて嘘つきなんですだよ。なんっつーですだかなぁ……化ける、じゃなくて……」

「幻覚を見せられたんだよ。幻術師だからね」

 微妙にイライラしながら頭を悩ます仙人さんに猫さんが助け船を出した。さも当然の事のように言うけど何でそんなに詳しいんだろう?

「雪乃は僕の親友なんだよ」

「雪乃……さん?」

「白っぽい髪の気絶してたやつだよ。雨宮雪乃、気流ちゃんのお姉ちゃんなんだよ」

「気流子さん兄弟いたんですか!?」

 てっきり一人っ子だと思っていた。お姉さんがいたんだなぁ。

「……それで、何でその気流子さんのお姉さんは気絶をしたんですか?」

「気流ちゃんが頭突きをしたんだよ」

 頭突き。

「その前に投げられた岩を素手で割ってたですだがな」

 素手で。

「そ、それで、頭突きが凄すぎて、せ、雪乃さんは……」

「けろっ」

「てへっじゃないですよ気流子さん! あなた何やっちゃってるんですか!!」

 とんでもない妹だった。普通気絶するような頭突きを姉にお見舞いする妹はいないと思う。もしかして仲が悪いのだろうか。

「心配しなくても大丈夫だよ、音無君。概ねいつも通りだから」

「デフォでこれなんですか……」

 猫さんの言葉にこれからの生活がとても不安になった。僕、無事でいられるだろうか……。

「それはそうとして」猫さんはそんな僕の心配ごとあっさりと流して言う。「提案があるんだけど」

「む? それは修行の話ですだな!?」

「うん、それ」

「フゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 テンションが一気にパラメーターをぶち破る仙人さん。いや、待て待て待て待て。何だって? 修行?

「空美ちゃん曰く、今の僕たちじゃ“組織”相手に全く歯が立たないみたいだからね。殺されないためには強くなる必要があるよね」

 猫さんは戦う前提で話を進める。いや、その通りなんだけども。確かに殺されないためには対抗する程の強さが必要なんだけれども。

「ついでになんだけど、さっさと力つけちゃって“組織”に乗り込むのはどうかなって」

「はァ!?」

 すっとんきょうな声をあげたのは小坂くんだった。うん、そうですよね。吃驚しますよね。僕もビックリですよ。なんでわざわざ火の中に飛び込むというのか。ついでで言うことじゃないと思う。

「んー、ほら、どうせ戦うならこっちの都合で事が進んだ方が良いんじゃないかなって。突然来られて慌てるよりも、念入りに準備して突撃する方がいい気がするし。それで、適当に制圧して“組織”の『荊様』とやらに直談判しちゃおうよ」

 いいたいことは分かる。分かるけども……。

 でも、果たしてそれは可能なのだろうか。そりやあ、修行してさっさと仙人さんみたいな強さになれるのなら可能かもしれないけど、現実はそうじゃない。そんなに甘くはいかない。

 たとえば魔力ひとつとってもそうだ。僕はそれほど魔力量が多い方じゃない。だから、強力な術を連発することはできない。小細工にも限界があるだろう。そういったものをどうやってクリアするというのか。

「安心して、()()()()()ならちゃんとその辺まで考えてるよ」

 その『だけ』という言い方に少しだけ嫌な予感がした。

 しかし猫さんはそんな僕の気を知ってか知らずか笑顔で話を進める。いや、知らないなんてことはないよな。読心術があるんだから。

「僕の()()()()に特殊なスキルを持ったのがいるんだけどね、無理を言ってそのスキルを()()()()()んだ」

「スキルを、借りる……? そ、そんなこと、出来るんですか?」

「んー、なんか出来ちゃったんだよね。というわけでこれを使って、音無君の魔力の絶対値を跳ね上げようと思うよ」

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