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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
開戦
29/104

8.猫神綾

「だららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららッ!!」


 物凄い勢いで仙人ちゃんは地面に拳を打ち込み始めちゃった。何をしようとしているのかは何となくわかるけど、信じたくない。そんな力技で幻術が破れたら苦労しないと思うんだよね……。


『力技で現実が破れたら苦労しないでしょうに……』

「やっぱり君もそう思う? ……あ」

 気付いたときにはもう遅い。うっかり反応してしまったせいで、その存在は幻覚のなかに溶けて消えていってしまった。こうしてまた、僕は彼女を見失う。

「うるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 一方で仙人ちゃんの拳の回転速度が上がっていた。土煙が上がっていて最早手元が見えない。そして仙人ちゃんの拳が地面を砕きまくってくれるおかげで凄く石やらなにやらごろごろ飛んでくるね!? 幻術よりもこっちのがよっぽど危険だよ……。

「きゃあッ!?」

「よっ、と」

「あ、ありがとうございます……」

「ん、怪我がなければいいよ」

 僕の後ろではそんなやり取りが展開されている。空美ちゃんを守るなんて葉折君、以外と優しくて男らしいじゃないか。普段の気持ち悪いホモっぷりを見せつけるよりも、こういうところを見せた方が音無君も喜ぶと思うよ。知らないけど。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 仙人ちゃんの声は段々気合いの入った雄叫びから、限界を越えつつある悲鳴に変わっていっている。まずいな……そろそろ限界だよね。

 仙人ちゃんはもう全身が真っ赤でこめかみの辺りには血管が浮き出ている。オーバーヒート気味だ。そろそろ発光しそうな熱量がちょっと離れていても十分に伝わってくる。

「……何時まで意地を張ってるつもりだい? 素直に出てくれば良いものを」

 時間がない。仙人ちゃんがそのきっかけを掴めなければ、仙人ちゃんが先にダウンしてしまう。

「見ての通り、仙人ちゃんは真っ直ぐな子でね。よくお世話になってるんだ。君みたいなひねくれ者なんか、仙人ちゃんの相手じゃないよ」

 まだか。

「君の嘘は仙人ちゃんには通じないよ」

 冷や汗が垂れる。もう時間がない。これ以上幻術に囚われたままだと、僕たちが出られなくなってしまう可能性がある。もっと言えば、ここで僕たちが負けてしまえば、あのバカは永遠に僕たちの前に現れないだろう。あのバカは何に意地を張ってるのか分からないけど、頑なに僕たちをこの世界から出そうとしない。もう強行突破しか無いんだけど……。

「猫さんはさっきから何をもがッ」

 一人で喋り出した僕に不信感を覚えたらしい。空美ちゃんが何かを言いかけたけど、葉折君がその口を塞いでくれた。助かるよ。こういうときばっか察しが良くて。

 でも肝心のあのバカはなにも察してくれないんだよね。何がそんなに気にくわないのか。それともそんなに会いたくないのか。後者の方が大きいのかな。

「……雪乃(せつの)」これがダメならもう諦めるしかないだろう。「君がこれ以上意地を張り続けるなら」

 この世界に僕たちを閉じ込めたままにしようと言うのなら。

「僕は、君とぜっ」

 突然重力が強まり、僕は地面に潰れるように倒れた。違う、幻術による圧力だ。やっと反応らしい反応を見せたじゃないか。

 そのせいで仙人ちゃんまで潰れてしまったのは予定外だけど。

「み、つ、け、た! ですだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 さすが仙人ちゃん。圧力程度じゃものともしないね。

 きっかけを掴むことが出来たらしい仙人ちゃんは、ある一点を目掛けて炎で加速する凄まじい回し蹴りを放った。どうやらそこで正解だったらしく、蹴りはガキィンと凄まじい音を響かせ、そしてこの世界にヒビをいれた。

 その直後、ヒビの入った世界は砕けて色の洪水が起こる。その一点に何もかもが吸い込まれて、違う世界が顔を見せる。そう、現実世界だ。

「来るな!」

 立ち上がるとそこは見知らぬ洞窟の前で、見知らぬ少年を庇いながら叫び、石(岩)を投げつける親友の姿があった。

「よう、やっと会えたですだな嘘つき」

 親友、雨宮(あまみや)雪乃(せつの)に仙人ちゃんはそう呼び掛ける。イケメン過ぎて痺れちゃうね。

「黙れ、お前なんか綾の手助けがなければ出られなかった癖に! お前らなんかずっとあのまま寝てれば良かったのに!」

 それは僕も含まれてるんだけどいいのかな、雪乃。

「とりあえず落ち着いたらどうだい? 何を言ってるのか僕にはさっぱりなんだけど……」

「黙れガチホモ乙女。お前とは同じ空気を吸いたくないのよさっさと消えて頂戴」

「…………」

 ごめん、ちょっとスカッとした。

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