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僕ラノ戦争  作者: 影都 千虎
火種
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10.とある観察者の報告

 琴博(ことはく)桜月(さくらつき)、十五歳。

 嘘誠院音無と同い年にして、嘘誠院音無を深く恨む。彼曰く、嘘誠院音無の犠牲者。

“組織”の第一部隊に所属し、心の中で文句を垂ながらも上司の命令には従う忠犬ぶりを見せる。しかしそれは、嘘誠院音無への憎しみと復讐心をぶつけることができるからだろう。彼のエネルギーは嘘誠院音無への黒い感情のみであり、それがなくなったときどうなるかは測定不能である。


 (むらさき)時雨(しぐれ)、年齢不詳。

 黒い感情にまみれた琴博桜月の唯一の癒し。或いは、『囚我(とらわれ)先生』の最高傑作。魂すら造り上げ完成した人造人間である。勿論その手法は禁忌とされている。

 知能は低く、三歳児程度と琴博桜月は評価している。

 好物はロールケーキ。


 風見(かざみ)(じん)、十六歳。

 琴博桜月と同じく、“組織”の第一部隊に所属する。曰く、第一部隊で唯一戦闘を得意としない男。

 その外見は、男とも女ともとれる中性的なものだ。

 恐らく、ケーキを中心とした菓子作りが得意である。或いは、得意にならざるを得なかった。



 動き出した世界と同時に、どこかで“組織”なる勢力が動き出した。


 司令官の指示の元、まずは琴博桜月が嘘誠院音無に接触を試みる。接触は上手くいき、むしろ接触しすぎたきらいがある。そこで琴博桜月は自らの感情の一部分を嘘誠院音無にぶつけた。


 一方、戸垂田小坂、雨宮気流子、猫神綾、月明葉折はそんなことなど露知らず、楽しげな日常を過ごす。雨宮気流子が頻繁に探している『ケロ君一号』に対する猫神綾の蛙嫌い。わざとやっているようにしか見えない光景であった。


 月明葉折は“組織”から送り込まれたスパイであり、戸垂田小坂にジャージを借りると報告のため、“組織”へ向かう。尚、その際化粧をせずにまともな格好をすれば、彼はなかなかの美形であると言うことが判明した。“組織”に行くに当たって服装を変えている辺り、女装していることは“組織”側に伏せていると予想できる。或いは、女装は潜入のための変装なのかもしれない。しかし、そうなのだとしたら戸垂田小坂に変装を解いた姿を見せると言うのも、辻褄が合わない気がするが。


 こうして月明葉折も不在となったとき、“組織”より刺客が送り込まれる。


 作品No.1、『Alice(アリス)』。彼女もまた『囚我先生』の作品である。紫時雨とは性能がやや違うようであるが、強さとしては申し分無いのだろう。

 彼女は嘘誠院音無の闘争心を掻き立てるため、戸垂田小坂を土で固める。時間が経過すると共に徐々に全身が固められ、やがて生き埋め状態となり窒息死する、という術だ。嘘誠院音無を殺してはならないが、その他はどうでも良いと考えたのだろう。

 嘘誠院音無はそれを受け、彼女を倒すべく戦う。


 その頃、自らの人格をどうにかしようと試みていた黒岩暁は、思っていたよりも楽に人格がどうにかなってしまったことに釈然としない気持ちを抱いていた。

 もう片方の人格のことを『狐』と呼んでおり、それが彼女ではないことは明らかとなったが、その『狐』と黒岩暁がどのような関係で、またどういった経緯で黒岩暁の人格となったかは不明である。


 隣の山にいた黒岩暁は、山を降りると雨宮気流子に催促される。

 言われるがままに黒岩暁が嘘誠院音無の家へと向かうと、そこには『Alice』と闘い瀕死となった嘘誠院音無がいた。

 黒岩暁は、それをみるなり『Alice』を破壊する。その手応えから、『Alice』が人間ではないと理解したようだ。


 その後、黒岩暁は瀕死の嘘誠院音無に『戸垂田小坂を助けろ』という旨の言葉を受け、家の中へと向かう。


『Alice』は邪魔をされないようにと、他に二つの木偶を送り込む。猫神綾と、雨宮気流子、戸垂田小坂の二方向だ。


 猫神綾の方に向かった木偶は呆気なく猫神綾に破壊された。黒猫となった彼女だが、それなりの力なら扱えるようだ。

 自らの読心術で状況を誰よりも把握している猫神綾は、常に紛れ込んでいるらしい第三者を探しつつ、怒りをぶつけ、心配しながら雨宮気流子の元へと向かう。


 戸垂田小坂、雨宮気流子といえば、最初は何時ものような和やかな会話を交わしていた。しかし、そんなことをしている場合ではないと分かると、態度は変わっていく。戸垂田小坂は死への恐怖に囚われていた。

 それを察知した雨宮気流子は、戸垂田小坂に謝罪をすると魔法を使う。しかし魔法を使うことに何かあるのか、彼女の体調はとても悪くなったようだ。

 雨宮気流子の魔法は成功し、戸垂田小坂は『Alice』の魔法から解放された。

 その直後、黒岩暁が現れる。


 ここで、黒岩暁は雨宮気流子がここにいることに疑問を抱いたようだ。


 ところで、『Alice』が向かわせたもう一体の木偶はどこへ消えてしまったのだろうか。



 追記として、新たに判明した彼らの詳細をここに記す。


 嘘誠院音無。

 召喚術を遣い、自らを『道化な召喚士』と呼ぶ。

 彼には召喚獣がおり、その材料となったのは実の兄であった。

 彼の知られたくない過去はこれに直結するものであると予想できる。


 月明葉折。

 前述した通り、“組織”から送り込まれたスパイである。

 月明家の長男であり、『甲骨(こうこつ)』と『五樹(いつき)』という弟がいる。また、『九十(くとお)姉妹』とも何らかの関係がある模様。

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