10.とある観察者の報告
嘘誠院音無、十五歳。
彼はとある山の住宅地に一人で暮らしている。
家族は居ただろうが、今は不明。一人で暮らす時間が長かった為か、若干人との関わりかたに不馴れな様が出ている。恐らく、他人に違和感を与えることになるだろう。
表情を表に出すことが苦手なようで、感情のコントロールもまた不向きだ。切っ掛けさえあれば、感情が爆発することが有りそうだ。普段は死んだ魚のような眼をしている。
ほの暗い過去があるらしく、猫神綾に露見すると表情を変えた。知られたくない過去、という認識で良さそうだ。
猫神綾、十七歳。
土砂降りの雨の日に嘘誠院音無の家に訪れる。
自分の家に帰ろうとしていたようだが、地形が酷似していたのか、或いは彼女の家が幻想だったのか、彼女たちの暮らす家はそこには存在しておらず、嘘誠院音無の家に居候をしながら家を探している模様。
読心術が使える。その事を武器に戦っていたこともしばしばあるようだ。また、初対面の相手の名前を読心術で知って言い、相手を驚かせることを楽しみとしている節もある。
氷を遣う魔術師で、左腕がない。
猫に憑依することが出来る。
どんなときでも笑顔でいることが多い。
雨宮気流子、十五歳。
猫神綾が嘘誠院音無の家を訪れた数日後、彼女も家を探して嘘誠院音無の家に訪れる。
知り合いである猫神綾を確認し、嘘誠院音無の家に留まることにしたようだ。
蛙と仲がよく、雨の日は蛙と合唱している。その姿はとても十五歳には見えない。
また、魔法が使えるようだが、本人はあまり遣う気が無い模様。力が強いため、そちらで物事をなんとかするようだ。
誰かを助けると言うことに、非常に強い執着を持っている。
月明葉折、十六歳。
嘘誠院音無に会う用事が会ったらしく訪問。そのままちゃっかり居候として居座っている。
嘘誠院音無の事を恋愛的な感情として好きであり、振り向いてもらうために己を着飾っている。しかし男である。
猫神綾の事を嫌っているらしく、彼女とは度々衝突を起こす。衝突の理由の大半は月明葉折の暴言である。
今のところ、嘘誠院音無になんの用事があったのかは不明。また、何で彼を知ったのかも不明である。
黒岩暁、年齢不詳。
猫神綾や雨宮気流子と同じ様に、嘘誠院音無の家の辺りに自分の家があったと記憶して訪問。それまでずっと森の中にいた彼女は、嘘誠院音無の家に保護という形で居候することになる。
仲が良いのは今のところ雨宮気流子のようだ。
チャイナ服を常に身に纏っている少女で、「ですだ」等不思議な口調で話す。
岩と炎、二つの属性を扱うことが出来、更にかなり力が強い。樹木程度では簡単にへし折られてしまうし、警戒する人間を拳だけで大怪我を負わせ気絶させることも容易い。また、氷での拘束ならばそれが魔法であろうと腕の力で破壊可能。
彼女は多重人格者であり、主人格は他の人格から集められた破壊衝動に迷惑しているようだ。助かりたいと、彼女自身思っている。
戸垂田小坂、十六歳。
嘘誠院音無の家の隣で一人暮らしをしている。
彼もまた、家族の存在は不明。しかし嘘誠院音無とは違い、人と接することに苦手意識は無い。社交的な人間のようだ。
過去に出会った『かこね』という少女の事をずっと想っているらしく、少女と似ているらしい猫神綾を見ると困惑した表情を見せた。
雨宮気流子に苗字をいじられ、怒ったように突っ込みを入れるものの、彼女自体に嫌な感情を抱く様子は今のところ無い。なんだかんだ、楽しいのだろう。
治癒術を使うことが出来、黒岩暁に助けを求められると、嘘誠院音無ら四人の治療を行った。
医者になることが夢らしい。
世界は、嘘誠院音無の家に猫神綾、雨宮気流子、月明葉折、黒岩暁の四人が揃ったことで動きを見せた。
黒岩暁の他人格の暴走により、嘘誠院音無の家に大量の岩が降る。雨宮気流子が奮闘するものの、黒岩暁以外の四人が意識を失うこととなってしまった。
尚、黒岩暁本人もその際他人格と戦っており、他人格が出そうとしていた炎に岩をぶつけて消そうとした。力加減に失敗し、岩が降ることになってしまったが、家が炎に包まれるよりは良かっただろう。
その後、意識を失った四人は黒岩暁により、隣の戸垂田小坂の家に運ばれる。そこで四人は治療を受けることになったが軽傷だった模様。
それがわかると、黒岩暁は嘘誠院音無の家へ戻る。
戸垂田小坂が見守るなか、猫神綾が一番に目を覚ます。そこで二人は細やかな約束ごとを交わした。
その後、猫神綾は「散歩に出る」と言い、真実を確かめるため黒岩暁の元へ行く。その後、二人は森の中へ入っていった。
森の中で、猫神綾は黒岩暁に自分の推理を披露する。それと同時に黒岩暁を追い詰めるが、他人格になった黒岩暁に返り討ちにされてしまった。そこで猫神綾は重傷を負うが、死には至らず。黒岩暁はその場を去り嘘誠院音無の家へ戻る。
一方、戸垂田小坂の家では、雨宮気流子、月明葉折が目を覚ましたあとに嘘誠院音無が目を覚ます。そこで彼らが雑談をしていると、一匹の黒猫がやって来る。それは、瀕死状態になった猫神綾だった。
黒猫は雨宮気流子に依頼すると、自分の身体を戸垂田小坂の家まで運び治療をしてもらう。その際嘘誠院音無が感情を爆発させるが、月明葉折の手で強制的に落ち着かされる。また、雨宮気流子の手によって黒岩暁も連れてきて貰った。
全員が揃ったところで猫神綾は話を始める。全員が揃っている方が、黒岩暁が暴れにくいと考えたのかもしれない。そこで彼女は全てを暴露した。
全てを暴露された黒岩暁は窓から飛び出していってしまう。
今後、動き出した世界に対し、彼等がどんな動きを見せるのか、引き続き観察し記録していこうと思う。