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「1-A牧嶋ですー呼ばれたんで来ましたー。でもってちゃんと和田連行してきましたから入りますよー」


 …なんとも滅茶苦茶な。いいのかそれで?

 と、普通に思うのだが、いいらしい。

 躊躇って退けた腰を抱くがごとく問答無用で室内へ。


「牧嶋…もう少し対面とか外面とか」

「コイツに言うだけ無駄だろ。とりあえず、和田を連れて来れたことだけは褒めてやるわ」

「あざーす」


 牧嶋(さすがに覚えた)は持ち上がりだそうだから、それゆえの馴れ合い? 馴染み? いわゆる”外部”な水流にはよく分からないのだが、室内にいたのは式で壇上にいた生徒会長と風紀委員長だった。


「とりあえず、いろいろ説明するから長くなるんで、座ってね」

「しづは立ってろ」

「なにそれ酷ぇ!」

騎士(ナイト)認定だから、立ち位置そうだろ。控えてろ」

「さらに酷ぇ…」

「…この脳筋ふたりは放っておいて、実務的な話をしましょうね。まず、君は強制的に生徒会入り。これは権力で護る為でもあるから、拒否権なし。ついでにこのバ会長の手綱を取ってくれれば尚良し。本当は風紀(ウチ)に欲しかったんですけど、あんまり肉体派でもなさそうだし、外に出さずに囲っておくなら生徒会の方が都合がいいので妥協しました」


 場所は生徒会室なのに、場を取り仕切るのは風紀委員長。何故だ。どんなチカラ関係だ。


「…なんか、突っ込み所満載なんですけど」

「牧嶋からはなにも聞いてない?」

「ウチの兄の話になったら、ぐだーって挫けて、「ひとりで動くな」って言われましたが、理由は聞いてないです。ここに連行されたのもソレが理由なんですか?」

「牧嶋、一番面倒くさいところをスルーですか? いい根性ですねぇ」


 にっこりと。柔らかな笑みが怖い。腹黒認定していいだろうこのヒト。


「や! や、だって俺だって詳しくは知らないんだし! 間違った知識与えるよりはココ連れてきた方がいいでしょ?」

「とりあえず君は風紀(ウチ)ね。放課後は部活行っていいし、終わったら帰っていいけど。放課までは仕事するように」

「何故にー!」

「問答無用。文句があるなら兄上にどうぞ」

「だから何故に兄?!」

「和田と同じ。てか、そんくらい考えろ持ち上がり」

「あ-…そっか俺もですか」

「ですよ。無自覚とはなんともはや」

「いやまぁ、俺は自分でどうにかなるだろうし。てか、俺を押し倒そうなんて勇者はいないでしょ」

「面倒事を起こすな、と言ってるんです。押し倒されて乗っかられる分には問題ないのかもしれませんがね。君の身の安全も貞操もどうでもいいです。むしろ過剰防衛が懸案事項で」

「…宇佐見さん、ありすさん怖い! 中等の時よりグレードアップしてない?」

「その呼び方。やめろと何度言いましたかねぇ…?」

「ごめんなさいすいません! モノ投げないでーっ!」

「皐月、和田が怯えてるからやめとけ」

「はいはい。脳筋は脳筋同士仲良くしていてください。てか、邪魔すんなさせんな」

「だから怖ぇっての…」


 いやはやまったく、綺麗に整った顔でにっこり笑っているのに、実に怖い。


「とりあえず馬鹿は放っておきましょう。で、和田くんは、さっきも言ったけど、生徒会入り確定。これは悪いけど問答無用ね。貞操の危機を含む…ってかそれが主眼なんだけど、身の安全をできるだけ護る為だから、放課後は会室にこもってて。牧嶋は自宅通学だし部活もあるから放課後は無理なんだけど、教室では張り付かせるし、移動先には牧嶋(コレ)が誰か選ぶでしょう」

「それはなんか、そんなことを言ってたような…」

「おや、牧嶋にしては気が回ってたんですね。とにかく、君になにかあればそれは風紀(ウチ)の仕事になるから、面倒事増やさないでね。ついでにこのバ会長の手綱取って事務処理よろしく」

「…身も蓋もねぇな」

「取り繕う必要もないでしょう。良くも悪くも内部事情に通じてもらわなきゃなんだから。とにかく君は、君自身には全く責はないんだけど、お兄さんがウチの体育会系…特にサッカー部の恨み買ってるだろうから、放置できないんだよね」

「兄…ですか」

「うん。和田水渡(みなと)、だよね? サッカー部で、今年大学行った」

「そうですけど…」

「去年の夏冬とも、ウチのサッカー部、あそこに決勝進出阻まれてるんだよね。逆恨みに近いライバル意識とでも言えばいいのか…。だからなんで自分に? と思うのは当たり前なんだけど、割と当たり前じゃないこともここじゃ起きかねないから、予防措置。自衛にも限界あるだろうし、きみ自身が荒事に向いてそうでもないし。面倒だから護られてて」

「…だから皐月お前、面倒面倒って、身も蓋もなさすぎ」

「事実を端的に説明してるだけですよ。しかもこの容姿。サッカー部の件がなくても危ないでしょうが。これで何も言わずにおいて強姦輪姦されでもしたら寝覚めが悪い」

「自分の為かよ」

「八割方はそうですが、まっとうに心配もしてますよ。テメェらは身の危険つったら殴る蹴るな暴力だけだろうがな、こちとらそれだけじゃねぇんだよ」


 惚れてもねぇ男に掘られてたまるか。


 ケッ、と吐き捨てるがごとく言う。…コレが素か。腹黒確定。


「あぁ、あと寮の同室者は持ち上がりで内情は分かってて、カノジョ持ちだからきみを押し倒す危険はまずない安パイで、Dだからガタイもいいし押しの強い奴だから。寮内ではソレと一緒に動いてね」

「…どれも拒否権はないんですよね」

「うん、ないよ」


 下手に逆らってこのヒトを敵に回したくはない。貞操の危機より恐ろしい目に遭うだろう確実に。内心でアーメンと唱えて十字を切るか、なまんだぶと手を合わせるか。とりあえず、ため息ひとつ。

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