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誰かが、欲しかった。
自分をちゃんと見てくれるひとが、欲しかった。
自分の子供だとか家族親族だとか。級友とか。そんな避け切れないところを更に取り巻く『その他諸々』が、とても空虚で。
だから、肩書きではない『なにか』が欲しかった。
そしてそれがとても難しいことも、分かっていた。そうやって、多寡はあるにせよ自分になんらかの想い――情といってもいいだろうそれを向けてくれるひとのことを、『その他諸々』と思ってしまう自分には。
…とっくに分からされていた。
だけどその『なにか』を与えてくれるひとだって、誰でもいいわけではなかった。
自分が『欲しい』と思わなければ先には進めないのだ。上手くゆくにしろ、それまでのすべてが壊れるにせよ。
では、じゃあ、どうすれば?
和田水渡は、ずっとそう考えていた。
けれど答えは出ないまま、高校に入学し、新しい環境を得た。
それがどう作用するのか、水流自身にも分からない。ただ、流されるままだろう、とは思っていた。