【揺花草子。】<その1231:ニセコイ。>
【揺花草子。】<その1231:ニセコイ。>
Bさん「プラシーボ効果ってあるじゃないですか。」
Aさん「あぁ・・・思い込みの・・・。」
Bさん「そうそう。
発音によってはプラセボ効果とか言われたりしますけど、
日本語では『偽薬効果』って言われますね。」
Aさん「うんうん。」
Bさん「さる病気に罹った患者さんたちを半分ずつのグループに分け、
一方のグループには普通にその病気に効果があるとされる薬を処方する。
で、もう一方にはその薬ですよって言いつつ、ただブドウ糖を固めただけの
ニセモノの薬を処方する。」
Aさん「うんうん。」
Bさん「で、しばらく処方を続けた後で快復状況を調べると、
どちらのグループも快復した割合に対して差はなかった・・・って言うね。」
Aさん「うんうん。ニセモノの薬も本物と思い込んで飲むことで
本物と同じような効果が出ちゃうって言うアレだよね。」
Bさん「まあつまりは『気の持ちようですよ』ってコトですよね。」
Aさん「ものすごく乱暴に言っちゃえばね・・・。」
Bさん「で、そんなプラシーボ効果ですが。
阿部さんにも試してもらいたいの。」
Aさん「えっ・・・ぼくが?
ぼくが、なに? ニセモノの薬を飲むの?」
Bさん「ううん、そうじゃなくて。
あのね、毎日寝る前に、お布団の中で、ちょっとだけぼくのことを考えて欲しいの。」
Aさん「寝る前に・・・きみのことを?」
Bさん「そう。その日ぼくと交わした会話。ぼくが見せた笑顔。ぼくの振る舞い。
明日のぼくのこと。
そう言うのを、ちょっとだけ思い起こしてから、眠りに就いて欲しい。」
Aさん「は・はぁ・・・。」
Bさん「そう言うのを、1ヶ月ぐらい続けて欲しいんだ。」
Aさん「お・おう・・・。」
Bさん「そうすればいずれきっと阿部さんは不意の拍子に
ぼくのことを考えるようになると思うの。
電車で移動中とか、ひとりの時とかに。」
Aさん「まあ・・・そう、なるかもねぇ。」
Bさん「そうすればきっと阿部さんはいずれ
ぼくに恋してるって思い込むように
なるんじゃないかなあ?」
Aさん「そこまで行ったらもう普通に恋だろ。」
しないですけど。
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