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碧翠~Sacrifice~  作者: 椛
7/9

~six~ 残酷な始まり

Artemisによる生け贄制度。

そんなの冗談だと思っていた。


だっていい人たちだったから、


でも会話なんてそこまでしてない、ほんの一瞬。

一炊の夢。


だから今頭真っ白なんだよ



『今から、生け贄制度会議を開始します』


唖然とする私を見ず、言の葉を放つ。


「早速ですが、今年度の生け贄を発表したいと思います」


ぐるぐるぐるぐる。


思い出す光景と言葉が混ざって視界が揺れる。


いい人たちだったのは、もしかしてうそ?


「今年度、輝く生け贄に選ばれたのは__」


今のこの状況が真実?


裏の顔?


わからない。わからない


「転入生の進藤 緑さんです。」


わからない、わから…な…?


え、なんて?


「今年度の生け贄は進藤 緑さんです」


生け贄は、私。


私?


私。


なんで?


「進藤 緑さん。挨拶を」


舞台の上で立ちぼうけ。


なんで私が?もしかして、そのためにこの学園に…__


その場にへたり込む


すると上から数分前とは違う神崎 彩華の声が聞こえる。


冷ややかな棘のある声。


「もしかして、本当に自分に何かあると思ったの?自分は特別だと、そう思ってこの学園に来たの?」


言葉が刺さる


生徒は私を見て笑う。(わら)う。


「あははっ、マジで〜?自分に何か秘めてるとか思っちゃったの!?まあ、ワケありの転入生には違いないけど!」


可愛い西篠の声。


「…それとも、疑うことを知らなかったのかしら」

瀬尾が言う。冷ややかに


「ふふっ、なんて素敵なお嬢様」

花畑が言う。嫌味を込めて


男子軍は馬鹿にしたように笑っている。


小田原と萩麻は興味がないようにこっちを見ない。


ああ、私は。生け贄のためにここに来たんだね。


見えない仮面の裏、今すぐ全身をかきむしりたかった。


そして神崎が言う。


「最初の授与です。去年生け贄に選ばれた海原 咲月さん。前へ」


目が見開かれる。海原 咲月。

それはあの優しい少女


彼女が去年の生け贄…?


やたら強引に引っ張り出された咲月を見つめる。


咲月は震えて、なにか話してる。


「ほら海原。やれよ。生卵10発投げつけるの!」

ギャハハハと神薙が笑う。


「ほら〜、咲月先輩〜!やらないと、もう一回生け贄ですよ〜?」


なんてゲスいんだ。

つまり、私に生卵を投げつけることは、初めのいじめ。


それを去年生け贄だった咲月にやらせようとしてるんだ。


咲月も去年はこの立場だったであろう。


その受け側を今度はやる側になる。そういうことだろう。


生け贄だった人が、生け贄を売る。


精神が崩れそうなくらい残酷で冷徹。


それが、Artemis。


初めて知ったArtemisの恐ろしさを


「私…っ、できません…」


驚いた

こんなにも強い人がいるのか


すると、西條が言った。


「ああ、そっか〜。さっき職員室近くで話してたもんねぇー。Artemisの悪口♡」


咲月の顔色が変わる

もしかして、聞かれてた!?


「だからできないんだね。咲月ちゃんは、優しいんだね」

花畑のその口調は優しく天使のようだった。

でもその目は、人を追い詰める目。


「海原目立つことすんじゃん!おもしれーな!!」

うるさいのが(神薙が)叫ぶ。


そして、西條がまるで死にかけているクズ虫を見ているような目で言った。


「もう一回、生け贄やる?」


ざあっと血の気が引くのがわかる。


最低だこいつら。


悪魔


その瞬間、頭の上でグシャという音と、ねっとりした冷たい物が落ちてくる。


生卵…。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいいいい!!!」


叫びながら私にどんどん投げる。


それを全て受け止めた。


その瞬間、私は、生け贄と成った。



意識が遠のいて、視界がぼやける。


その場で倒れこみ、笑い声が反響する。



でも私は知った、1人、異様なオーラを持った悪魔がいるのを。


その子は夢に出てくるような笑みを浮かべて私を見つめた。


綺麗な顔。

でもその周りには妖艶に輝く闇の光


比喩的なものじゃなくて、もう私にはそう見えたの


今後、私を苦しめるのはそいつで間違いない。



でも、私は




目が覚めた時、

それが誰なのか覚えていなかった。




閲覧ありがとうございます!

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