~three~ その秘密。
「聞きたいことあるんだけど、Artemisって…なに?」
少女は一瞬ぴくんと反応したがすぐに優しく微笑んで言う。
「転入生だからしらないんだね。…Artemisって言うのはね、彩麗学園の特別生徒制度なの。学園のArtemis信者はArtemisの革命とも言ってるんだけどね」
最後は少し笑って言っていた。
うん。笑っちゃうわ。
くだらなすぎるでしょ
「最近の子供は敬う…従う気が足りない。なぜなら、上下関係を必要以上に学んでないから。そう考えた学園理事長が作ったものなの。だけど、大人に敬う気持ちなんてとっくに理解しているもの。それを行動にしないだけで…、だから同じ学園の生徒で…上の人がいたら?そう考えて作られたものなの。分かる?」
「うん、なんとなくだけど」
つまり、今の学園の理事長はもっと学園をよくするためには、根上の人を敬う気持ちが大切だと思った。
しかし、今更『根上の人を敬え、従え』なんて言っても今の時代の子供が聞くわけない。
それに「そんなことわかってる」とか言うに違いない。
つまり、頭の中でわかっていてもそれを行動に移すのは難しい、ということだろうか
先輩後輩関係は慣れてるだろうが、大人に対してはまた態度が違ってくる。
でももし、同い年に上下関係ができたら?
よく思い出せばArtemisは1年生~3年生までいた。
それは、そのためであろう。
さっきはくだらないなんて思っちゃったけど、割としっかりした話じゃない。
まあ正しいかって言われたら、ちょっと微妙なところなんだけど。
「まあ…私はね、あんまり好きじゃないんだけどねArtemis。でもArtemisのおかげで学園は‘常識のあるいい子’になったのは確かになったし…でも。」
朝なのに不気味なほど静かで、その女の子の声だけが響く。
「そうなったのは、その計画のおかげじゃない。狂ってる。Artemisは…」
私はいつのまにか食い入るように話を聞いていた。
女の子はピタッと止まり、くるっと振り向いて言った。
「生徒従順計画の名を借りた、生け贄制度を行っているの」
…は?いま、なんて?
「い、生け贄制度って…」
まず生徒従順計画って名前でさえ怪しいのに、生贄制度とか次元が違うでしょ…
「みんなは…その生け贄になりたくないから…。Artemisに従うの。こんなの間違ってる…狂ってるよ…」
…職員室案内してもらってる最中ですよね?
やばいよこの学園…。
「それで…生け贄になった人はどんなことされるの?」
恐る恐るきいてみる。
「…全校生徒からいじめられる。そして心を病むまで追い詰められる」
もうだめだこんなとこに転入すべきじゃなかった。
この話聞くだけで病みそうなのに…
「だからっ!…__ッ!?」
するとその女の子は、先生と思われる人とぶつかって転けてしまった。
「いたた…わっ、ごめんなさい先生」
申し訳なさそうに謝る彼女に対して、先生は割とドライに
「なんだ海原か。もうすぐ始業式始まるぞ。早く教室に戻りなさい」
「あ、はい。あの…こちら転入生の方だそうで、職員室を案内していたんです」
「そうか、わかったから教室に戻りなさい」
本当ドライだなあ…こんな優しくて可愛い子に…。海原さんだっけ。
それでは と、立ち去ろうとする彼女にこう言った。
「う、海原さん!私、三年生の進藤 緑っていうの!あなたは?」
「あ、えっと、二年生の海原 咲月です。三年生だったんですか。ごめんなさい、私知らなくて…タメ口で話してしまって…」
「いいって!知らなかったんだし、またよろしくね」
すると咲月は嬉しそうに、はい!といってその場を去った。
「それじゃあ進藤。式場所に移動しよう、転入生として紹介するから」
まじか…緊張するな。
私は緊張を隠して先生に着いて行った。
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