二度目の転生
次第に身体の自由が戻ってきて目に光も入ってくる。そして目に写った光景は青い海原だった。身体の感覚が戻ると全身に冷たくまとわりつくものを感じた。
今回転生したのは水の中のようだった。いきなり水に放り込まれたので戸惑い、水を飲んでしまったが、それが塩辛いことから海だとわかる。力を振り絞って海面から顔を一瞬出すが、背中のリュックサックが重く海に引きずりこまれる。もがき顔を海面から出そうと頑張るが、空気を身体に入れるのも辛い状況だった。
泣く泣くリュックサックを肩からはずし海中に捨てる。そうすれば泳ぐのは楽になった。落ち着いて海面に顔を出して周りを見渡す。すると360度海が広がっており、船はおろか、島影すら見えなかった。
途方に暮れる。前回の森の中より酷いんじゃないか。だけどこのまま帰ったんじゃ負けた気がするから試せることは試してみよう。
まずはスキルの使用からだ。仰向けで背泳ぎの形となり口を水から出す。そして水魔法と思い浮かべると呪文が頭の中に流れ込んできた。呪文は三種類あったので三つの魔法が使えることがわかった。一番簡単そうなのを試してみる。
『水を与えたまえ』
【水生成】
指先に違和感を感じた。水の上に出すとチョロチョロと水が出ている。海水ではなくなにもないところから水が溢れているようだ。
それを口元に持ってきて飲んでみるとただの水であり、先程から口に入ってくる海水の味を打ち消してくれた。
まるで魔法というか本当に魔法なんだと思わず感動したがこれができたからといって助かるわけではない。少し延命ができるだけであろう。
今度は鑑定の能力を試してみよう。海の中に何か生物はいないだろうか? 息を吸い込み潜る。
海の中は青く輝き綺麗だが、海底を見ることはできなかった。それなりの深度があるのであろう。魚は何種か見ることができた。1つに注目して鑑定と思い浮かべると頭の中に情報が流れ込んでくる。
『種族名 イワシ
食用 可
一般的な食用の魚』
情報これだけかよ。鑑定Lv3必要か? もっと低くてもいいかもしれない。そうしたら他の願いに割り振れる。
それに食用の魚といわれても食べる手段がないから意味がない。水魔法を試してから神様の元に戻ろう。
『水よ集まり飛んでいけ』
【アクアボール】
大きな水の塊が目の前にできて遠くまで飛んでいった。速度は自転車くらいだろうか。当たったらちょっと痛そう。もう1つは
『水よ敵を穿て』
【水弾】
目の前に小指の太さくらいの水が浮かび上がり直線に飛んでいった。こちらは1つではなく次々と生成され発射される。速度は一瞬でかなりの距離を進んでいるので速いことはわかるが、遠近感がつかみにくいので詳しいことはわからない。
とりあえず試したいことは試せたのと、おそらく着衣水泳でここまで長く泳いでいてもこれといった疲労がないのは身体強化のおかげであろう。だが陸地までは泳げる気がしないので帰ろう。
『クーリングオフ』
視界は白に包まれた。