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神様と転生ボーナス

 目が覚めると白い空間にいた。床も白だし天井、壁も白である。しかもこれといった家具もない。

 俺はばあさんのカートを持ち上げようとして道路にいたらトラックに跳ねられたんだっけ。ここは病院って感じでもないしどこなんだろう。

 てかあの状況じゃ死んだと思うし死後の世界なのかな。そうしたらどうすればいいんだろう。

 この空間には外に出るためのドアや窓もない。どうしたもんかと悩んでいると突然目の前の空間が歪み一瞬のうちに人が現れた。


「目が覚めたか。記憶はどうじゃ? 名前は覚えてるかのう?」


 現れたのは白く長い髭が目立つ紺の着物を着たじいさんで、丸い顔に丸い腹の雪だるまを思い浮かべるような体型だった。頭には毛が無いためにこの部屋のなかでは輝いて見える。


「じいさんは誰だ? そしてここはどこだ? 俺は、えっと、……橘 斎?」

「ちゃんと覚えているようじゃな。儂は神じゃ。お主が住んでおった丘の中腹に神社があったじゃろ。そこに祀られておる神じゃ。主に人間の生活を見守り助けてるのじゃ」


 神様らしい。確かに丘の中腹に神社があった。町会の夏の夏祭りの会場にもなっていたし、新年は町内の人の大部分が初詣に行く。そんなご当地の神社があった。

 だけど俺が何でこんなところに神様と一緒にいるのかはちゃんと説明してもらいたい。


「信じる要素は無いが、じいさんが神様だとしてここはどこだ? そして何で神様なんてものに俺は会っているんだ?」

「言いにくいんじゃがお主は死んだんじゃ。トラックに跳ねられての。それでここは霊の集う空間の一部じゃ。少々お主は隔離させてもらっとる」


 その話を聞くと記憶がよみがえった。身体は震え上がり、全身から汗が流れ出るような感覚に襲われたのだ。

 身体を抱えて震えていると頭を撫でられ次第に震えが止まっていく。撫でてくれたのはじいさんだった。


「辛いことを思い出させてしまってすまんのう。だがお主がここにいる理由に繋がるのじゃ。落ち着いて聞いておくれ」


 黙って俺は頷く。


「お主が助けたばあさん。あれは人の命、寿命を吸いとることを覚えてしまった悪霊じゃ。目の前で死んだものの残った寿命を己の寿命に変換してるのじゃ」

「それじゃあ、俺はあのばあさんに殺されたのか。生き返らせることはできないのか!? あんた神様なんだろ!」

「すまんが肉体の損傷が激しくての、すぐに霊体は離れてしまった。そうなると儂だけではなんともできないのじゃ。もともと土地を見守る土地神じゃからの。専門が違うのじゃ。あの悪霊も排除したいんじゃが上手くいかんしの」

「それでなんで俺はここにいるんだ? 俺はどうなるんだ!?」


 殺されたと聞いて憤りを感じた。怒りの矛先は目の前にいるじいさんだ。神様ならなんとかしてほしい。どうにもならないというが、じいさんが悪霊を放っておくのが悪い。他の神に頼んで生き返らせてくれてもいいじゃないか。


「それでじゃな、ここにお主を隔離しているのはな、気の毒じゃから記憶を残したまま他の世界に飛ばしてやろうかと思ってるんじゃ。第二の人生ってことじゃな」


 気の毒だからって


「それだったら元の世界にこのまま転生させてくれよ。そうすれば問題ないだろ!」

「それは矛盾が多くて無理じゃ。死んだはずの人間が生きとることになる。この齟齬の修正が儂だけでは直せぬ。その代わり転生する際に十の願いを叶えよう」


 ダメなのか。他の世界に転生するしかないのか。だけどこの願いを上手く使えば転生先では殺されることなんて無いのかもしれない。それだったら物語の主人公のような最強の力をもらおう。


「願いはなんでもいいんだな。だったら」

「ちょと待て! 選べる願いはカタログがある。この中の光っているものから選んでくれ。ここから十じゃ」


 選べる願いが決まっているなんてはしごを外された気分だ。そしてそのカタログを渡されたがまるで辞書のような厚さだ。適当に開いてみると各々の願いの名称と説明が書いてある。先ほどは辞書のようだと思ったが、正しくは辞書そのものだ。願い辞典とでも呼べばいいだろうか。

 開いたページはチで始まる願いで

『【地域の英雄】【地域の騎士】【地域の剣豪】【地域の師匠】【地域の番長】【地域の薬剤師】【地域の勇者】……』

 と何故か地域のと付いたものばかりのページだった。

 また適当にページをめくる。今度はマのページだった。

『【魔法剣士】【魔法使いLvX】【魔法のある世界】【魔法の鍵LvX】【魔法の効果増強LvX】【魔法の才能】【魔法の秀才】……』

 確かに転生するなら魔法は使ってみたい。だけど必要な願いは多くなりそうだ。とりあえずこの【魔法のある世界】、【魔法の才能】の願いは必要そうだし、【魔法剣士】とかの願いも欲しい。

 パラパラと他のページを見るが選択肢が多すぎて決めきれない。しかも各項目に更にレベルというものが存在するものがあった。じいさんに聞いたところレベルを1上げるのには願いが1つ消費されたことになるそうだ。


「悩んどるのう。それならばこんな組み合わせはどうじゃ? おすすめじゃぞ」


 浮かび上がったのは次の願いだった。


『【憑依転生(赤ちゃん)】【言語習得Lv1】【地域の勇者】【魔力生成Lv3】【魔法の才能】【鑑定Lv1】【身体強化Lv2】』


「これなら魔法も使えるし身体強化によって体術も使えるかもしれんのじゃ。どうじゃ?」

「この【地域の勇者】ってのはなんだ。さっき他にも地域のって付いた願いがあったが」

「これは儂の治める土地限定で強い加護を与えるんじゃ。それに他の地域に行っても多少弱くなるが加護はあるので一般人よりは強いぞ。それに産まれる土地も儂の治める土地というサービスつきじゃ」


 要は地域限定の勇者か。しかもこのじいさんに紐付けされた。冗談じゃない、なんで転生したあとも神様の使いっぱしりをしなきゃいけない。


「却下だ。とりあえずこの【地域の勇者】は消させてもらう。あと年齢はそのままがいいから【憑依転生(赤ちゃん)】じゃなくて【召喚転生(青年)】にするぞ」

「本当にそうするのかの? もしかすると結構危ないんじゃがのう」


 何が危ないっていうんだ? こんな悪霊も退治できない神様の下になんていたくない。そして空いた願いは何を入れよう。何かもっと強くなれそうな願いはないかな。どうやって探すか。


「その本を閉じて分類検索と思えば分類毎に分けられるのう。さて何を探すのじゃ?」


 心の中を読まれた気がした。しかし文句を言うでもなくじいさんの言う通りにしてみる。すると一瞬、本が輝き厚みが増した。

 表紙をめくるとさっきまではなかった目次のページが増え、大分類の中に小分類が書かれていた。目次に書かれている大分類を指で追ってみると

【転生】【知識】【技術】【道具】【肉体】【場所】【運命】【デメリット有】

 最後のが気になる。だけど他のも気になる。

 それぞれの項目を流して読んでみると【転生】は転生時の条件とかでどのように転生するかが多かった。【知識】【技術】【肉体】はそのまま知識が増えたり、スキルを会得したり、肉体の強化がされたりする願いだった。【道具】は転生時に初期装備として与えられるもの。【場所】は世界観の選択や転生する場所を選ぶ願いだ。【運命】は転生後の出会いに関連する願い。例えば【ハーレム】とか【唯一無二のライバル】ってのもあった。【デメリット有】は良いことばかりではなく何かしらの代償が必要なようだった。こちらも例を出すと、運命が縛られる【魔王】【伝説の勇者】、力が増える代わりに寿命が減る【生命変換】などがあった。【不死】もここにあったのは驚きだったが説明を読むと、どうやっても死ぬことができないのがデメリットらしい。

 まだ決めきれないが面白いので【デメリット有】から目を通す。そうすると有用そうな面白い願いがいくつかあった。


「よし決めた。こんな組み合わせはどうだ」

「おお~、決めたか。どれどれ。……おい、これは!!」


 じいさんが驚いてる。辞書を引ったくり俺が選んだ願いの項目を見ているようだ。読み終わったのかこちらを向く。先ほどまでの笑顔はなく真面目な表情だ。


「わかった。願いはこれでいいんじゃな。それではお主の新しい人生に幸あれ」

「またな、じいさん」


 またな、そういうとじいさんの真面目な表情も崩れて呆れ笑顔となった。そして俺の視界はホワイトアウトした。


【召喚転生(青年)】【言語習得Lv2】【魔力生成Lv2】【火魔法Lv2】【身体強化Lv2】【クーリングオフ】

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