14.5話 少女の決意
最近、なんだか変な感じがする。
それは、あの子と一緒に過ごすようになってから。
マオ。
初めてできた友達。
私に名前をくれた人。
私の名前はマリナ。
とっても大切な、私の宝物。
それをくれたのがマオ。
うれしかった。
あんなにも皆が嫌っていた私の髪を、好きだと言ってくれたことも。
友達として、名前をくれたことも。
全部全部、うれしかった。
でも、最近あの子を見てると、なんだか変な感じがする。
じっと見てるだけで、胸がぽかぽかして、きゅってする。
すごくあの子のことが気になる。
初めて見たときよりも、ずっと。
もっと、もっともっと、あの子のことが知りたい。
見て、聞いて、触って、感じたい。
この気持ちはなんだろう。
わからない。
わからないけど、どうしても気になる。
気づいたらずっとあの子を見てた。
初めてあの子を見たあの日くらい…ううん、それよりもずっと。
ずっとずっと、マオの事が気になるの。
あの日、私や村の人たちがさらわれた、あの日。
私を助けてくれたマオは、優しい顔をして、泣いていた私の頭を撫でてくれた。
怖がってた私を、励ましてくれた。
そんなことされたの、初めてだったから。
今でも感じるの。
嬉しくて、あったかいの。
今日も何処かからか音が聞こえてくる。
それは、マオがあのおっきな男の人と闘ってる音。
マオがずっと、頑張ってる音。
でも、どうして急にそんなことをはじめたんだろう?
外でお洗濯した服を干してるお姉さんに聞いてみた。
「マリナちゃんを守るために、だって。」
お姉さんはそうおしえてくれた。
私を…守る…?
守るって、何だろう?
マオが、言ってた言葉。
私の知らない言葉を、マオはたくさん知ってる。
守るって何?
私はまたそう聞いた。
お姉さんはちょっと考えて、こう教えてくれた。
「あなたに怖い思いをさせないこと…かな?」
◇
夜中、お姉さんの部屋を抜け出してマオの布団に潜った。
いつもマオには怒られちゃうから、我慢してるけど、ダメだった。
どうしても、マオにぎゅってしたかったの。
暗いけど、月の光で顔はちゃんと見えた。
じっと見てると、やっぱり胸が変な感じになっちゃう。
なんだか身体の中から熱くなる感じ。
なんだろう、ちょっと顔も熱いかも?
そっとマオの胸に抱き着いてみる。
暖かくて、とくんとくん鳴ってて、心がほっとする。
私もとくんとくんしてて、一つになる感じ。
それがすっごく嬉しいの。
しばらくぎゅってしてたら、今度はマオが私をぎゅっとしてきた。
起きちゃったのかとびくってなるけど、寝てるみたい。
マオの手は私より少し大きい。
最近出来たのかな?
手の平が少しごつごつしてる。
毎日何かをにぎってるとこうなるってお姉さんから聞いたっけ。
マオは毎日頑張ってる。
剣を振るって、強くなろうとしてる。
頑張ってるマオを見てると、マオが頑張ってると、私も頑張らなきゃってなる。
私の髪を好きになってくれて。
私に名前をくれて。
私の友達になってくれて。
私を守るって言ってくれて。
襲われた時は、本当に私を守ってくれた。
嬉しかった。
なのに、私はありがとうって、言えてない。
私も何かマオにしてあげたい。
だから、今度は私がマオを守る。
守れたら、怖い思いをしなくていいんだよね?
助けに来てくれたとき、マオは震えてた。
抱き着いた時に分かったの。
マオの手が震えてた。
きっと、マオも怖かったんだよね?
でも、私を助けるために、来てくれた。
今度は私がマオを助けたい。守りたい。
だから、誰にも負けないくらいになる。
それで、もっとマオと一緒にいたい。
マオはいつか学園っていう所に行くんだって。
私も、マオと一緒に行きたい。
…マオは、怒るかな?
嫌って、言っちゃうかな?
それだけは怖かったけど、ぎゅってしてくれるマオの腕が暖かくて、胸がいっぱいになった。
マオと一緒にいれば、この不思議な気持ちがなにか、分かるかな?
考えてるうちに、目を開けてられなくなって、今日はそのまま寝ちゃった。
◇
次の日の朝、顔を真っ赤にしたマオに怒られて、お姉さんにも見つかっちゃった。
「も…もぅっ!なんで布団に入ってくるのかな…!」
朝ごはんの後、いつものんびりしてる時間。
でも、マオは真っ赤なまま、よくわからない顔をしてる。
私は、マオの目をじっと見る。
「え…何…え?」
マオはなんだかあたふたしながら私から目を逸らす。
でも、私はマオの目をちゃんとみて、言ったの。
マオは、私が守る。
「…………へ?」
マオは口をぱくぱくしたまま変な声を出す。
私はそれから家を飛び出して、外にいるお姉さんのところに行った。
待ってて。
強くなって、今度は私がマオを守るから。
なんかもう、ごめんなさい。
いや、ツッコミ所満載なのは重々承知です。