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創造主(仮)と異世界日記  作者: 真央
第1章『目覚めは新しい人生と共に』
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第14話 受け継ぐ想い

カンカンと小気味よい音が村に響く。

その音の発生源は、ここ、ミルラ村の端にある小さな広場にある。

それは、木と木がぶつかり合う音。


「やっ!たぁ!」


手に持つ木刀を振りかぶり、目の前の男へと躍りかかる。

男はそれを涼しい顔でいなし、弾き、受け流す。

立ち回りは最低限に絞られたスムーズな足取りで、かなり余裕そうな表情だ。

それに比べて躍りかかる方は汗をかき、息を乱している。

振り回す木刀も正確さはなく、やたらめったら振り回している感じで、とても余裕さを持ち合わせてはいなさそうだ。

体格の差もあり、第三者から見れば完全に遊ばれているような光景に感じられるだろう。


「はぁ!やぁ!とぉりゃあ!」



バテ気味なまま、何度も振り回し続けた最後に、思い切り力んで横に大きく振り払った。

男の腹を狙ったであろうその一撃は、しかし目標を捉えるその前に固い何かにぶつかってしまった。

それは、薙ぎ払われる位置を遮るようにして立てられた木刀だった。


「……………」


男は小さく息を吐くと、遮った相手の木刀の切っ先を、ぐっと自分の木刀の切っ先で地面に向けて沈める。


「うぉ?」


続けて相手の木刀の上に重なっていた自分の木刀を、今度は相手の木刀と地面の間に差し込み、そのまま跳ね上げるように木刀を振り上げた。


「わっ!?」


いきなり木刀をカチ上げられる突然の衝撃に手に込められた力が抜ける。


「………シッ」


そこを男は狙ったように、鋭く木刀を打ち込んだ。


カァンッ


さっきよりも大きな音を上げて木刀が宙を舞う。

すぐにカランと音を立て、木刀が男から数メートル離れた地点に転がった。


「あっ……」


木刀が飛んでいった場所を振り返り、注意が逸れてしまう。


スコンッ


「痛っ!?」


その直後、頭のてっぺんに鈍い痛みが走った。

これを機に、場の空気から熱気が完全に失せた。



ーーーーーーーーーーーー



「どんな時でも武器は手から離すな。」


「うぅ…すいません…。」


頭をさすりながら涙目で謝る。

時刻は昼頃。

朝、村長に呼び出され、強さについて問われた。

一応村長は僕の言葉(決意?)に納得したようで、明日から魔法の訓練をつけてくれるらしい。

ぶっちゃけ魔法の種類や原理自体は完全網羅しているので、魔力エネルギーの調整や魔法の実践による経験を積むくらいだろう。

そしてその後、この男、傭兵のレインに頼んで、今度は剣の稽古をつけてほしいと今度は自発的に頼んだ。

魔法以外にも、身体技能の訓練をつけたかったのだ。

レインの実力は昨日、十分分かっていたので、教えを請うにはうってつけだったし。

で、早速今日から訓練を始めて、現在に至るのである。

はい、あらすじ終わりー!


「ふぅ………」


いやしかし、分かってたけど、この男…かなり強い。

完全に弄ばれていた感じだった。

今だから冷静に考えられるけど、よく昨日この実力差で一人で戦おうと思ったな…。

やっぱりあの時から頭に血が上りっぱなしだったのか。

冷静を取り繕っていただけで、その実全く後先を考えずに行動していたのかと、今更ながら、自分の子供っぽさに恥ずかしくなる。



「…誰でも最初はこんなものだ。何も考えずにただ剣振り回してるだけなんてのは、初心者なら当たり前のことだしな。」


「…いざ実際に打ち合うと、立ち回りとか、打ち込む位置とか、力の入れ具合・入れ所とか…やっぱりわかんないもんだね。」


「それは何度もやって感覚で掴んでいくしかない。」


「口では簡単に言えるけどさぁ……」


ぐでーんと地面に四肢を投げ出して大の字に寝っ転がる。

激しい運動の後のクールダウン。

頬を撫でる春の温風も、今は僕の体温の方が高いせいか、少し冷たく感じるくらいだ。


「というか…レインも何処でそんな強さを身につけたのさ。」


「…昔、とある国の機関で、な。」


機関、という単語は少し不思議に感じる。

普通、軍とか騎士団とかで習うものじゃないのかな?

ただ、レインの話す口調は、ほんの少しだけだけど、哀愁のようななにかを感じさせるような気がした。


これ以上突っ込んだ話を聞くのは野暮だろう。

誰にでも話したくない過去の一つや二つ、持ってて当たり前だろうし。

僕の場合、話したくても話せない(話してもロクなことにならない)過去というか秘密は無いことも無いけど。

「実は僕、異世界から来たんです」という話が普通に通るような世界、探したってありゃしないだろう。


「…よしっもう一回!」


休憩もほどほどに、立ち上がって再び木刀を構えて対峙する。

今はそんなこと考えるより訓練だ。

他事を考える前に、目の前の事に集中しよう。


それから数時間、僕はレインにこってりと絞られた。

一分一秒でも早く、強くなりたい。

そして、マリナと一緒に世界を感じたい。

ただただその一心で、僕は剣を振り回し続けた。


ーーーーーーーーーーーー


そして場所は変わり、ここは小さな河原。

実は、村の端っこには、一部小川が天然の水路として通っている。

まあ村の中心にも井戸はあるので、普段の生活の中でわざわざこっちに水汲みに来る人はいない。

でも暑い日などは昼間によく水浴びに来る人は結構いるのだ。

今は初春くらいの季節なので、あまり人は来ないけど。


ズボンをポイと脱ぎ捨てる。続いて日光をたっぷり浴びた黒服を脱ぎ、こちらも放り出す。

さっきまで着ていた服はいつぞやの旅団服の一部だ。

本来は袖の広い黒服(肌触り良好)の上に茶色のベストのような服(肌触りゴワゴワ)を羽織り、さらに膝下まである半ズボンのようなナニカ(ベルト部分のポーチ・ポケット多数)を穿くのである。

それを、黒服と半ズボンだけにして着ていた。

激しい運動はするけれど、村から出る訳ではないのでと妥協したらこうなった。

いやしかし、黒服って日光吸収率が尋常じゃない。

夏場にこれ着て有酸素運動とかしたら発汗量的に効率良く痩せられそうだ。

同時に熱中症の危険性も高そうだけど。

そんなのんびりとした考えが出来るくらい、思考に余裕がある。

昨日の大騒動が嘘みたいな穏やかな空気だった。

さて、トランクス一枚(とネックレス状の共鳴石)になったところで、ふとレインの方を見る。

レインも同じく全身真っ黒のコートアーマー(マオ命名)を脱ぎ、鍛えられた身体を日中の下に晒していた。

……細マッチョってあんなのを言うんだろうな。

対して自分の肉体。

やや痩せ型で、申し訳程度の腕の肉付き。

…いいさ。

きっとこの先、あの人に鍛えてもらったら自然と筋肉も付くよ。

まだ10歳なんだ。

将来性に希望を持つのは遅くないだろう。

…遅くない…よね?


気温はそれなりに暖かいが、やっぱりまだ川の水は冷たく、一歩足を水の中に踏み入れると、ぞくぞくとした本能のような身震いが足の先から脳天までを巡った。

しかしそれもつかの間。

すぐに冷えた水がほどよい清涼感となって心地好く感じられた。

泳げる程の深さはないので、しばらく川のど真ん中に足を伸ばして座り、火照った心身を冷ます。


「…いい村だな、ここは。」


「えっ?」


突然のレインの呟きに思わず聞き返した。

彼の表情は穏やかで、のびのびとした様子で河原の縁に腰掛けていた。

足湯のように足首までを水中に沈め、そよそよと吹き抜ける風に目を細めている。

おそらく初めて見たであろう、心からリラックスしているような表情だった。


「いや…昨日あんな出来事があったにも関わらず、何事も無かったようにまた同じ日常が流れていける、この穏やかな村の空気が、な。」


「切り替えの早さは僕もちょっと驚いたけどね。」


そう。

今の村の様子は、昨日山賊に襲われる前までのそれと全く同じと思えるくらい、ゆったりとした雰囲気だった。

あまりの変化の無さに、昨日の出来事がまるで嘘のようである。

これには僕もびっくりだった。


「それに…昨日の騒動に加担していた俺を、この村の人達は普通に受け入れてくれた。」


「まぁ、実際レインは何も悪くなかったし、むしろ被害を最小限に食い止めてくれたからね。」


それに、村長とリディアお姉さん、村の長と村のアイドル(肩書きは間違っていない)というミルラ村中心人物二人が完全受け入れ態勢だった為に、村人達もそれに引っ張られていたのだ。


「全く…この村はのんびりし過ぎというか、危機感が無いというか…。」


そうやや呆れたように呟くレインの表情は、無愛想ながらも楽しそうで、呟くその言葉に皮肉などの念は一切含まれていないと分かる。


「それがこの村の良さでもあるんじゃない?」


「…それもそうだな。」


そこで会話は途切れ、しばらくはお互い時間を忘れるようにのんびりと過ごした。



気付けば日も傾き始めた頃。

僕らはすっかり疲労から癒えた状態で、川から上がった。

服を着る前にも、またまじまじとレインの肉体を見てしまう。

…何食べたらあんなに筋肉付くんだろ。

前の世界での不健康極まりない生活習慣を思い出しながら生まれ変わった自分の身体を見下ろしては小さくため息をつく。

…今日から食事の量を増やそうかな。

そんな感じで自身の着替えも忘れてチラッチラッとレインを盗み見る。


「……そのペンダント、『絆の石』か?」


またいきなりの問い掛けにビクリと反射的に跳ね上がりつつ、問い掛けに答えた。


「えっと…?これは共鳴石って言うんだけど…。」


「そうなのか?昔、同じような物を見たことがあったんだが、確かその時は『絆の石』と聞いたんだが…。」


へぇ、そうなんだ。

文化の違いによる呼び名の違いだろうか。

よくよく考えてみると、名前に込められたであろう意味も似ている気がするので、おそらく同一物なのだろう。


「これは、両親が付けてたっていう、お守りなんだ。…大切な人と離れ離れになっても、いつかまた互いが引かれ合う、そんな願いが込められたお守り。」


「…ということは、誰かにそれと同じ石を贈ったのか?」


お守りのことを知っていたのか、レインは全て分かっていたように聞いてくる。


「ん?ああ、マリナにね。」


そう、僕も軽くその問い掛けに答えた。

するとレインは少し驚いたように表情をピタリと固まらせる。


「…お前、それが何を意味しているのか分かってるのか?」


「え?や、マリナがなんか物珍しそうに見つめてたからさ、僕一人が二つ持ってるのもなぁって思って。」


アクセサリをプレゼントするなんて、結構よくあることじゃない?

その後、レインは何かを察したように小さく呟き始めた。


「……こいつは、無意識でやってるのか…?だとしたら、あの娘は相当な朴念仁に惚れ込んだことになるが…。」


何を言っていたのかまでは分からないけど、まぁそんなに重要なことじゃないよね。

さて、さっさと着替えて後片付けをしてしまおう。

夕飯の量を増やしてもらう為にも、料理のお手伝いをせねば。


着替えも終わり、木刀を二本まとめて肩に担いで、せっせと家に運ぶ。

とはいっても、村の中には変わりないので大した労働ではない。

ちゃっちゃと片付けられる。

家の横にくっつく形で建てられている倉庫に木刀二本を放り込むと、レインと共に家に入ろうと扉に手をー


「…なぁ、お前は、何の為に強くなりたいと考えたんだ?」


かけた所で背後にいるレインに問われた。

どうして強くなりたいのか。

今日は同じ質問が何度も繰り返される日だな。

…でもまぁ、僕の答えは同じだ。


「マリナを守りたいから。」


振り返り、真剣に、ド直球に、そう答える。

前の世界で過ごした灰色の18年間というちっぽけな経験しか、今の僕には無い。

何が正しくて、何が悪いのか、そんなことを改まって考えたことも無かった。

それだけ平和に隔離された世界を生きてきた。

だから、この世界とのあらゆる違いに、僕は適応するのに時間がかかった。

でも、それでも、この想いだけは間違ってないと、ハッキリ断言できる。

これだけしかないけど、今の僕の中にもある確信。

大切な人を守りたいと思う気持ち。

それを実現するために努力を惜しまない姿勢、勇気。

きっとこれは、間違ってないから。


レインは僕のその答えに、何を思ったのか。

村長の時と同じく、どんな答えを望んでいたのかはさっぱり分からない。

だから、僕は素直に自分の中の答えをぶつけた。

深く考えたり、そういう小難しいことができないから。

ただただ素直に、愚直に、突っ走る。

それだけだった。


「……力の使い方を見誤るな。これからお前が見る世界は、きっと広い。その目でちゃんと見極められるようになれ。」


レインはそう言うだけ。

僕の答えについては全く触れない。

…まさか、間違っていたのだろうか。


「…それが出来るようになるまでは、俺が面倒を見てやる。」


しかし続く彼の言葉を聞いて、その不安は吹き飛んだ。


「…うん!」


素直に「ありがとう」とも、ふてぶてしく「よろしく」とも言えず、短くそう答えることしかできなかった。

レインの言う言葉は、イマイチよく分からない。

けど、それでいい。

きっと彼は、最初から分からせようなんて思っていない。

これからゆっくり、その言葉に込められた真意が分かるように頑張ろう。

彼の言いたかったことの意味を理解できる、その日まで。


気を取り直して、家の扉を開け放つ。


「あら、お帰りなさい。家の前で何を話していたの?」


「ただいま!ただちょっと、決意表明してただけだよ。」


目下、最初の目標は。

とりあえず、たくさん食べて筋肉を付けようかな。

第13話があまりにも蛇足感半端なかったので、リベンジというか仕切り直しというか…ということで、消化不良改善を目指してこちらを執筆させて頂きました。

ついでにマオ君がしでかしたフラグ建築についてと、伏線として末永く使おうとしていたのにいきなり山賊襲撃編で一切使われなかった共鳴石の再スポット(伏線再浮上)。


ぶっちゃけ最初のチャンバラ修行シーン以外は即興で書き上げたので、かなり違和感あると思いますが、一応13話よりかはマシかと思っています。


さて、小説案内のキーワードにもあるように、一応『学園モノ』というジャンルもこの小説には含まれている(予定)です。

いつ頃から学園編に移行するかはまだ未定ですが、もうそろそろそっちのステップへ進めるように準備もせねばって状態です。

ここ最近の更新ではなかなか小説の質が下がり気味でしたし、まだ魔法についての説明しかこの世界での戦い方と言いますか、そんな感じの奴の紹介なり説明なりもまだなので、レインとの修行シーンをいくつか増やして、蛇足ながらそこで紹介・説明をさせて頂こうかなと。

…魔法だけじゃなく、ちゃんと剣技や武術にもきちんと特殊ギミックなりの設定は考えてありますよ?

ノベルズワールドのプロローグにあった、「小説の設定は無駄に細かいが文章が書けない」というのは、正に私、自分自身の事でしたから。

さてさて、以降はもうちょっとまともな文章で更新できるのか!

それは私にもわかりません!!←

ほどほどにお楽しみに!!





追記

PV2500突破&ユニークもうすぐ1000突破(2014.10.1.現在)です!

細々とした更新でしたが、ちょこちょこ見て戴けて非常に嬉しいです!!

ありがとうございます!!

これからもノベルズワールドをよろしくお願いします!!

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